アップルのiPad Airが約1年ぶりに「iPad Air 2」として進化を遂げた。サイズは9.7インチを継承。同じ日に発表された7.9インチの「iPad mini 3」、ならびに超高精細なRetina 5Kディスプレイを搭載する27型の「iMac」とともに実機をハンズオンできる機会を得た。
■大きく進化した「iPad Air 2」
米アップルは現地時間16日にイベントを開催し、CEOのティム・クック氏が「iPad Air 2」をはじめとした新製品を発表した。それぞれの新製品の詳細は既報の通りだが、iPad Airは6.1mmという初代iPad Airよりもさらに1.4mm薄型のボディサイズを実現したことが大きな特徴だ。質量もWi-Fiモデル、Wi-Fi+セルラーともに前モデルから軽量化を果たしている。
「iPad Air 2」には新開発の「A8X」プロセッサーが搭載されたほか、指紋認証センサー「TOUCH ID」や気圧計センサーに対応。リア側のiSightカメラの性能・機能もアップしている。
新色のゴールドがiPad Air 2/iPad mini 3ともに追加されたこともトピックだ。ゴールドの色味は、先に発売されたiPhone 6/iPhone 6 Plusの黄色の濃いゴールドよりも、若干iPhone 5sのシャンパンゴールドに近い印象を受けた。ほかにもシルバーとスペースグレーを含む3色がラインナップする。
「iPad mini 3」は前機種と同じ「A7」プロセッサーを搭載。「TOUCH ID」は搭載されているが、ほかには新色のゴールドを追加した事以外に目立った進化はない。
オンラインなどで販売されるSIMフリー版iPad Air 2は10月18日から受注を開始する。メモリーの容量は16/64/128GBの3サイズ展開で、Wi-Fiモデルの税別価格は53,800円/16GB、64,800円/64GB、75,800円/128GB。Wi-Fi+セルラーモデルはこれにそれぞれ14,000円を足した価格になる。iPad mini 3も同じ3種類のメモリー容量展開で、16GBのモデルが税別42,800円からとなる。なおiPad Air、iPad mini 2(旧:iPad mini Retinaディスプレイ)、iPad miniも当面は併売されるようだ。
アップルの発表を受けて、ドコモ、KDDI、ソフトバンクも発売開始を表明した。本体の価格やWi-Fi+セルラーモデルの料金プランに関する詳細はまだ明らかになっていない。
なおiPad Air 2が対応するLTE周波数帯はバンド「1(2100MHz)/2(1900MHz)/3(1800MHz)/4(AWS)/5(850MHz)/7(2600MHz)/8(900MHz)/13(700c MHz)/17(700b MHz)/18(800MHz)/20(800 DD MHz)/25(1900MHz)/26(800MHz)/28(700 APT MHz)/29(700de MHz)/38(TD 2600)/39(TD 1900)/40(TD 2300)/41(TD 2500)。ドコモやKDDI、ワイモバイルが準備を進めるバンド28のLTEサービスや、WiMAX 2+やSoftbank 4Gが利用するTD-LTEのバンド41もサポートしている。一方iPad mini 3は前機種と変わらず、バンド28/41ともに非対応だ。
米国で発売されるiPad Air 2とiPad mini 3のWi-Fi+セルラーモデルには新たに「Apple SIM」カードがプリセットされ、北米と英国のローカルキャリアが、SIMカードを交換することなく選択して通信ができるようになるようだ。
■パネルの感度や画質が向上/もちろん薄くて軽い!
「iPad Air 2」を中心にハンズオンの成果を報告しよう。iPad Airも相当に薄くて軽いタブレットだが、新しいiPad Air 2は実感としてさらに薄く、軽くなったことが手に取ってすぐに伝わる。本体の薄さは初代iPadと比べて約1/2のサイズになっているという。
筐体の背面と側面には酸化皮膜処理されたアルミニウムを採用。緩やかにラウンド処理されたコーナー部により、全体を上品なデザインに仕上げている。本体が薄いので、片手でホールドしながら電車の中で動画を視聴したり、電子書籍を読むのにとても快適なサイズ感だ。
2048×1536ピクセル、264ppiのRetinaディスプレイを搭載するパネル部は、これまでカバーガラスとタッチセンサー、液晶パネルの3層が異なるパーツで構成されていたが、これを1つに統合して各層間のギャップを無くして薄型化を加速させた。ギャップによって生じていた内部反射も無くなることで、より色彩とコントラストの表現力がアップした視認性の高い画面を実現している。パネルの表面には反射防止コーティングをかけて、画像のざらつきもiPad Airに比べて約56%抑えた。実際に斜めから画面をのぞき込んでも映像や文字がくっきりとしていてとても見やすい。動画や写真だけでなく、「A8X」プロセッサーのパワーと合わせて高精細なゲームコンテンツのグラフィックスもサクサクと、かつキレイに表示する。ポータブルゲームプレーヤーとしての魅力もさらに増したようだ。
プロセッサーの高い処理能力とディスプレイ性能が向上したことで、タッチ操作の追従性もアップしている。ドローイングアプリを使って指で文字などを書き込んだ際のレスポンスの速さは動画を参照して欲しい。
カメラ機能について本日のハンズオンでは詳細を確認することはできなかったが、iSightカメラのセンサースペックが向上したほか、タイムラプス、バーストモードや120fpsのスローモーション撮影ができる。FaceTimeカメラには1.2メガピクセルの裏面照射型センサーとF2.2の明るいレンズを搭載し、明るく高精細なビデオチャットなども楽しめる。FaceTimeカメラもバーストモードによる静止画の連続撮影に対応している。
ステレオスピーカーはiPad Airと変わらずLightning端子と同じ本体ボトム側に配置された。トップ側には3.5mmのイヤホン端子とデュアルマイクが内蔵されている点も前モデルと同じだ。
iPhone 6/6 Plusに搭載されているNFC機能は備えていない。元々Apple Payは日本導入未定のサービスだが、iTunes StoreやApp Store、iBooks Storeでコンテンツを購入する際にはTOUCH IDによる指紋認証が使えるようになるのは便利だ。
iOS 8とMac向けのOS X Yosemiteによるデバイス連携機能も充実させている。ハンズオンの会場では同じApple IDで紐付いているiPhoneとMacBook Proを同一のWi-Fiネットワークに接続後、iPhoneにかかってきたコールをPCで受話するデモンストレーションも行われた。同じことがiPadとiPhoneとの組み合わせでもできるので、例えばiPadで映画を視聴中に、iPhoneにかかってきたコールを逃さずに受けることもできるようになる。ほかにもMacbookに表示した「Keynote」アプリのプレゼンテーションを、BluetoothでペアリングしたiPhoneをリモコン代わりにしてページ操作することも可能だ。
iPad Air 2は高い性能、豊富な機能の両面で確かな進化が感じられる製品に仕上がっている。外出先に持ち歩くならコンパクトiPad miniを選ぶという人も多いだろうが、薄型・軽量設計の上では全く引けを取らず、より画面の大きいiPad Air 2のコンテンツビューアーとしての魅力をとるというのも正解だと思う。