【Apple Watch実物さわった】革新的なデザインは"中身"であるUIデザインにまで徹底されている

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Appleは9月9日(現地時間)、カリフォルニア・クパチーノにあるフリントセンターにて大規模なプレスイベントを実施。世界中のプレスを集めて、新型iPhoneとなる「iPhone 6」と「iPhone 6 Plus」、そして新たなカテゴリーの製品として「Apple Watch」を発表した。

筆者はこのプレスイベントに参加し、いちはやくApple Watchを試す機会を得た。そこで今回は発表会とハンズオンをもとに、ファーストインプレッションをお届けしたい。

◆「フリントセンターで発表」の意義

Apple Watchの紹介に入る前に、今回、Appleがプレスイベントの会場として選んだフリントセンターについて少し触れておきたい。

今回、会場として選ばれたフリントセンターは、スティーブ・ジョブズが1984年に初代Machintoshを発表し、1998年に初代iMacを発表した場でもある。どちらもAppleにとって大きな転換点であり、Apple成長の狼煙になっただけでなく、コンピューティングの歴史においても重要なイベントであった。Appleにとっては伝説の地であり、そこを会場として選ぶということは、「歴史に名を残す」という覚悟の表れでもある。実際、今回のプレスイベントにおいてApple側の緊張感はすさまじく、それだけ重要なイベントであることが伝わってきた。

◆ついに「One more thing…」が使われた

CEOのティム・クック氏をはじめとするApple首脳が、iPhone 6 / iPhone 6 Plusの紹介と新サービス「Apple Pay」をお披露目した後、暗転したスクリーンにひとつの文章が浮かび上がる。

「One more thing…」

一瞬の沈黙。そして沸き起こる、拍手と歓声。会場内は大騒ぎになる。それもそのはず。スティーブ・ジョブズ氏が逝去し、ティム・クック体制になってから「One more thing」はいちどとして使われなかったからだ。今や伝説となったOne more thingのあとに、Apple Watchの紹介が始まった。

「Appleは新しい製品やカテゴリーを作る時に、新しいユーザーインターフェイスを作ってきた。Macではマウスを使ったシンプルな操作体系を作り、iPodではクリックホイール、そしてiPhoneではマルチタッチスクリーン。今回のApple Watchでは小さなスクリーンサイズにあわせて、デジタルクラウンという新しい操作機構を発明した」(クック氏)。

デジタルクラウンは時計の世界では古くから使われている竜頭を、最新のテクノロジーとAppleの優れたUIデザイン力で再定義したものだ。精巧な金属加工で生みだされたこのデジタルの竜頭には光学センサーデバイスが内蔵されており、その回転の動きをリニアにソフトウェアに伝えていくという。

Apple Watchのデバイスで注目なのは、デジタルクラウンの部分だけではない。UIを司るTAPTIC ENGINE、1チップに超高密度に集積されたS1プロセッサーなどが内製化されており、Appleのデバイス作りのノウハウが活かされている。さらに内部にはNFCモジュールなども入っており、その実装密度はかなり高い。音声入力インターフェイス「Siri」を使うためのマイクやスピーカーも内蔵されている。そしてApple Watchの背面側を見れば、心拍数や脈拍数を図るためのセンサーやMagSafeで培われた技術を用いたマグネット式充電機能などが備わっている。

iPhoneとApple Watchとの連携は、BluetoothとWi-Fiが用いられており、OS側で状況に応じて通信方式を選択する仕組みだ。バッテリー消費量を抑えつつ、ユーザーが通信速度で不満を持たないように配慮している。

◆ITガジェットっぽさとは一線を画す、優れたデザイン

Apple Watchは大きく3のラインに分かれており、ステンレス合金製で標準的な「Apple Watch」、アルミニウム素材でカジュアルでスポーティーな演出の「Apple Watch SPORT」、18金素材を用いた高級路線の「Apple Watch EDITION」である。それぞれのラインに大小のサイズ違いと、カラーリングの違いがあり、表面加工処理もそれぞれ違う。そこに複数の異なるデザインのバンドが装着できる。複数のデザインラインを用意し、そこにカスタムオプションでバリエーションを持たせるというのは、自動車業界でもBMWやメルセデスベンツなどがここ最近、採用している手法である。

そして、Apple Watchの革新的なデザインは、"中身"であるUIデザインにまで徹底されている。美しいRetinaディスプレイに映し出されるアイコンのひとつひとつ、メッセージの文字、そしてデジタルクラウンとタッチスクリーンを組み合わせた操作体系のひとつひとつまで綿密にデザインが行き届いており、見ているだけでうっとりとする。

新しい機能とデザインがしっかりと結びつき、新しいユーザー体験と世界観を作る。これはiPodやiPhone、iPadで編み出した手法であるが、Apple Watchでもそれがきちんと実現している。

◆Appleの奇跡、再び

ハンズオン会場ではApple Watchが多数用意され、実際に試せる環境が用意されていた。しかしまだ発売は先のため、現時点では開発中の段階。それでも基本的な機能を見て・試すことはできた。

まず実機のデザインと質感だが、これは「すばらしい」のひとこと。いわゆるスマートデバイスとして優れたデザインであるのはもちろんのこと、時計として見ても、シンプルで高品質なデザインになっている。むろん、いわゆる高級時計とは異なる方向性のものではあるが、すっきりとしたデザインとAppleのブランド力が組み合わさることで、大人が積極的につけてもおかしくない風格になっている。

そして、Apple WatchのRetinaディスプレイに映し出されるUIやアプリの数々は革新的のひとこと。Apple WatchではiPhoneの通知センター情報が自動的に表示されるほか、専用アプリをインストールして使うことができる。それらのひとつひとつがApple Watch向けにしっかりとデザインされているのだ。

Appleによると、Apple Watch向けアプリの開発環境はきちんと準備されており、すでに一部のサードパーティーが専用アプリの開発に入っているという。自動車業界ではBMWのテレマティクスサービス「BMWコネクテッド・ドライブ」用のApple Watchアプリが開発中であり、BMW iシリーズの充電状況を確認・制御したり、駐車位置を地図上で探すアプリが紹介されていた。

Apple Watchを実際に腕につけてみたところ、予想以上に軽く、装着感はとてもよい。重量やサイズなど詳細は明かされていないが、自然な感じで付けられそうだ。またApple Watchの特長であるデジタルクラウンは、竜頭部分をクルクルと回転させたり、押し込むことで様々な操作ができる。その動きはとてもスムーズであり、形は違うが、かつてiPodが搭載していたクリックホイールに通じる気持ちよさがあった。

Apple Watchはこのデジタルクラウンとマルチタッチパネルを組み合わせて操作を行い、本体側からは振動によるフィードバックがある。まだ開発段階ながらその操作感は良好であり、製品版への期待がいやが上にも高まった。


今回のApple Watchを試してわかったのは、これがウェアラブル型端末が本格的に普及する"最初の一歩"だということだ。これまでも数々のメーカーがウェアラブルデバイスやスマートウォッチを投入してきたが、それらは機能やデザイン、UI、アプリ環境などにおいて課題が多く、一般ユーザー向けに広く普及するものではなかった。しかし今回のApple Watchは、ウェアラブル端末に求められる要素が高いレベルでバランスしており、ようやく普及の第一歩を踏み出したといえる。

iPhoneの登場によって、それまで一般普及の決め手を欠いていたスマートフォンが広く世の中に広まったように、Apple Watchの登場によってウェアラブル端末が一般普及していくきっかけとなる可能性は高い。新たなカテゴリーを作り、人々のライフスタイルや価値観を変革していく。そのような「Appleの奇跡」が再び起きる予感を、Apple Watchに見た。
《神尾寿》

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