国際宇宙ステーション補給船『ATV』大気圏再突入、燃え尽きる様子を撮影予定

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大気圏に再突入するATVの予想図
  • 大気圏に再突入するATVの予想図
  • ATV破壊カメラシステム。左はATV船体に取り付けられる赤外線カメラ、右は衛星通信カプセル。
  • ATVの断面図

ESA 欧州宇宙機関は、2014年7月29日に打ち上げられた国際宇宙ステーション補給船『ATV5号機ジョルジュ・ルメートル』がISSから離脱し、大気圏に再突入してバラバラに燃え尽きる様子をリアルタイムで撮影・送信する予定だ。

開発期間わずか9カ月で完成したATV BUC(ATV Break-Up Camera:ATV 破壊カメラ)は、赤外線カメラと衛星通信カプセルの2つで構成される。衛星通信カプセルは航空機に搭載されるフライトレコーダーのようなもので、撮影されたATV破壊の様子をデータレコーダーに記録し、イリジウム通信衛星を経由して送信する。

日本の国際宇宙ステーション補給船「こうのとり(HTV)」も2012年から「i-Ball」カメラを搭載し、HTVが再突入して燃え尽きていく様子を内部から撮影し、データを蓄積している。BUCの場合、衛星通信カプセルは1500度の高熱に耐える機能を持っているのが特徴で、高度やカプセルの姿勢(向き)に関わらずデータを送信できるという。大気圏再突入に伴う船体の崩壊は、高度80~70キロメートル付近でおきる。衛星通信カプセルは秒速6~7キロメートルの高速で落下することになる。

宇宙機が再突入する際には、帯電したガスが機体からガスバーナーのように炎を吹き上げ、「ブラックアウト効果」と呼ばれる状態が起きる。これを克服するため、BUCシステムはカメラと通信システムが分離した構造とした。赤外線カメラはATVの船体に取り付けられ、船体と共に燃え尽きる。セラミック製の耐熱材で覆われた衛星通信カプセルはカメラから受信した映像をATV船体が崩壊している最中からリアルタイムでイリジウム衛星にデータを送信する。専用のアンテナを備えた衛星通信カプセルにより、大気圏再突入の「最後の20秒間」が記録できると期待されている。

欧州の国際宇宙ステーション補給船「ATV」は、5号機ジョルジュ・ルメートルを持って最終機となる。ATV 5号機は2014年7月29日、アリアン5ロケットで打ち上げられ、8月12日にISSに接続した。ISSの推進剤や宇宙飛行士の生活物資、3900キログラム以上の水など合わせて6602キログラムの貨物を運び、約6カ月間は宇宙に滞在し、ISSから分離し大気圏に再突入する予定だ。

《秋山 文野》

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