【メルセデスベンツ C200 アバンギャルド AMGライン 試乗】Dセグメントの枠を超えた規格外セダン…中村孝仁

試乗記 輸入車
メルセデスベンツ・C200 アバンギャルド AMG
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いよいよW205のコードネームを持つ新しい『Cクラス』が日本市場に導入されることになった。

『190シリーズ』と呼ばれた時代から数えて5世代目に当たる今回のモデル。メルセデス自身の力の入れようも相当なもので、元々このクラスのモデルとしてはハイエンドに属するCクラスだったが、今回はその枠には収まりきれないほどの新機軸が導入されている。

やはり一番目を引くのはほぼ『Sクラス』と肩を並べるほど充実したインテリジェントドライブの機能だ。各種センサーとレーダー、それに今回からはステレオカメラを備えて車両の周り360度を監視し、あらゆる角度からの衝突に対応するほか、全車速対応のクルーズコントロール、ディストロニックプラスには、新たに車両が車線内に収まるようにステアリングをアシストするアクティブレーンキーピングアシストも加わった。

サイズは全長および全幅で若干拡大し、旧型比で40~50ミリほどそれぞれ拡大した。ただ、見た目にはだいぶ大きく見えて存在感の高さを印象づける。今回試乗したAMGラインの場合、フロントマスクのデザインが異なることから、全長は通常のアバンギャルドに対して25ミリほど伸びている。

さて、クラスの枠を超えたと表現したが、このC200アバンギャルドAMGラインでは、なんとエアマチック、即ちエアサスペンションが標準装備となるのだ。もちろんこのセグメントでは初である。そして内外装のデザインはまさしくSクラスの縮小コピーである。それだけにSクラスに乗った経験のある人なら、各種スイッチ類の配置などはほぼそのままCクラスに移行されたと感じるはずだ。さすにがに巨大な液晶ディスプレイのメーターパネルは採用されず、アナログメーターを装備するが、ナビを含む大型スクリーンの使い勝手もSクラスと同じだった。

その特徴はあげればきりがないほど出てくるが、まずはアルミとスチールを併用した新たなボディ構造に大きな特徴がある。アルミの使用率は面積比で48%であり、旧型の9%を大幅に上回る。この結果ホワイトボディは70kgの軽量化に成功している。また、アルミとスチールの接合という難題に対してはインパクト・アクセレレーテッド・タッキングを略したインパクトという接合方法を使って解決した。そして新しいエンジン群はいずれもリーンバーンを可能とした直噴ターボユニットで、数値上の最高出力は旧型と変らないものの、トルクの方は1割ほど増えて、しかも1200~4000rpmという広い範囲で発揮されるから、実際に乗ると遙かに力強いモデルに変貌している。

実際にドライブしてみるとそのスムーズネス、軽快感、それと同時に味わえるダイナミズムと、サイズは小さいがメルセデスがSクラスで表現しようとした要素のすべてを、同じようにCクラスでも味わうことができることに驚かされる。かつてメルセデスは大径ステアリングでスローなステアリングフィールながら、非常に正確という味付けが得意だったがステアフィールも過去の話で、今回のCクラスはかなり小径のステアリングでAMGラインの場合は完全な円形ではなく、下部分をカットしたスポーツステアリングが装備され、そのフィーリングは十分にクィックだが気を使うほどのクィックさではない、まさに絶妙な落としどころに持ってきている。

今回のモデルチェンジではアジリティという言葉が盛んに使われている。そもそもアジリティとは機敏さとか軽快さといった意味を持つ言葉だが、今回のCクラスに使われたアジリティはそうした意味以上の内容を包括している。その代表例はアジリティセレクト。センターコンソールに付くアジリティセレクトのスイッチで、車両の動的質感を変更できる。モードはコンフォート、エコ、スポーツ、スポーツ+、それにインディビデュアルの5種で、それぞれエンジンマッピング、トランスミッションシフトポイント、ステアリング操舵感、サスペンションの応答性などが変更されるが、それだけではなく、スタートストップ機能からクライメートコントロールに至るまで細かい制御がこのアジリティセレクトには加えられている。このあたりもSクラスの機能がそのままCクラスに採用されているものだ。

今回は国産某車の試乗にこのクルマで行ったが、乗り変えてみると路面の舗装が変ったのではないかと思えるほど、スムーズで快適な乗り心地を与えてくれた。かつてはBMW『3シリーズ』を意識してか、スポーツ性を前面に押し出した時期もあったCクラス。しかし今は完全にその居場所をラグジャリーに据え、相応しい味を出している。さすがにナビゲーションのアルゴリズムはまだまだ改善の余地があると思われるし、ロータリースイッチの使い勝手も必ずしも完璧とは思わないが、走る、曲がる、止まるという動的質感の高さはまさにこのクラスでは究極の1台といって間違いないと思う。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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