『ミニ』のよさは、軸足がぶれないところだと思う。
視界にしろ乗り心地にしろ、いまの価値感でよかれとされるものを追求すれば違うものになったはずなのに、相変わらずフロントウィンドウは立っていて、信号で先頭に止まったら見上げる位置にある信号が見えにくいし、ルームミラーが視界を遮るし。スイッチも使いやすさよりデザイン優先。乗り心地もしっとり滑らかというよりは、ちょっとガタピシ感が残る、独特のものになっている。
ミニのデザインは、期待を裏切らない。3代目になってかなり手を加えられているというのに、全体のイメージはやっぱり「あのミニ」である。インテリアも同じ。おもちゃ箱の中に入ったようなわくわく感。でも、ちょっと大人になったと思うのは、いままでセンターパネルにどかーんと、ある意味無駄に大きく、柱時計かと見まごうばかりだったスピードメータが、3代目ではナビやらウェブ情報やらのインフォメーション伝達ツールとしての画面が組み込まれたことだ。
乗り心地は硬く、振動が乗り手の骨に響いてくる感じ。ただ、雑という硬さではなく、味付けとしてあえてこの振動を演出している。ミニといえば、やっぱりこのいい意味での「ガタピシ感」なのである。ハンドルをきったときの素直で安定感のある走りは気持ちよく、シフトレバーを「Sモード」に倒したときに、シフトチェンジのタイミングが変わり、スポーティさがアップする。加えて、「ミニ・ドライビングモード」を使ってスイッチでノーマル走行から、燃費走りの「グリーン」と元気な「スポーツモード」に切り替えれば、100人中100人が、おっと思うほど乗り心地が変わる。ほんとに「おっ」なのだ。まるで違うクルマに乗っているよう?いや、ハンドルを握ると人格が変わる自分を、楽しませてもらっている気分である。
所有して楽しいミニ。走らせて楽しめるミニ。そして、仲間と話題を共有できる、わかりやすいミニ。3代目もそうしたポイントはしっかり押さえている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞 るみこ │ モータージャーナリスト/ノンフィクション作家
女性誌や一般誌、ラジオなどで活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーと、救急医療を通じて衝突安全を中心に取材をするほか、近年はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。