【BMW i3 試乗】電気自動車として生を受けた生粋の電気自動車…中村孝仁

試乗記 輸入車
【BMW i3 試乗】電気自動車として生を受けた生粋の電気自動車…中村孝仁
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電気自動車は数あれど、実は生粋の電気自動車として生を受けた電気自動車は、実はそう多くない。BMW『i3』は数少ない生粋の電気自動車の1台なのである。

電気自動車の大半は、既存のガソリン車を改造して作られている。これがほとんどだ。日本の電気自動車はすべてそう。リーフは専用設計のように思われれるが、厳密にはティーダのプラットフォームをもとに開発している点で、まったくのゼロベースではない。ゼロベースの電気自動車で、ちゃんと世界市場に出せるクルマとしては、思いつく限りテスラ『モデルS』ぐらいなものではないだろうか。

専用設計にすると、構造がまるで違ってくる。このi3の場合も単純に乗員を乗せる「ライフモジュール」と、駆動部分を載せる「ドライブモジュール」の二つから成り立ち、それらはボルトで結合されているに過ぎないのだから、いかに単純かわかるだろう。そしてライフモジュールはCFRP、即ちカーボンで出来ており、一方のドライブモジュールは基本的にアルミを用いて作られている。

車両重量は1260kg。このサイズにしてはそれほど軽くはないが、床面いっぱいにバッテリーが敷き詰められていることを考えれば、やはり軽い。因みにリーフは一番軽いSという仕様で1430kgだから、その軽さが理解できると思う。

BMWはかなりこのクルマを本気で日本で売る気だ。それが証拠にこのi3、実は日本専用仕様である。具体的には1550mmという車高がそれを物語り、ヨーロッパ仕様だと1580mmになる。30mmを削ったのはルーフにつくアンテナの形状を変えたのと、あとはサスペンションの調整で対応したそうだ。

仕様は2種あり、一つは純粋なる電気自動車。そしてもう一つはいざという時のために、小型のガソリンエンジンで発電できる、レンジエクステンダーという仕組みを持つものだ。こちらはBMWスクーター用の650cc2気筒エンジンを積み、9リットルの燃料タンクを備える。でもって、今回試乗したのはこのレンジエクステンダーの方だ。

もっとも、都内での試乗だったからレンジエクステンダーの必要性はないわけだが、こいつが作動した時の騒音などを知りたくて敢えてこちらを選んでみた。運転は独特だ。といっても、単に操作系がシンプルなだけで、起動させてセレクターでドライブに入れて走るという部分ではガソリン車と何ら変わりなし。しかし、そのセレクターは独特でステアリングコラムに生えたレバーとプッシュボタンによって、スタート/ストップから、ドライブ、リバースなどがすべてセレクトできる。レバーの先端はダイヤル式になっていて、それを前に倒すとD、手前に倒すとRがセレクトでき、Pはスタートボタンの上につくプッシュボタンでセレクトする。ついているのはこれだけで、駆動系の操作類は他にはない。

勢いよくアクセルを踏むと、この種の背の高いモデルとしては驚くほどの加速感を持つ。電気自動車だからある程度の想像はついていたが、いやはや、やはりすごい加速力だ。それにさすがBMWと思わせたのは、切れの良いハンドリングである。前後に履くタイヤはレンジエクステンダーの場合、フロントが155/70R19、リアが175/60R19。現代のクルマと比較して実に細く、扁平率も高い。こんなタイヤが織りなすハンドリングとしてはまさに立派なものと言うべきだと思う。

アクセルを離すと回生ブレーキが働くのだが、その力が異様に強く自分の思い通りのところで止めるのに苦労するほどである。こいつはおそらく慣れるまでに相当に時間がかかりそうだ。乗車定員は4名。リアシートへのアクセスはフロントドアを開けたのちに、リアのドアを開いてアクセスする。フロントを開けない限りリアは開かない。この構造はミニですでに採用しているものだが、あまり便利とは言えない。また、リアシートの居住性は正直なところミニマムだった。

気になっていたレンジエクステンダー用のエンジンだが、その作動は極めて静かで、確かに動いていることは確認できるが、いつ動き出したかは全くわからない。因みによほどバッテリーの容量が減っていない限り、クルマが停車するとエンジンの方も切れてしまうから、いつ動き出していつ止まったかはまったわからないのである。

確かにわざわざ重いエンジンを積んでまで航続距離を伸ばしたのでは本末転倒という人もいるが、クルマとして現実的に使うなら、やはりレンジエクステンダーがいい。こいつさえあれば基本的にガソリンさえ入れてやれば、いつまででも動いてくれるのだから、充電の心配をしないで済む。市場でもしBMW i3が正当な評価を受けるとすれば、電気自動車は第2のステップに上がったといって間違いない。 

パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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