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【アナリティクス14】自動車業界を事例にしたアナリティクスサイクル実践

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【アナリティクス14】自動車業界を事例にしたアナリティクスサイクル実践
  • 【アナリティクス14】自動車業界を事例にしたアナリティクスサイクル実践
  • SAS Institute Japanビジネス推進本部山下克之氏
  • 【アナリティクス14】自動車業界を事例にしたアナリティクスサイクル実践
4月10日、国内最大級のアナリティクス専門カンファレンス「Analytics2014 ‐SAS FORUM JAPAN」が開催された。同カンファレンスでは、データを活用し経済活動を効率化するための手法が数多く紹介された。

SAS Institute Japanからは、M2M(機器同士がネットワークで接続され、相互に情報をやりとりを行うことで、中間で人手を経ずに情報収集や管理・制御を実現する技術)分野での最新のアナリティクス活用事例を紹介し、アナリティクス導入に先進的な企業がそこからどのような価値を得ているかを紹介した。

タイトルは「マシンの声に耳を傾け、新たな活用をアナリティクスで -センサー・マシンログ活用の先進事例」。登壇者はSAS Institute Japanビジネス推進本部山下克之氏。


◆2014年はアナリティクス競争元年 「いかにビックデータ活用精度を高めるかに注力すべき」

いま、世界のCIOらが最も注目しているのは何か。昨年のガートナーによる調査結果では、何を優先テクノロジーのトップ3の1つとして選ぶか、という質問への回答に「アナリティクス」「ビジネスインテリジェンス」が日本・世界共に1位となった(調査対象はCIO 2053人)。

Harvard Business Review 2014年5月号にも“アナリティクス競争元年”が特集されるなど、今後のビジネスにおいてアナリティクスは注目度を高めていくことが予想される。

SASでアナリティクス領域における案件を担当してきた山下氏が、アナリティクスの定義と有用性を確認した後、その先進活用事例を紹介する。

そもそもアナリティクスとは何なのか。山下氏は「アナリティクスとは統計分析をして、意思決定をすること。したがってビジネス目標と強く結び付く」と述べる。

詳説すると、「データを多角的・多面的に活用して統計分析・定量分析を行い組織における意思決定に結びつけるところまでを意味する。当然のことながら、それは分析という要素を含んではいるが、ビジネス目標を実現するためにそれを活用することを指している」(トーマス・H・ダベンポート、ジェーン・G・ハリス著「分析力を武器とする企業」より引用)と定義づけられるという。

ここにいう意思決定には、既に起こった事に対処することと、将来のことを予想し起こりうることを見通すことの二つがあり、「両方大事だけど、これからは後者の将来予測ができてこそ、新たなビジネス価値を得られる。過去の実績ではなく現在の意思決定のアナリティクスこそが競争する中での差別化ポイントとなるのでは。現に先進企業はその点で違いをみせている」と自身の経験から重要性を指摘した。


◆企業差別化のカギを握る “将来予測”アナリティクス

また、アナリティクスの種別は、それによってわかること、対応する課題によって以下の4つにわけられるという。

1 統計分析(statistical analytics):これがなぜ起きたのか?どんな機会を逸したのか?を明らかにするもの。ビジネス課題例でいえば住宅ローンを借り換える顧客が増えている要因を発見する、など。

2 時系列予測(forecasting):統計分析をすこし踏み込んだもの、という位置づけにある。現在の傾向が継続するとどうなるか?どれだけ必要か?いつ必要とされるか?を明らかにするもの。これによって小売業などで特定製品の需要を店舗別に予測し、在庫量を適切なレベルにたもち欠品や不良在庫を削減する。

3 予測型モデル(predictive modeling):ある現象が、次にどのくらいの確度で何がおきるか?それはどの程度、経営に影響するか?を明らかにするもの。これは比較的頻繁に用いられる考え方だという。「BtoCであれば、顧客がどのキャンペーンに反応するか、どのくらいのセグメントが反応するか。通販会社などが予測することに役立つ」(山下氏)。

4 最適化(optimization):最後に、予測型モデルをさらにふみこんだものとして、“最適化”が用いられる。最適化によって、最善、最適な対処方法は何か、複雑な問題にとりベストな選択はどれか?が明らかになり、限られた経営資源の下でリターンを最大化するセールスプロモーションの組み合わせを見つけ出されるという。

さらに、現在新しい型のアナリティクスとして「モデルでありながら解答もつくる、意思決定のほとんどを出せるもの。指示型とよばれるものも生まれている」(山下氏)。


◆アナリティクスによるビジネス価値を最大限享受するための枠組み “アナリティクスサイクル”

アナリティクスによってもたらされるビジネス価値は収益向上、コスト削減、リスク管理、プロセスの改善の4つが挙げられる。これらを最大限享受するには、「アナリティクスサイクル」を業務に組み込み、それを回す、さらには早く回すことが必要だという。

アナリティクスライフサイクルとは以下の一連の流れを意味する。まず課題定義・仮説立案からはじまり、データ準備、データ探索をデータサイエンティストとよばれる人間が行い、その後分析者・統計家が探索的データ解析や予測モデル開発、セグメンテーションによってデータ加工をおこなう。システム担当者はこれをモデル検証、モデル展開・実行にうつし、最後にビジネスユーザが見える化、精度評価、モニタリングを行う。

山下氏は一連のモデルをかなり意識するという。「どこがまだ使われていないか。モデルがまわっているにもかかわらず欠陥があるときはどこを埋めなければならないかを考える」。


◆アナリティクスの実践例1 製品の不良原因を予測~自動車メーカを例に~

続いてアナリティクスを活用した事例のエッセンスが紹介された。

例えば自動車などの生産工程で、完成検査にNGを出す際、熟練の担当者の勘や経験に従っておこなわれることがある。そのような場合、NGとなった製品にたいする不良原因特定が属人的であるため効率が悪くなる。

したがって、検査項目結果分析による効率的な原因特定に手直しをすることが課題となる。

この課題に対しては、生産工程機器から得られる機器情報をもとに、不良原因とテスト項目結果の関連性をつきとめる方策がありうる。効果として不良原因特定までのリードタイムを短縮し、暗黙知である熟練担当者の持つ“ノウハウ=技能”が形式化される。これによって、熟練担当者がいなくなった場合でも、新人による不良原因特定を可能とすることができるようになり、さらには不良原因とテスト項目結果の関連性を導くことで、生産・開発工程へフィードバックできるという。


◆アナリティクスの実践例2 パーツの故障を予測する~部品メーカを例に~

次に挙がったのは、車の部品に関するビジネス課題。

自動車のパーツの故障を修正するとき、ふつうは“現時点で”異常のものしか修理できない。しかし、ユーザにとっては、故障のたびにディーラに入庫するのは面倒だし、かかる時間やコストは少ない方がやさしい。したがって、現時点で異常なものだけでなく“故障しそうなパーツ”も予測し、交換して、ユーザの手間を省くことが理想的だ。

このようなビジネス目標にたいして、アナリティクスはどう対応するか。山下氏いわく「故障予測モデルを作成し、ディーラでのメンテ時に故障しそうなパーツをアラーティングし、テクニシャンの支援をする。そしてテクニシャンの最終判断によりパーツを交換する。これらのアクションによって故障が低減し、顧客満足度をあげられるようになる」という。

データプロセスとしては、テストデータの取得後、データの取捨選択・加工・変数の取捨選択により自動平均算出や異常値時系列の形状化をおこなう。データを整理した後に異常個所診断アルゴリズムを作成し、これをもとに再びデータの整理をし、アルゴリズムに反映させる。このようなデータの整理と異常個所診断アルゴリズム再考の反復によって、より高精度な故障予測が達成されるという。


◆アナリティクスを武器とする 先進企業になるための4つのメソッドとは?

企業差別化のヒントとなるアナリティクス。ではアナリティクスを効果的に企業に導入するにはどうすればよいか。

この点、山下氏はアナリティクスをはじめる、継続し続けるために必要なことは4つあると説明する。1つはアナリティクススキルの獲得と継続的な向上、2つはITシステム、適切な分析ツールの選択。3つめは業務プロセスへの組み込み。4つめは事実ベースで意思決定する企業文化の醸成である。

1つめのアナリティクススキルの獲得と継続的な向上のためには、ビジネス内容を理解するビジネススキル、必要なデータを収集・管理・加工するITスキル、データからパターンや法則を導き出す分析スキルの三つがバランスよく必要である(山下氏)。

2つめのITシステム、適切な分析ツールの選択とは、ビジネスインテリジェンスによって既に起こったことを断片的に把握し対処する。アラ―ト、検索、OLAP、非定形レポート、定型レポートからみえる“過去”を断片的にきりとることで、科学的な意思決定を達成することを指す。最適化、予測モデリング、時系列予測、統計分析などのアナリティクスを活用することで、本質をモデル化し、より精度の高い意思決定に近づくことができるという。

3つめの業務プロセスへの組み込みは、分析結果を報告で終わらせず、行動に移すための業務プロセスを指す。このプロセスでは「ビジネスとITを橋渡しできるデータサイエンティストが、業務とアナリティクスを分離させないための重要な存在となる」(山下氏)。

最後に4つめとして指摘されたのは、事実ベースで意思決定する企業文化の醸成。組織がアナリティクスをビジネス上の意思決定の基盤とすれば、アナリティクスの理解が組織横断的に広まり、よりアナリティクスの成功に近づくという。

ちなみに、山下氏によると、アナリティクスを武器とする先進企業の特徴として、以下の4つが挙げられるという。

・組織がその価値を理解し、事実ベースの意思決定を前提とした戦略の立案をおこなっていること。
・アナリティクスに必要な部門、人材、ITシステムに対する適切な投資と評価をしていること。
・アナリティクスを実施する上で、正しいゴール設定ができていること。
・経営陣のサポートを得ると、アナリティクス実践がよりスムーズとなること。

最後に山下氏は、ビッグデータ活用、アナリティクスプロジェクトを成功させるためには「データがあるからなにかしたい、という目的不明確なスタンスでは必ず失敗する。目的を明確に設定し、成功しやすい領域で少しずつ実行していくことが重要」と述べ、講演を終えた。
《北原 梨津子》

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