新しい『レンジローバースポーツ』は基本プラットホームが『ディスカバリー』から『レンジローバー』に変更された。レンジローパーと同時並行で開発が進められたという。その結果、軽量なアルミ製モノコックボディを採用するなど、基本のクルマ作りが大きな進化を遂げた。
高級感を増した外観はレンジローバースポーツではなくレンジローバーそのものといっても良いようなイメージである。インテリアについても同様で、レンジローバーと変わらないラグジュアリーな室内空間が作られている。
運転席に乗り込むと、センターコンソールにシフトレバーが生えているのが目に入る。ジャガーやレンジローバーではダイヤル式のシフトセレクターを採用するが、レンジローバースポーツではスポーティな操作をしやすいレバー式に変更したようだ。
コンソール部分には走る路面に合わせて走りを選択できるテレインレスポンスのスイッチがある。今回からオートモードが加わってテレインレスポンス2になった。通常のオンロード走行ではオートにしておけば良い。
V型8気筒エンジンはレンジローバーのほかジャガー『XJ』や『XK』にも搭載されているもので、動力性能は375kW/625Nmを発揮する。馬力換算で510psに達する数値だから、このエンジンがいかに強力かが分かるだろう。
アクセルを踏み込んで発進すると、エンジン音が一気に盛り上がると同時にトラクションコントロールを効かせながらも豪快な加速を示す。強烈な加速感ですぐに制限速度に達してしまうので、あわててアクセルを戻すようになる。
強力なエンジンによる走りはかなり荒々しいものだが、その一方で電子制御技術の採用によってしつけの良さも感じさせる。コーナーで内側のタイヤにブレーキをかけてアンダーステアを制御するトルクベクタリングのほか、アクティブ・ロール・コントロール・ダンパーや電子制御デファレンシャルなど、様々なデバイスが総合制御されて安定性を確保している。
大柄な重量級のボディでありながら、オンロードでのスポーティな走りを実現するのは、これらの電子制御技術に支えられている部分が大きい。
V型6気筒エンジンも既にジャガーに搭載されているもので、こちらは250kW/450Nmの動力性能を発生する。V8エンジンに比べるとパワーの数値はやや抑えられているが、V6エンジン搭載車は車両重量が軽いので、加速はV8エンジン搭載車と変わらないという。
V8のような荒々しさはないものの、力強さに関してはV6エンジンも相当なものがある。オンロードでの俊敏な走りを実現するのに十分な実力である。電子制御8速ATは走行中に何速に入っているのか分からなくなるのが面白くないが、逆にいえばそれだけスムーズに変速していることを示している。
足回りはレンジローバーとして5世代目の電子制御エアサスペンションが採用されていて、しっかり感を損なうことなく快適な乗り心地が確保されている。
V8エンジン搭載のオートバイオグラフィー・ダイナミックは1260万円の価格。V6エンジン搭載車はSEが798万円で、HSEが903万円の設定である。レンジローバースポーツはV6エンジン搭載車を中心に売れることになるだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。