マツダのメキシコ工場、宇品工場のノウハウを最大限に活用

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マツダのメキシコ工場
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メキシコシティから北西に約250km、グアナファト州サラマンカ市にマツダのメキシコ工場(MMVO)はある。トウモロコシ畑だった場所に建てられた工場は、敷地面積が256万平方メートル(東京ドーム54個分)で、工場面積が18.8万平方メートル(同4個分)と広大だ。

正門前からはヒロシマ通りが伸び、高速道路へとつながる。また、組立工場の横には鉄道の引き込み線があり、完成した車が積み込まれ、米国に輸送される。ちなみにテキサスまでは10日~15日だそうだ。

山内孝会長は「この工場には3つの使命がある」と話す。第1が“良き企業市民”となる使命、第2がマツダの構造改革を推進し、新たな歴史を築く使命、そして第3がマツダの新世代技術「スカイアクティブ技術」を世界に広める使命だ。

特に第1については、地域経済や自動車産業への貢献を果たすため、サプライヤーパークを建設し、日系サプライヤーを誘致して雇用の促進を図っている。また、環境保全にも力を入れ、工場建設時には「土壌を外から持ち込まず、また外に出さないようにした」(MMVOの江川恵司社長)そうだ。そのほか、工場建設地に茂っていた希少樹木のメスキーテを建物の周りに移植したり、雨水貯水溝をつくって水資源の保護も行い、地域住民との交流を図るため、サッカー場も開放している。

そして、肝心の工場は「プロセスごとにマツダの技術をすべて入れ込んだ。宇品工場と同じようなプロセスで、同じように加工・組み立てを行っている」と江川社長は説明する。工場建屋の配置も宇品工場とほとんど同じで、プレス加工から完成車の組み立てまで一直線に並ぶ。文字通り、宇品工場のコピーと言える。

ラインの長さも宇品工場と同じで、組み立て工場が約900m、エンジン工場が約320mとなっている。唯一違うのがロボットが少ないこと。自動化率は日本の工場を100とすると、この工場は40%だそうだ。つまり、それだけ人が多く働いているわけだ。そして、従業員は平均年齢が約28歳と若く、女性が約3割を占める。

そのため、人材育成には特に力を入れており、宇品・防府工場での研修をはじめ、体系的な人材育成プログラムを行っている。「メキシコ人にマツダのモノづくりを理解してもらうため、一昨年から170人を日本に呼んで研修した。今後も継続して行っていく予定で、マツダの進化に合わせてメキシコ人を教育していくことにしている」と山内会長は話す。

マツダはこれまで米国工場、防府工場と新工場の運営ではなかなか稼働率が上がらずに苦労したが、今回の工場は過去の失敗から学んだことが活かされているそうだ。しかも、“ものづくり革新”によって、生産能力23万台に対し、14万台でも黒字を確保できるとのことで、今回は事情が違うようだ。いずれにしても、マツダのメキシコでの挑戦はいま始まったばかりで、これから使命を実現していくためにいくつもの山を乗り越えていかなければならない。

《山田清志》

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