数理モデル研究で実現する自動運転やロボット技術…FIRSTプロジェクト

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科学技術振興機構FIRST合原最先端数理モデルプロジェクト研究員 藤岡慧明氏
  • 科学技術振興機構FIRST合原最先端数理モデルプロジェクト研究員 藤岡慧明氏
  • 右はFIRST(最先端研究開発支援プロジェクト)合原一幸氏 左は内覧会来場者。
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東京都江東区お台場にある日本科学未来館で新しい展示がはじまった。タイトルは「1たす1が2じゃない世界―数理モデルのすすめ―」。日本科学未来館内にあるメディアラボの13期目にあたるもので、公開期間は今年9月1日までとなっている。

◆5年で世界トップを目指す「FIRST」プロジェクト  目的は研究成果を国民に還元すること

展示の目的は東京大学大学院教授、合原一幸氏の研究内容を幅広い層の人に伝えること。「日常の何気ない現象も数理モデルで説明できるおもしろさを伝えたい」(日本未来館事業部展示企画開発課田端萌子氏)という。

合原氏はFIRST(最先端研究開発支援プロジェクト)に選抜された30人の研究者のうちの一人。5年をかけたプロジェクトの最後の年を迎えるため、今回の展示には国民への還元、の意味があるとのことだ。

FIRSTは日本全国から応募のあった研究者の中からトップの30人を選抜し一人当たり約15億円から60億円のプロジェクトを任せるという制度だ。

運営主体は総合科学技術会議(CSTP)。従来の研究開発制度には予算の単年度主義により資金を多年度にわたって自由に執行することが困難だったが、FIRSTでは研究者にとっての自由度が高く多年度にわたって使用できる仕組みである点注目された。

合原プロジェクトにも19億ほどの補助金がついたという。研究に関する審査は毎年おこなわれ、その評価も大変厳しい。プロジェクトのマネジメントをしてきた占部千由特任助教は「成果については文句を言われないが、常に“もっとわかりやすく”と言われてきた」といい、審査の過程で難解な数理モデルをわかりやすく伝えることに苦労したと話す。

◆なぜ数理モデル研究が必要か ロボット技術や自動運転にも応用可能

展示のうち脳のブースを担当したのは徳田慶太氏(科学技術振興機構FIRST合原最先端数理モデルプロジェクト研究員)。徳田氏は「生き物の研究というと、刃物で切って観察するイメージでしょう。でも僕らがやっているのは生き物を数字で切ること。イメージはなかなかわかないと思うけれど。そこをどうしたらわかりやすく伝えられるかがとても考えさせられた」と話す。

生物の超音波に関する能力について取り上げた、コウモリのブースを担当したのは藤岡慧明氏(同プロジェクト研究員)。「コウモリはすごくかわいくてユニーク。目ではなくて“耳で見る”という、自分たちとは根本的に違う世界にいきている。耳で見て、細かい虫との距離も正確にわかっちゃう。」その離れ業のスゴさを来場者につたえたい、と語る。

藤岡氏が研究する「音響センシング」に関する数理モデルが発展すればはあらゆる分野への応用が期待できる。
コウモリが「自分から音を出してアクティブにセンシングして障害物をよけたり、ナビゲーションしたりすることはロボット技術や自動車の自動運転と共通するものがある」(藤岡氏)。また、赤ちゃんの超音波装置をもっと高精度にするためにも必要な研究とのことだ。その他にも海中でさかなを探す場面など、その汎用性はきわめて高い、という。

◆難解でチャーミングな数理モデルをすべての人につたえたい

同展示物はわたしたちの日常生活で目にする現象がどのように数理モデルと関連するかを伝えるもの。

日常生活で目にする現象には病気・薬・地震などがある。その他コウモリやホタルなどおなじみのいきものも登場する。

数理モデルというと、多くの人にとっては敷居が高く、専門的すぎてわかりづらいイメージがつきまとう。そのため今回の展示は数学に詳しくない人にも伝わるよう努めたという。したがってソフトなデザインを意識し、つくる過程では非専門家のフィードバックも受けたとのことだ。

また、「参加者が手足を動かしながら数理モデルを体感してもらえたら」(日本未来館事業部展示企画開発課田端萌子氏)という想いから公開期間中はLEDホタルや感染症をテーマにした実験のようなワークショップが開催される予定だという。

数理モデルはサイエンスの中でもとくに狭くて細い分野。知る人ぞ知る難解なツールだ。しかし、「難解でありながら実はみなさんの日常の現象と密接に関連しているということを知ってほしい。周りで体験していることが実は数学的に表せるという視点と、そういう研究者がいるということをぜひ知って頂きたい。今まで解決できなかったことを数理モデルだから解決できる」という可能性を伝えたい、田端氏は語る。

またこの展示には占部特任助教のある想いが込められている。

「この(数理モデル)分野自体もそうだが、研究者が、とくに女性研究者がとても少ない。」そのため女性にも入りやすいように優しいテイストになるよう意識したという。この展示をきっかけに「女性の研究者がもっと増えてくれたら」と語った。

《北原 梨津子》

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