【F1 日本GP】観客席から見た今年の鈴鹿F1…ファン心をくすぐる“おもてなし”の数々

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贔屓のドライバーやチームの旗がひらめく。レッドブル、フェラーリ、ロータスの人気が目立った
  • 贔屓のドライバーやチームの旗がひらめく。レッドブル、フェラーリ、ロータスの人気が目立った
  • 決勝当日。スタンドはほぼ満員だった
  • 決勝当日、インフォメーションの前にあった手書きのスターティンググリッド。コースレコードも付記されているのが楽しい
  • 決勝前のドライバーズパレード。写真はポイントリーダーのベッテル
  • デモランを行うマクラーレンMP4/6(1991年)。ドライバーは伊沢拓也選手
  • デモランを行うロータス100T(1988年)。ドライバーは25年前と同じ中嶋悟氏
  • デモランを行うティレル019(1990年、右)とロータス101(1989年)。ティレルは中嶋一貴選手が、ロータスは中嶋大祐選手がドライブした
  • 鈴鹿F1決勝のオープニングラップ。レッドブルの2台をかわしてロータスのグロージャンが先頭で2コーナーを立ち上がる

10月12日(日)決勝。往年のF1デモランでテンションアップ

決勝当日も午前中に鈴鹿サーキット入り。今日も渋滞は思ったほど深刻ではなく、比較的スムーズに会場入りできた。

しかし、さすがに決勝は人が多い。後で聞いたら、決勝の観客数はミハエル・シューマッハが日本でのラストランを行ない、佐藤琢磨がスーパーアグリで走った2006年の半分ほどだったらしいが、観客の立場から言えばこれくらいが適正という気もする。

歩いている人の姿を見ると、チームウエアを着たり、コスプレをしたりした、根っからのF1ファンが目立つ。チームウエアで多いのは、チャンピオンチームのレッドブル、そしてフェラーリだが、意外に黒/金/赤のロータスも多い。ひょっとするとライコネンのファンなのかも。観客席での会話に耳をはさんでも、男女や世代に関係なく、知識の豊富さに圧倒される。海外のF1関係者が「日本のF1ファンはレベルが高い」と賞賛するのもお世辞ではないだろう。

サポートレースのスーパーFJとポルシェカレラカップが終わると、往年のF1マシンがデモランする「レジェンドF1」が始まった。昨夜のロータスとティレルに加えて、今日は中嶋悟氏が1.5リッターV6ターボのロータス100T(1988年)を、伊沢拓也選手が紅白マールボロカラーのマクラーレンMP4/6(1991年)を走らせ、豪華4台の共演となった。中でもMP4/6に搭載されるホンダ製3.5リッターV12のソプラノサウンドが懐かしい。これはおそらく、2015年に再びタッグを組むマクラーレン・ホンダの予告でもあるのだろう。

そして14時半。F1マシンが、ウォーミングアップ走行を始めた。やはりF1は、何度聞いてもエンジン音がすごい。前夜祭のトークショーでは、鈴木亜久里氏が、「(1987年に)初めて鈴鹿でF1を見た時、こんなものを日本のお客さんに見せたら(国内レースが)やばいと思った」と言っていたが、思わず同感してしまう。レース実況を行うピエール北川さんの声も、テンションがだんだん上がってきた。

◆夢のような1時間半

そして決勝スタート。轟音と共に、F1マシンが雪崩をうつように1コーナーに殺到する。2コーナーを先頭で立ち上がって来たのは、スタートでレッドブルの2台をかわしたロータスのグロージャン。昨年はクラッシュが多くて、評判も散々だったが、今季は一転して好調の「いーじゃんグロージャン」がレース前半を引っ張った。

レース結果については既報の通り、本命のベッテルがグロージャンをレース後半にかわし、5連勝。また、ウェーバーも終盤にグロージャンを抜き、レッドブルが1-2フィニッシュを飾った。3位はグロージャン。4位にはポイントランキング2位のアロンソが入り、タイトル決定は次戦インドGP以降まで持ち越された。

ウィニングランでは、ベッテルをはじめ、各ドライバーが観客に手を振りながらゆっくりとコースを周回。それに対して観客も両手を大きく振って応える。レースの終わりではおなじみの光景だが、何度見てもいいものだ。

夕陽が差し込む中で行われた表彰式をサーキットビジョンで見終わると、コースの後片付けが始まった。コースアウトした車両を回収するクレーン車が、アームの先を「さようなら」と言うように動かしながら撤収していった。

◆今こそ日本にF1が根付こうとしている

こうして、2013年の鈴鹿F1は終わった。冒頭でも触れた通り、今年の観客数はピーク時の半分ほどで、決勝日の観客数も、可夢偉が走った昨年より1割以上減って8万6000人だったらしい。

しかし実際にレースを生で見た者の感想としては、レース自体は素晴らしく、またモータースポーツイベントとしての魅力もやはり別格だと感じた。うがった言い方をすれば、今年は日本人ドライバーが走らなかった分、純粋に「F1」を楽しむイベントになっていた、とも言える。場内実況のピエール北川さんが決勝レースの直前に「あなたたちは本当のF1ファンです!」と叫んでいたが、それは本当のことだろう。F1という超一流のイベントは、観客数が過去最低となった今こそ、日本に文化として根付こうとしているのかもしれない。

そしてなにより、F1ファンの心をくすぐる、さまざまな仕掛けや「おもてなし」に感激することが多かった。これほど心のこもった国際的なビッグイベントは、モータースポーツに限らず、国内では数少ないだろう。満たされた思いでサーキットの出口に向かうと、そこには「また来年、お会いしましょう!」と書かれた横断幕があり、多くの観客がその下で記念撮影をしていた。横断幕の言葉は、決勝を生で見た8万6000人全員の気持ちでもあったと思う。

だが、やはり率直な感想を言えば、日本人ドライバー不在の影響が、興行的にも、そして観客の気持ちの上でも大きかったのは事実だ。サーキット全体が、そして日本のF1ファン全体が一緒になって応援できる対象が欲しかった、という思いは、この日、鈴鹿にいた人の心の中で、これまで以上に明確になったと思う。再び日本人ドライバーがフル参戦し、表彰台の真ん中を争うようになる……そんな日を実現するための火種を見た、今回の鈴鹿だった。

《丹羽圭@DAYS》

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