DCTにはもちろん多くのメリットがあるが、いまのところ半クラッチの制御を筆者にとって不満のないレベルで実現したクルマは存在しない。
だから、発進と停止を短いスパンで繰り返し、狭い駐車場で何度も切り返さなければならないような状況の多い日本で使うには向いていないと、かねてから思っている。
ところがホンダは、そのDCTが不得手とする部分をモーターに任せられることから、現時点ではモーターと組み合わせることを前提にハイブリッドのDCTを開発したのだという。モーターを使うことで微低速でギクシャクすることもなく、半クラッチの制御や耐久性といった難題から開放される。そのように開発者から聞いて大いに納得し、期待して乗り込んだ。
ところが、あくまで試乗したのがプロトタイプであることを念を押しておきたいが、件のところがあまりスムーズになっていなかった。また、少しでも効率を高めようとしてか、普通に流していると不意に、頻繁に前後Gが切り替わるところや、アクセルオフ時の空走感が気になった。壁を踏むかのようなブレーキフィールもいまひとつだ。
システム自体の完成度が高いことは理解しているつもりだが、運転しやすいかどうかというと、プロトタイプに乗った限りでは万人に薦められる感じではなかったので、市販時には改善されることに期待したい。
一方で、ガソリンのRSはなかなかの仕上がりだった。2代目も2010年のマイナーチェンジでかなり良くなったが、そのときエンジンだけが取り残されたように感じていたところ、プロトタイプは痛快なフィーリングを手に入れていて好印象だった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。カテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅し、プライベートでもこれまでプライベートでもスポーツカーと高級サルーンを中心に25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験を活かし、ユーザー目線に立った視点を大切に執筆活動中。レスポンスの試乗記には他媒体では書きにくい本音も!?
日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。