環境にも人にも優しい水性塗料、塗装体験で認知浸透へ…宇都宮市、BASF、ホンダボディサービス栃木

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ホンダボディサービス栃木にて開催された環境に優しい工場見学会
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7月31日、栃木県宇都宮市にて子どもたちが自動車の板金・塗装疑似体験を行なう「環境に優しい工場見学会」が開催された。

イベントにはBASFジャパン コーティングス事業部や板金塗装を手がけるホンダボディサービス栃木が協力。塗装体験においては、環境対応の水性塗料について学ぶことが出来る内容で、参加した子どもたちと父兄の間で、環境について考えるきっかけを提供する。

ホンダボディサービス栃木は、水性塗料を全面的に導入している。従来の溶剤系塗料は、シンナーを使うためVOC(揮発性有機化合物)による人体や環境へ負荷が課題となってきた。水性塗料を利用することでVOCに起因する環境負荷を大幅に削減できる。

一方で、溶剤系塗料から環境に良い水性塗料への切り替えは、事業者に負荷がかかる。水性塗料は従来の溶剤系塗料に比べ、一般的に価格が高い。さらに塗装時の作業道具に関しても少なからず新規導入が必要で、初期コストも一定額発生する。

こうした初期コストや運用費に関しては、作業内容の効率化で補うことになるが、同時に環境対応技術の採用を他社との差別化要素としてアピールすることが必要。“水性化”、“環境対応”を武器にするための試行錯誤は各社で続く。

ホンダボディサービス栃木は、地域でも相当の規模を持った事業者で、数のスケールは、水性塗料導入が成功ラインまで達した一因になっている。

加えて大きなポイントは、水性塗料導入の取り組み姿勢にある。水性塗料は、塗装技術が従来と異なる。そのため、溶剤系塗料の技術に慣れてしまった熟練ペインターは、一から作業技術を習得する必要がある。この点、ホンダボディサービス栃木では、人材育成の観点から、若手を中心に新技術の導入に積極的に取り組んだ。同社によると、水性塗料への切り替え期間は1か月ほどだったとのこと。なお、同社に所属するペインターの永塚伸洋さんは、BASFが開催している世界のペインター技術競技会『R-M ベストペインターコンテスト』で2010年に優勝を果たしている。今秋にも同様の世界大会がフランスで開催され、今年は広島の新和自動車、菅原健二さんが日本代表として大会に挑む。

永塚さんの活躍などもあり、ホンダボディサービス栃木の成功事例が宇都宮市を含め、地域からの評価を得、「環境に優しい工場見学会」の開催に結びついている。

今年は例年通り、「板金」と「塗装」の2グループに分かれて実施した。板金体験では、タイヤの取り外し・取り付け、バンパーからフェンダーの取り外し・取り付けなどを実施。塗装体験では、クルマにスプレーガンで色を付けていく。作業にあたっては、つなぎ、帽子の他、マスク、ゴーグル、手袋、靴カバーで子どもたちを保護。塗料にも水性絵の具を使用した。

一連の体験会を終えた後、質疑応答が行なわれ、父兄や子どもたちから鋭い質問が飛び交った。

いち早く質問として父兄から上がった内容は「水性塗料の耐久性はどのくらいのものなのか」というもの。これに対してBASFコーティングス事業部の担当者は「新車ではすでに多くが水性塗料を採用しています。水性といっても、従来の塗料と比べ、耐久性が低いということはないです。VOCを発生するシンナーは、塗料を薄めるときに使うもので、その部分を水性、環境により良いものにすることで、環境負荷を低減しています」と回答した。

子どもたちからは「一日何台のクルマを直しているのか、何日くらいでクルマが直るのか」といった質問があがった。これに対して、ホンダボディサービス栃木の担当者は「30人くらいの従業員一度に60台くらいのクルマを直しています。一日に直るのは平均10台くらいです」と修理のペースと規模を紹介した。

最後に、ホンダボディサービス栃木の長嶋専務は「水性塗料を使う事によって、皆さんに工場へ来ていただけるようになった。これまではそういう事ができませんでした。環境にも優しい、従業員にも優しい、というのが水性塗料です。導入からすでに4年たっていますが、宇都宮市との協力もあって、こうしたイベントの開催が継続でき、非常に励みになっています」と述べた。

《土屋篤司》

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