『フィット』の3代目は、ホンダ開発陣の熱の入りようが伝わってくるクルマだ。その主な原動力は、これまで燃費性能で後塵を拝してきたトヨタのハイブリッドを追い越そうという思い、なかでも特に同セグメントのアクアに対するライバル意識だといっていいだろう。
その新型フィットのプロトタイプを目にしてまず感じたのは、先代より明らかに質感の上がった内外装で、実際のボディサイズはそれほど大きくなっていないにもかかわらず、ひとクラス上のクルマになったかのような印象を与える。例えばチルトだけでなくテレスコピックも調整可能なステアリングなんか、このクラスのクルマとして拍手モノだろう。
ドライビングしてみて特に印象的だった点は2つ。ひとつは新方式ハイブリッドのパワーユニットがパワフルな走りを実現しているのに加えて、アトキンソンサイクル採用の1.5 リットルエンジンが、ハイブリッド用としては異例なほど耳に心地好いサウンドを奏でる、ということだった。例えばクラウンハイブリッドの4気筒が、回転を上げるとその車格とクルマのイメージに相応しくない少々安っぽい音を出すのに対して、フィットの4気筒の回転音は小型車ながらハイブリッドの常識をいい意味で覆していると思う。
もうひとつ、RSの1.5リットル 直噴が、ホンダのスポーツユニットに相応しい気持ちよく回るエンジンであることも印象に残った。これとMTとの組み合わせによって、フィットRSがある意味で古典的な、スポーティに走れる小型車に仕上がっているのが好ましい。
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
吉田匠|モータージャーナリスト
子供の頃からのクルマ好きが高じて、青山学院大学卒業と同時に自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集記者としてニ玄社に入社。同誌ではスポーツカーのロードテストなどを主として担当し、ヒストリックカー、ツーリングカー、FJなどのレースにも参戦、優勝経験もけっこうあり。後にフリーランスのモータージャーナリストとして独立。自動車専門誌や一般誌に記事を執筆し、今日に至る。『ポルシェ911全仕事』『男は笑ってスポーツセダン』(双葉社)等、著書多数。