【カロッツェリア サイバーナビ インタビュー】「“スマートループ アイ”で交通環境の変化を画像で見える化した」

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パイオニア カーエレクトロニクス事業部の佐藤智彦氏
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  • AVIC-ZH0009HUD
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  • スポットの画像は撮影日時や速度についていも表示される
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パイオニアは「スマートループ アイ」など新機能を搭載した2013年モデルのカロッツェリア『サイバーナビ』(AVIC-VH0009/ZH0009シリーズ)を発売した。

新型サイバーナビは、“クラウドARナビ”を謳い、新機能「スマートループ アイ」を搭載。この機能は、カメラで撮影した画像をサイバーナビユーザー同士で情報共有し、ルート上の状況を知ることができるというものだ。音声入力機能も強化され、サーバーを経由する「フリーワード音声検索」が追加された。また、「Linkwithモード」も搭載しトレンドのスマートフォン連携も忘れていない。文字通りのフラッグシップモデルに仕上がった。

また2012年モデルで登場した「AR HUD」も刷新され、より見やすく・実用的な表示へと改められている。カメラで撮影された前方の風景には普段気づきにくい道路の情報が重ねて表示され、ドライバーに気づきを与えるなど、安全面でのサポートもおこなう。

今回、サイバーナビの開発を担当したパイオニア カーエレクトロニクス事業部の佐藤智彦氏に話を聞いた。

◆全国5000カ所+αの情報を発信する「スマートループ アイ」

----:今回のサイバーナビは“集合知”の発想を拡大した「スマートループ アイ」の採用が大きなトピックとなりました。この機能を採用するに至ったきっかけについて、まずお教えください。

佐藤:企画の発端を話しますと、“自分の良く行く場所の状況を知るための方法は何かないか?”という、ドライブでよく思い浮かぶシーンがありました。

たとえば、良く行くお店があるとして、週末になると駐車場の入り口が混んでしまうケースがあるとします。「そのお店が、今どういう状況かがわかれば、時間帯を変えて行くかもしれないし、別のお店に変更するかもしれないよね」といった自分たちの話から企画がスタートしています。2011年のサイバーナビから車載カメラをシステムに取り入れていましたので、スマートループの新たなサービスとして、特定のポイントを通過する際に撮った画像を他のサイバーナビユーザーと共有しあう、という今回の新機能が実現したわけです。

----:その撮影ポイントは、全国に何カ所あるのでしょうか?

佐藤:スタートのタイミングでは、約5000カ所ぐらいのスポットを設定しています。また、交通規制情報に対応して、FM VICSの規制情報をキャッチすると車載機のシステムが作動します。1日におよそ3000件の規制情報が発生しているとの実績もあるので、5000カ所+αの場所で情報発信ができるのはないかと考えています。

スポットの選定に関しては、高速道路はほぼすべての施設を収録しておりまして、あとはスマートループにおける過去の走行実績に基づいて、よく通行されている場所、目的地として設定されることが多い施設などを、我々の方でセレクトしています。スマートループ渋滞情報に加えて、スマートループ アイにおいては、規制情報も含めて、交通環境の変化を画像データを使って見えるカタチにし、これまで以上にドライバーの快適なカーライフをサポートしていきたいと考えています。

----:スマートループ アイのサービス品質を向上するには、アップロードされる頻度や枚数がある程度増えないと難しいということはありませんか?

佐藤:集まってくる画像の多寡でサービスが“成立する”、“成立しない”、とは考えていません。2011年にクルーズスカウターユニットを世に出したときの例ですが、渋滞学の見知を持ち込みました。つまり10台に1台でも“車間を維持して走る”という意識をもって運転していただければ、渋滞を抑制する方向に働くというものです。

「スマートループ アイ」に関しても、私たちがご提供する画像情報がすべてではなく、事前に目的地までの予測をして運転することを意識してもらう、ちょっと周りを意識してもらうためのきっかけにしてもらうことで、よりスムーズなドライブを実現してもらいたいという思いがあります。

◆地図情報ありきのナビゲーションからの脱却

----:HUDやクルーズスカウターユニットを使っていると、地図だけを見せる既存のカーナビゲーションの世界から抜け出た感じがします。UI面ではスマートループ アイをどのような見せ方にしようと考えたのでしょうか。

佐藤:たしかに、HUDを出したことで、ディスプレイ側の新たなご提案ができたと思っています。また、「スマートループ アイ」を使っていただくにあたっては、自動的に動作することにこだわってやってきました。運転中にドライバーが撮影するとか画像をアップロードするというのは安全上の懸念があります。したがって、画像撮影はもちろん、自分がこれから走ろうとしている行程で必要な情報を取得するというのは自動化し、気になる画像があったらそこで初めて画面をタッチして確認するといった仕組みになっています。

----:HUDも改良がされましたが、ポイントは?

佐藤:HUDに関しては、反響を聞くと男性は未来感のあるデバイスとして共感する方が多かったようですが、女性や年齢を重ねている方は、“わかりやすいですね”といった、評価をいただいています。今後もドライバーの負荷をいかに下げるかを念頭に、運転に集中できる状態空間作りを目指していきたいですね。

新発売のAR HUDユニット(ND-HUD2)は、取付け金具を改良することで取付上の制約を改善し、装着可能車種がおよそ2割増えています。また、HUDの表示領域を調整し、より広角で表示することで、実際の風景とHUDが表示するものとのマッチングを高めています。クルーズスカウターにも新しい機能が追加されていますので、表示するものをドライバーが選択できる機能を採用しています。

----:音声入力も改善されましたね。精度の良さには驚きました。

佐藤:サイバーナビでは、“ラジオを聞きたい”、“CDを聞きたい”など、ある一定の機能を音声操作することが可能な機能とともに、場所や施設を検索することに特化した「フリーワード音声検索」機能を新たに搭載しました。

「フリーワード音声検索」では、音声を解析してテキスト化し、そのデータから目的地設定に有効なキーワードを抽出します。キーワードを抽出することでドライバーの利便性をより一層向上させており、その処理部分には、我々のノウハウが詰まっています。例えば、“川崎の駐車場を探したい”という音声入力に対しては、ナビゲーション単独では処理しきれなかった部分なのですが、音声データをサーバーにあるエンジンで処理することで、的確な目的地検索に活かすことができるようになりました。

音声操作に関しては、クラウドの普及や音声認識技術が向上したことに加えて、当社が車内での利用を前提としたノウハウをベースとして持っていたことが大きいですね。これまで地道にやってきたことが実を結んだと思っています。

◆自由な発想でカロッツェリアブランドを育てる

----:HUDやカメラを活用したシステムは、今でこそ自動車メーカーやOEMサプライヤーが躍起になって取り組んでいる分野ですが、カロッツェリアでは研究開発のみならず常にサイバーナビに先進技術を投入して実用化していますね。

佐藤:汎用の市販品であるということ、つまり車種や車格を限定せずに発想できるということが、カロッツェリアの強みだと感じています。もちろん、汎用性を担保しなくてはならないのは制約ですが、“こうあったらいいな”という自由な発想を製品に投影できるのがブランド力の向上につながっていると考えています。

ここ数年は、「高画質」や「高音質」といった既存のナビとのスペックの相対評価になりがちな分野だけではなく、革新的な機能の実現にチャレンジし、絶対評価してもらえる分野に取り組んできました。車載カメラやHUDがそれにあたりますが、従来モデルや他社製品と比べてどうだったというより、単純にそれを見て評価してもらえる世界を作りたいとやってきました。プロダクトとして“こういうことができるようになりました”というのを目指すのではなく、お客さんがどれだけ快適になった、それによって便利になったかということを我々は求めていきます。

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