夏本番を迎え、レジャーにクルマを利用するシーンが増える時期。炎天下のなか、バッテリーにかかる負担は少なくない。特に近年は駆動システムにも電力を用いる車両が増え、改めて車と電気の関係がフォーカスされる機会が増えた。
自動車用バッテリーを手がけるジーエス・ユアサ バッテリーの営業企画部部長の畑中剛氏に自動車用バッテリーの適切な利用について話を聞いた。
---:低燃費性能の進化が進んでいますが、バッテリーとの関係をどのようにとらえていますか。
畑中氏(以下敬称略):エコカーが増えています。エコカーが何を指すかというと、ハイブリッド車はもちろん、2007年くらいからアイドリングストップ(IS)車が本格的に台頭してきました。以前からIS車はありましたが、タイミングとしてはマツダ『アクセラ』の投入が大きなインパクトになりました。
2012年度は新車需要の2割以上がIS関連車両です。国内保有台数を母数にするとまだまだ少ない数ですが、時間が経てばアフター分野でも一定の規模になってくるだろうと想定しています。
実はIS車のバッテリーは特殊品番なのです。アイドリングストップは、バッテリーに対する負荷が高い、従来のバッテリーですと使いものにならない、ということで、従来品番と区別するために特殊品番になっています。
---:IS車の取り替え需要が少しずつ発生する時期に差し掛かっているということですね。IS車オーナーへの啓蒙活動は行なっていますか。
畑中:例えば2012年度は国内自動車用バッテリーの取り替え需要が約1300万個以上ありました。輸入車を加えるともう少し大きく1600万くらいでしょうか。このうちIS車バッテリーの取り替え需要は3万7000個くらいです。まだ小さな数字です。
一般的な自動車ユーザーの方々はバッテリーに関してあまり意識しないですよね。私どもも、改めて今後、啓蒙していかねばなりません。
---:ユーザーの理解や意識は大事です。一方、バッテリーの技術的な側面に関していうと、突然ダウンしてしまうというケースが増えているようです。
畑中:極板にアンチモン合金を使っている一般的なバッテリーは性能が徐々に低下するので、乗車していると、何となく替え時かなという兆候があらわれます。これに対して補修用に普及している高性能バッテリーは、寿命ギリギリまで性能があまり低下しないカルシウム合金を使っています。このため寿命終期まで兆候がないまま突然ダウンすることが多いのです。
---:今後バッテリーに求められる性能は。
畑中:昔はセルモーターを回してエンジンをかけるのがバッテリーの重要な役目でした。しかし、今は電子機器が多く使われているので、エンジンをかけるだけでなく、電子機器に安定した電気を供給する役目が重要になっています。
また、以前はエンジンがかかっているときはオルタネーターで発電した電気を使っていましたが、現在は通常走行時には極力オルタネーターの発電を止めて、バッテリーの電気を使うようにしています。そして、減速時にオルタネーターで大きな電力を発生させ、一気にバッテリーを充電する充電制御システムが2000年頃から採用されています。
このシステムは減速エネルギーを有効に回収(回生充電)できるので、燃費向上に役立っています。こうしたことを踏まえると、電力を受け入れる能力(充電受入性能)が高いバッテリーが要求されています。
バッテリーの電気が回生充電だけで間に合わなくなったときは、エンジンの力でオルタネーターを働かせて充電しますが、充電受入性能が高いバッテリーは、短時間で大きな電力を受け入れることができるので無駄がないといえます。
---:今回、新製品『エコR ロングライフ』を市場投入します。
畑中:エコR ロングライフは充電受入性能を向上させただけでなく、従来品に比べ2倍以上の長寿命が期待でき、IS機能を搭載していない通常の車も、IS車も、両方に対応するバッテリーになっています。
---:新製品の価格設定は。
畑中:従来のバッテリーには機能と価格を3段階ほど用意しています。エコR ロングライフの価格は従来バッテリー価格と照らし合わせると、最高クラスのいわば“松”レベルに相当します。エンドユーザーの方々には高性能バッテリーならではの安心感と長寿命を、加えて流通、在庫面では通常車、IS車ともに対応するという点で、バッテリーを一本化できるというメリットがあります。