【ホンダ アコードHV 試乗】エコランにチャレンジ! 最良値はリッター31.0km…井元康一郎

試乗記 国産車
トータル燃費はリッター31km
  • トータル燃費はリッター31km
  • 途中では平均燃費計がリッター38km台を表示する場面も。
  • ホンダ アコード ハイブリッド
  • ホンダ アコード ハイブリッド

JC08モード走行時の公称燃費30km/リットルと、軽自動車並みのエコ性能を有する新型ホンダ『アコードハイブリッド』。ここで興味がわくのはその素晴らしい公称燃費がただのお飾りなのか、それとも優れたエネルギー効率の証なのかということ。房総半島の「かずさアカデミアパーク」周辺で行われたメディア向け試乗会に参加した際、エコ性能を確認した。

試乗車は先進安全装備を満載した上級グレードの「EX」。試乗ルートは交通量の少ない一般道や高速道路が主体で、房総丘陵のアップダウンが結構きついこと以外は本来エコランにはうってつけのはずだったのだが、試乗日の6月26日は生憎の大雨で、雨水が路面の轍からあふれだすほど。走行抵抗と格闘しながらの走行となった。

筆者を含め4名乗車でエアコンはON。高速道路、一般道とも制限速度まで加速して後続車に迷惑をかけないという走り方を維持しながら試乗を終えた時のオンボード燃費は20.5km/リットル。スロットルをオフにすると車速がたちまち下がっていくという悪コンディションであったとはいえ、いささか不本意な結果に終わった。

これでは実力値がわからないということで、筆者のみ翌々日の6月28日に試乗会場を再訪し、ふたたびエコランに挑戦してみた。最初の試乗とは打って変わって路面は完全ドライ。気温も25度とそこそこの低さで、コンディションとしては悪くない。まず、高速道路やワインディングロードを走ってみた。エコもいいが、価格的には完全にプレミアムDセグメントのアコードらしさも味わっておかねばとの考えからだ。

アコードのモーター出力は124kW(169馬力)と、2.5リットルガソリン並み。一方、2リットル直4エンジンは105kW(143馬力)だ。エンジンとバッテリーを合わせたシステム出力は最大146kW(199馬力)とされているが、トヨタ自動車の「THS II」のようにエンジンパワーを駆動と発電に自在に振り分けられるわけではないため、エンジン直結モード時以外はモータースペックの169馬力が上限値となる。

実際にドライブしても、高速道路への流入や追い越し、コーナリングからの脱出などにおけるフルアクセルでの加速感は驚異的なものというわけではなく、至ってジェントルなフィールを保ったまま速度がぐんぐん上がっていくというイメージだった。

もっとも、それは遅いというのと同義ではない。一般的な速度域では電気モーターが最大出力を瞬時に発生させることができるため、十分以上の加速度が意のままに得られる。回転数によって上限出力が大きく異る内燃機関と決定的に違う部分だ。が、それでも加速性能の体感値は最大のライバルであるトヨタ『カムリ』より若干低そうに思われた。このへんは加速感の違いが影響している可能性もあり、テストコースでタイム計測をしてみたくなるところでもある。

そのようなドライブに、必然的にエンジン&発電機を豪快に作動させることになる。結果、燃費は19.7km/リットルと、豪雨に見舞われる中でのエコランより悪い数字となった。

2度ドライブしているうちに、次第にシリーズハイブリッド「i-MMD」の持っている性格のようなものが少しずつわかってきた。そこで最後に、良好なコンディションの中を丁寧にドライブしたらどのくらいの燃費を叩き出せるか試してみた。試乗コースは前2回と異なり、一般路のみ。道路の比率はざっとワインディングロードや急勾配が2割、たまにしか信号がない地方道が6割、市街地2割。エアコンON、1名乗車、制限速度維持という条件でトライした。

結果は31.0km/リットル。i-MMDの電力制御、発電制御の美味しそうなところをあまり外さずにすむようになったこともあってか、3度目にしてようやくJC08モード燃費を超えることができた。この燃費が納得のいくものというわけではない。ドライブ中、一時は平均40km/リットルに迫り、試乗会場入り口のきつい登り坂をエンジンをかけて登っても35km/リットルは超えられるだろうと思ったくらいであった。試乗の後半に赤信号を無視して割り込んできたトラックに邪魔されて急制動、直後の急な登り坂で燃費を大幅に落としたり、といったハプニングが続出。ようやく30km/リットル台を回復してのゴールだったのだ。

もちろんこの燃費を常に出せるわけではないだろうが、エンジンのエネルギー効率の良い所で発電させるような加速はどれくらいか、電力消費をどうやったら抑えられるかを考えるなど、エコランの努力にかなり応えてくれそうなクルマであることは間違いなさそうだった。ディーラーでの試乗の際にいろいろトライしてみるのも面白いだろう。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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