【トヨタ クラウン 試乗】4気筒でもHVを買う時代に突入した!?…青山尚暉

試乗記 国産車
トヨタ クラウン
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  • 後席エアコン吹き出し口
  • 後席頭上エアコン吹き出し口

14代目となる新型『クラウン』のハイライトは迫力のフロントフェースや、度肝を抜くピンクのボディーカラーだけでは決してない(写真はたまたまピンクのアスリートですが)。

特筆すべきは高齢化したロイヤルカスタマーにこそふさわしい経済性に富むHVモデルのあり方だ。先代HVはパワー指向の3.5リットルV6+モーター。実燃費は2.5リットルV6とほぼ同等だったと記憶している。

しかし新型は新開発のFR専用2.5リットル直4+モーターへとダウンサイズ。JC08モード燃費は14.0km/リットルから一気にクラス最上級の23.2km/リットルを達成。つまり66%もの向上を果たしたのだ。トヨタと してはロイヤルカスタマーにこそ乗ってもらいたいのがこのHVモデルだそうだ。

そんなHVを、ロイヤルにOP、アスリートに標準の17インチタイヤ装着車で試乗した。

走りっぷりはクラウンらしい乗り心地重視の体に優しいソフトな足回りが印象的だ。カーブでは比較的ロールを許すものの、そうした設定は意図的。ガソリン2.5リットルの16インチタイヤ装着車とともに、クラウンの心を知った(!?)モデルとして存在するからだ。とはいえ、先代とくらべフラット感、タイヤの接地感の高さ、外乱に対する強さは明らか。基本的な安定感はハイレベルだから、クラウンらしい乗り味でも操安面で不安になるようなシーンはまずないと言っていい。

静粛性は圧巻だ。低速域の巡行で良路なら耳に届くのは微小なロードノイズのみ。モータートルクがアシストする加速感にしてもウルトラスムーズで素晴らしく伸びやかだ。あえてアクセル操作に対してゆったり加速させ る制御ながら、力不足を感じるシーンはまずない。ほとんど3リットルV6並みの動力性能と言っていいだろう。

伝統的にクラウンは小回りの良さも売りだが、今回も最小回転半径は5.2mと優秀。小回り性の良さもさることながら、カーブなどでは少ない舵角で曲がれるメリットもある。

新型クラウンの先進装備として見逃せないのがトヨタマルチオペレーションタッチと呼ばれるインターフェース。純正ナビとセットすればタブレット感覚でナビ、エアコンなどの操作が行える。階層が深く、操作がやや煩 雑になることもあるけれど、メーター回りの燃費表示などは文字が大きく瞬時に判別できる。加えて、HVだからトランクの狭さはあきらめなきゃいけない…なんてこともない。トランクは拡大され、HVモデルでも 9.5インチのゴルフバッグ4セットが入る。

横浜周辺の市街地、高速道路を走った経験での実燃費は、市街地16km/リットル前後、高速道路20km/リットル前後だった。先代HVとは大違いである。

それにしても、新型HVモデルの価格はエンジンのダウンサイズなどによってロイヤル系で410万円からという魅力的な設定だ。この原稿執筆時点でのHVモデルの販売比率が何と約70%、10台中7台に達する。もはやクラウンは4気筒であろうと、HVで買うべき時代になった感がある。

お薦めグレードはロイヤル系ならロイヤルサルーン。アスリートならアスリートS。価格とクラウンに不可欠な上級装備のバランスが良く、前席シートベンチレーション、リヤオートエアコンなどのOP装備も付けられるからだ。後席に愛犬を乗せるなら、3か所に吹き出し口があるリヤオートエアコンはぜひとも装着していただきたい。暑がりの犬の夏場の快適度がまるで違う。

いたせりつくせりの装備類ながら、『エスティマ』のHVに標準、『アルファード、ヴェルファイア』のHV、『プリウス』にOPで用意される100V/1500Wコンセントの設定はない。トヨタとしては『カムリ』を含めHVでもセダン系には不要…という考え方らしいが、地震大国の"国内専用車"ゆえ、いざというときのためにぜひとも設定してほしいところ。オーナーカーはもちろん、公用車、緊急自動車、タクシーのHVが増えたとき、電源供給車としての威力は計り知れないと思うからだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、ドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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