ボーイングは3月15日、787型機に搭載するバッテリー改善策の詳細を紹介する説明会を開催した。
バッテリーシステムの改善策は、ボーイングの技術チームが、発生原因の可能性があると特定した要因について詳しく調査してまとめた。調査結果については社内のリソースに加え、各業界、大学、国立研究所からの専門家も交えて立証したとしている。
改善策は、電力変換システムのサプライヤーであるタレスとバッテリーメーカーであるGSユアサと協力、より高い製造スタンダードとテストを策定し実施することで、セルやバッテリー全体の品質に差が出ることを防ぐ。
現在は10種類のテストが実施されているが、改良版を含めてセルの製造検査に、新たに4種類のテストを追加する。個々のセルに対して、毎時間放電率をチェックする14日間のテストや、より厳格なテストを実施する。新たな製造プロセスは2月初旬から開始しており、新しいプロセスに沿った最初のセルは既に完成している。それぞれのバッテリーには12種類以上のテストが受領前に実施される。
ボーイング、タレス社、GSユアサは、バッテリー充電時の電圧許容範囲を狭めることで合意しており、充電時の上限電圧値を引き下げ、放電時の下限電圧値を引き上げる。これに伴って、バッテリー監視装置と充電装置の設計を変更、充電装置は充電中のバッテリーへの負荷を減らすために充電サイクルも調整する。
バッテリー内の設計も変更して、問題発生を防止し、万が一発生したとしても他部への拡大を防ぐ仕組みを採り入れる。
セル間、セルとバッテリー容器との間に2種類のインシュレーターを取り付け、独立性を強化する。個々のセルには絶縁シートを巻き付け、セルに問題が発生したとしても伝播を防ぎ、セルの上下とセル間には、耐電・耐熱に優れた仕切り板を取り付ける。
バッテリー内のチューブや配線は、より耐熱性・耐摩耗性の高い素材で保護し、ロック機能を持つ新たな締め具によって8個のセルをつなぐ金属製バーを固定する。バッテリーセルとバッテリー監視装置を入れるバッテリーケースにも変更を加える。ケースの底にある小さな穴は結露対策、横の大きめの穴は、バッテリーに不具合が発生した場合、他の部分へ影響を軽減するための排気対策として機能する。
バッテリーケースは、ステンレス製の新容器内に格納し、電気室内の他機器から隔離する。新容器内での発火の可能性はなくなることから、バッテリーに対する保護策となる。この容器は、煙などを機外に直接排出する機能も持つ。電気室内には、新しいチタニウム製固定器具を取り付け、容器を固定する。
認証取得用テスト前に実施するエンジニアリングテストでは、バッテリー内の全セルに不具合が発生した場合でも新容器に耐久性があることを実証した。最大負荷を、バッテリーに不具合が発生した際の想定最大値の1.5倍相当に設定して実施したテストでも新容器は全く問題なく、3倍以上の負荷を加えるまで持ちこたえた。
別のテストでは、新容器内で火災が発生しないことも実証した。無酸素になるように設計されている新容器は、不活性状態になる。火災の発生を防ぐ不活性状態は、火災の感知や消火よりも有効な対策となる。煙やガスなどを電気室内にではなく、機外に直接排出させる設計にもなっている。
ボーイングのテスト計画は、米国航空無線技術委員会が設定する新たな業界標準(DO-311)に基づいて実施する。
ボーイング民間航空機部門のレイ・コナー社長兼CEOは「改善案が全て承認され、航空機に適切に導入するまでに必要とされる要件を1つ1つ確実に満たし、航空会社が1日でも早く運航を再開出来るように最大限努力する。同時に、デリバリーの再開に向けた作業も進めていくが、ボーイングにとっての最優先事項は再認証取得と航空会社による787型機の運航再開である」と述べた。