宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡を使った観測によって、宇宙線陽子が超新星残骸で生成することの決定的な証拠が発見されたと発表した。
今回の発見は、米国科学誌「サイエンス」2月15日発行号に掲載された。
宇宙から地球へ到達する宇宙線(一次宇宙線)の90%は陽子で、9%がヘリウムをはじめとする原子核、1%が電子となっている。これまで一次宇宙線の大部分は、銀河系内の超新星の爆発に由来するのではないかと考えられてきたが、観測的な裏付けは無かった。
最近の観測によって、宇宙線の電子成分の源が超新星残骸であるということが突き止められた。地球に降り注ぐ宇宙線の大部分を占める陽子成分についても、超新星残骸で生成されているという示唆があったものの、決定的な証拠が無かった。
高エネルギーの陽子や原子核が周囲のガスと衝突すると「中性パイ中間子」が生成、それがすぐに崩壊し特有なエネルギーのガンマ線を出すため、これらの確証を得るためには、高エネルギーガンマ線の観測が重要な役割を果たす。超新星残骸からこの特徴的な放射が観測されれば、宇宙線の陽子成分が超新星残骸で生成することの決定的な証拠となる。
フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は、中性パイ中間子からの特徴的な放射が現れると予測されているエネルギー帯域に感度を持つ。
京都大学の田中孝明助教を始めとするフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡のチームは、ふたご座の方向にあるIC443とわし座の方向にあるW44という2つの超新星残骸について、2008年の観測開始から2012年までの約4年間分の観測データを解析した。この結果、全ての超新星残骸について、低エネルギー側でエネルギーフラックスが急激に小さくなっており、中性パイ中間子が崩壊することによる放射であると結論付けることができた。これによって1912年の発見から約100年で宇宙線陽子の源を特定することに成功した。
今回の成果は、フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡のデータ解析方法の改良や較正の精度向上などが進んだことで、実現できたとしている