『N BOX』から始まったホンダの新世代軽自動車で本命となるのが『N-ONE』だ。N BOXが想定以上のヒットを続けているのが、本命がN-ONEであるのは間違いない。

外観はタイムレスデザインを標榜(ひょうぼう)する。団塊の世代には懐かしく、若い世代には新鮮に映るデザインというわけだ。今の軽自動車の中で個性が光るデザインであるのは間違いない。N BOXと同様、ルーフとドアミラーをボディカラーと異なる色に塗り替えるツートーンカラースタイルの設定もある。

N-ONEのインテリアは軽自動車とは明らかに異なる仕上がりだ。中でもプレミアムには専用にコーディネートしたインテリアが用意され、本革巻きステアリングホイールや手触りの良いシート表皮、専用のインパネ素材などが軽自動車を超えた高い質感を表現する。

独自のセンタータンクレイアウトを採用したパッケージングの良さは先に発売されているN BOXなどと変わらない。全高がやや低いので室内空間の容量は小さくなるものの、後席に座ったときの足元空間の広さは十分。座面のチップアップや背もたれを倒すと、長尺物からかさばるものまで、いろいろな形状と大きさの荷物を積める。

運転席回りを中心に豊富な収納スペースが確保されるほか、後部のラゲッジスペース下にはサブトランクも用意されている。

走りに関しても相当に意欲的だ。開発責任者は元F1エンジニアとしての経験から、ターボを装着すれば排気量が倍の自然吸気エンジンに相当するので、660ccターボは1.3リッターを搭載するフィット並みの走りが得られるという。

N-ONEにはターボエンジンの搭載車にツアラーという名前が付けられている。これは高速での長距離ドライブも意識してのことで、それに耐えるパワートレーンや足回りに仕上げている。

エンジンの動力性能は先に発売されたN BOXなどと変わらないが、N-ONEは車両重量が軽い分だけ走りが良くなり、燃費も向上している。

N-ONEの走りの良さはターボ仕様のエンジンを搭載したツアラーが際立っている。低速域から十分なトルクを発生するので、力強い加速感がスムーズに得られる。CVTとの組み合わせなので、アクセルワークに対するダイレクト感はさほどではないが、相当に元気の良い走りが可能だ。

ターボ車はツアラーLパッケージとプレミアムツアラーLパッケージに試乗した。ふたつのモデルに装着されるタイヤが異なっている。プレミアムツアラーLパッケージは15インチタイヤを履いていて、ツアラーLパッケージの14タイヤ装着車に比べると、乗り心地がちょっと硬めの印象になる。

コーナーでの安定感などは当然ながら15インチタイヤの方が勝るが、総合的に考えたらどちらが良いかは微妙である。乗り心地を考えたら14インチタイヤの方が良いが、充実した装備や仕様を考えるとプレミアムになるからだ。

自然吸気エンジンを搭載する標準車のG・Lパッケージにも試乗したが、G系のモデルにはフロントスタビライザーが装着されていない。プレミアムの自然吸気エンジンの搭載車には装着されるのに、G系にだけはないのだ。

このため走り出すとすぐに安定性の違いが分かる。軽めのステアリングフィールで、中央付近に少し手ごたえ不足を感じるほか、ハンドルを切るとすぐに姿勢が傾く感じになる。N-ONEは全体に良くできたクルマであるだけに、この設定は惜しい。

自然吸気エンジンの搭載車は、元気良く走らせようとするとエンジンを回しがちなる。その分だけエンジン音が入ってくるので、上級モデルがかなり高い静粛性を示すのに比べると、はっきりした違いがある印象だ。

N-ONEはターボ仕様車のツアラーを中心に作られている。ターボ車は自然吸気エンジンの搭載車に比べると10万円以上高くなるが、走りの性能や仕様の違いなどを考えたらやむを得ないところだ。

タウンユースを中心に使うなら自然吸気エンジンの搭載車でも十分だが、その場合には足回りの違いを考えてプレミアムを選びたい。内外装の仕様に明確な違いがあり、軽自動車的な安っぽさを感じさせないからだ。

ターボ車のプレミアムなら、コンパクトカーやミドルセダンなどからダウンサイジングするユーザーにも適したモデルになる。

N-ONEには更に、各グレードにLパッケージが設定されている。サイドカーテンエアバッグなどが標準装備となるのがLパッケージで、サイドエアバッグがオプション設定されるのもLパッケージだけだ。プレミアムツアラーLパッケージには、サイドエアバッグもサイドカーテンエアバッグも標準で装備されている。

安全装備の有無につながるLパッケージは、必然的な選択といえるもので、プレミアムツアラーLパッケージとなると、FF車でも153万円になり、その上でツートーンカラースタイルを選ぶと更に5万円ほど高くなる。

このようにN-ONEのグレードを選ぶとき、欲を言ったらきりがないという感じになる。自分の予算に合わせてほどほどきところでグレードを決めるしかないのが本当のところだ。予算に余裕があるなら、最上級グレードがイチ推しだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
《松下宏》