【インタビュー】「エコと安全両立させる」カーナビに搭載された運転教習…ファインモータースクール

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ファインモータースクール 楽エコ教習担当 古田秀人氏、樋山裕次郎氏
  • ファインモータースクール 楽エコ教習担当 古田秀人氏、樋山裕次郎氏
  • ファインモータースクール 楽エコ教習担当 古田秀人氏
  • ファインモータースクール 楽エコ教習担当 樋山裕次郎氏
  • エコ運転のプロ、ファインモータースクール教官の運転ロジックをもとに診断をおこなう
  • エコトライアル機能では、ルート上にエコ運転度合いを示す葉っぱを表示、さらに音声でアドバイスをおこなう
  • 記録を更新することで、トロフィーやメダルが表示される。ゲーム的な感覚だ
  • 音声でエコドライブのポイントを案内してくれるため、運転中に画面を見る必要はない
  • 古田さん、樋山さんと同じ走りが実現できれば高得点となる

アイシン・エィ・ダブリュ(アイシンAW)は、エコ運転教習の第一人者である自動車教習所のファインモータースクールと協力し、エコ運転支援機能を搭載したカーナビゲーションシステムを開発した。

アイシンAWが開発した、ダイハツ向けディーラーオプションナビ2013年モデル『NSZA-W63GD』には、グラフィックや音声によるアドバイスに従って運転を改善していくことで、エコ運転の達人と変わらない燃費を実現できる「エコトライアル機能」が採用された。

同機能では、車速パルスを元に加速度からアクセルやブレーキのタイミングを計り、エコ運転の度合いを診断する。診断ロジックの開発にあたり、“燃費の達人”としてエコ運転教習をおこなう教官の走行データの収集、解析がおこなわれた。

埼玉県で3校を展開する自動車教習所ファインモータースクールは、2008年より教習プログラムにエコ運転の要素を取り入れた「楽エコ教習」を実施している。「時代の流れに則した運転技術を提供する」として、エコで安全な運転の啓蒙を続ける。

自動車教習所がナビゲーション開発に参加するといった取り組みには、エコ運転と安全運転をもっと普及させたいという思いがあった。

ナビ開発に参加した、楽エコ教習のプログラム開発に携わりインストラクターも務める、ファインモータースクールの古田秀人氏、樋山裕次郎氏に、「エコトライアル機能」に盛り込まれたエコ運転技術とはどのようなものなのか、話を聞いた。

◆エコ運転教官のノウハウが詰め込まれたエコトライアル機能

----:エコトライアル機能の診断ロジックには古田さん、樋山さんの運転特性が詰まっているということですが、まずはファインモータースクールで実施している「楽エコ教習」の特徴について伺いたいと思います。

古田:普通のエコドライブ講習というのは、燃費だけを上げるためのものになってしまう傾向があるのですが、やはり私達は自動車教習所ですので安全を第一に考えて、安全性が高くなるようなエコ運転のテクニックを覚えてもらうというところに重点をおいて、カリキュラムを組んでいます。

安全のための運転操作とエコ運転の運転操作は、実はかなり近いものなんです。実際の教習でも、例えば「減速時には早めにアクセルを離すと燃費が良くなりますよ」だけではなく、交通事故では追突事故が多く発生していていることから、「早めにアクセルを離して緩やかに減速することで、事故を減らせてしかも燃費が良くなるんです」という、理由付けをするように徹底しています。

----:ナビゲーション開発のためのテスト走行に参加されたということですが、テスト走行を実施する中でエコ運転について改めて発見した部分はあったのでしょうか。

樋山:テスト走行では初めての道を走ることがほとんどで、先の状況が判らず急な操作になってしまったり、燃費や安全面であまり良くない運転になってしまうことがありました。何度か走行を繰り返し、先を予測をしながら走行することで燃費や安全性は向上したので、先読み運転が重要なのだと改めて感じました。

古田:2回、3回と繰り返し同じ場所を走ることで、自分では完成していたと思っていた運転が、「もう少しここは早くアクセルを放してもいいんだな」といった燃費を向上させる細かい部分に気づくことも出来ました。

さらに、テスト走行を繰り返す中で、ある程度パターン化した運転方法というものが出来上がりました。テストの終盤では、初めて走る道に対してもそのパターンを当てはめて、どんな道路状況にも対応できるようになったので、自分自身でもエコドライブが上達した部分があるかなと思っています。

◆「ふんわりアクセル」と「イーブンアクセル」

----:「エコトライアル機能」開発にあたって、アイシンAWでは「通勤燃費を良くしたい」という強い思いがありました。毎日走る道でエコ運転ができれば、燃費に大きく貢献できるだけでなく、環境にも良い。古田さんが体験された「パターン化」こそ、アイシンAWの目指す所と言えそうです。燃費に良い運転パターンというのはどういったものなのでしょうか?

樋山:市街地のポイントは発進の時に特に気をつけることです。ふんわりアクセルといって、発進後の目安として5秒で20km/hになるような加速を徹底することですね。急いで加速してもその先でクルマが詰まっていればブレーキを踏んで減速しなければなりません。無駄な加速だったということになります。今回のテスト走行でもふんわりアクセルは、いろんな道で通用するということに改めて気づかされました。

古田:高速道路は、特に合流する時が重要です。合流するポイントを見定めて、必要な分だけの加速をきっちりコントロールするのがベストですが、後続車への影響も考え、交通の流れに乗ることも大切です。合流後は一定速度を維持するのが燃費に良いですね。80km/h以上になると空気抵抗や燃料消費量も大きくなるので、可能ならば80km/hを目安に、無駄な追い越しはせず走行車線を走るのが効果的です。

長い下り坂がある場合はアクセルを離して燃料カットを活用することもポイントになりますね。

一般道でも一定速度を保つのが燃費に効果的です。イーブンアクセルと呼んでいますが、自分のペースを守りできるだけ一定の速度を保つことが重要です。ただ、自分だけ燃費が良くなっても、周囲に迷惑を掛けるような運転では危険ですし、環境に優しいとは言えません。先読みをしながら、常に状況に合わせて走ることが大切です。

◆教習と同じタイミングでエコ運転をアドバイス

----:自分たちの運転特性が入った「エコトライアル機能」を体験してみた感想は?

古田:前回自分で運転した走行に対してのアドバイスが示されるので理解しやすいと思います。アドバイスに関しても、漠然としたものでなく具体的なものになっていますので、運転行動を明確に行ないやすく、ドライバーに気づきを与えてくれています。

教官の立場としてはさらに細かくアドバイスしたい部分もありますが、教習中と変わらないタイミングで音声アドバイスが出てきますので、何回か走行を繰り返すことで「ここが悪いんだな」というのを理解しやすいものになっていると思います。

樋山:地図に表示される葉っぱのマークが茶色になってしまった部分は、自分でも「まずかったな」と感じた部分なので正確に反映されていると感じました。途中経過だけでなく、クルマを停めた後でも振り返って確認できる点も、まさに私たちが実施している教習と同じだと感じました。

----:一般のドライバーや教習生がエコドライブを修得する上で、「ここが難しい」と感じている部分はあるのでしょうか?

古田:ふんわりアクセルは、何回か練習すれば教習生の方でもできるようになります。早めのアクセルオフについても、きちんとポイントを示すことで、ブレーキの踏み初めを早めてゆっくり減速できるようになります。一番修得するのが難しいのは、イーブンアクセルなんです。

----:確かに実際の交通の流れの中で、速度を一定に保って走行するにはある程度の経験が必要になってくると思います。教習生の皆さんはどれくらいマスターして卒業していくのでしょうか?

古田:教習生の中にはセンスがあって私達と変わらない位のレベルで卒業していく人もいます。しかし皆さんの多くは、基本を教習で理解して頂いて、免許を取ってから私たちに近づいていく感じになるかと思います。

樋山:速度を一定に保つのも、最初は難しいかもしれませんが練習次第で誰にでも出来るようになります。それが燃費に効果的であることをエコトライアル機能のようなものでもっと示せるようになると、イーブンアクセルを活用して運転する人も増えていくのではないかと期待しています。

----:エコトライアル機能を、今後の教習に取り入れるといった考えはあるのでしょうか?

古田:本校の教習に取り入れるかは未定ですが、機械が判定することによって教習のアドバイスの説得力が増すのは大きなメリットと言えそうです。教習に取り入れるのも面白いかもしれませんね。

樋山:私達のエコドライブや安全運転に対する取り組みは、国内すべてのクルマ、全てのドライバーに普及させることを目指しています。ナビゲーションにエコ運転支援機能が搭載されることで、エコ運転をする人がひとりでも多く増えていけば良いなと思っています。

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