今季は厳しい社会情勢やクルマを取り巻く環境の変化を背景に、各ジャンルで志の高いモデルが多数リリースされた年となった。
選考委員の一人として、配点する上で毎回頭を悩ませるのが『時代を動かす革命的なモデル』を選ぶべきか、『心が揺さぶられるクルマ』を選ぶべきなのかということ。
また、それが幅広い一般ユーザーに向けた提案なのか、一個人として感動したクルマを選ぶべきなのか、見る目線で選ぶクルマは当然違ってくる。『心を豊かにするクルマ』を選ぶことを信条としている私としては、最も優れているクルマに投じる10点をどのクルマに配点するべきか投票の直前まで悩みに悩んだが、最終的には以下のようになった。
●トヨタ『86』/スバル『BRZ』:10点
●マツダ『CX-5』:7点
●レンジローバー『イヴォーク』:6点
●フォルクスワーゲン『up!』:1点
●スズキ『ワゴンR』/『ワゴンRスティングレー』:1点
10ベストカーに選ばれたモデルはどれもそれぞれのジャンルに求められる課題を突き詰めた魅力的なモデルばかりだったが、ウンチクを語ることよりも自分自身の右脳を信じて、無条件に胸をワクワクさせてくれるモデルを選ぶことにした。
10点を投じたトヨタ『86』/スバル『BRZ』は、クルマを単なるハードウエアとして販売するだけでなく、クルマを購入した後のワクワクする世界を垣間見せてくれるスポーツモデルだと思った。便利さや快適さばかりがクローズアップされがちな現代において、クルマと人が関わることの素晴らしさを再定義したことは、楽しいクルマに乗ることを諦めかけていた人の心を刺激しただけでなく、今後多くのスポーツモデルに影響を与えることになっていきそうだ。
藤島知子|モータージャーナリスト
幼い頃からのクルマ好きが高じて、2002年からワンメイクレースに挑戦。市販車からフォーミュラカーに至るまで、ジャンルを問わず、さまざまなレースに参加している。2007年にはマツダロードスターレースで女性初のクラス優勝を獲得した経験をもつ。
現在はクルマの楽しさを多くの人に伝えようと、自動車専門誌、一般誌、TV、WEB媒体を通じて活動中。走り好きの目線と女性の目線の両方向から、カーライフ全般をサポートしている。COTYの選考基準は、クルマと共に過ごす日常において、気持ちを豊かにしてくれるクルマかどうかに焦点を当てる。