【福祉車両オーナー座談 第1回】必要に迫られて検討を始めた福祉車両選びは、スタッフの対応が鍵

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スペイド サイドアクセス車 脱着シート(手動式)+専用車いす仕様(国際福祉機器店12)
  • スペイド サイドアクセス車 脱着シート(手動式)+専用車いす仕様(国際福祉機器店12)
  • Aさん 埼玉県在住 トヨタ ポルテ(旧型・2009年式)サイドアクセス車 Bタイプ 手動介護式を現在所有)
  • Bさん 東京都在住 スズキ MRワゴン(旧型・2007年式)を購入後、左足アクセル/ブレーキ+車いす仕様に改造。現在所有
  • Cさん 神奈川県在住 トヨタ ヴォクシー 助手席リフトアップシート車 Bタイプ(2011年式)を現在所有。
  • Dさん 東京都在住 ダイハツ ムーヴ・コンテ(2007年式) 車いす仕様車を過去に所有
  • Eさん 東京都在住 トヨタ ノア 助手席リフトアップシート車 Bタイプ(2008年式)を現在所有。
  • 座談会の様子
  • ノア	車いす仕様車(スロープタイプ) タイプII サードシート付(国際福祉機器店12)

バリアフリーの普及や高齢社会の到来と共に、福祉車両に関する注目が高まりつつある。9月下旬に東京ビッグサイトで開催された国際福祉機器展には、トヨタ、日産、ホンダなどの主要自動車メーカーが出展、会期中の来場者は10万人を超えるなど活況を呈した。

このように、関心が高まりつつある福祉車両だが、実際に福祉車両を保有して日々の移動に利用しているオーナーは、どのような経緯で福祉車両を選び、活用しているのか。購入の経緯から、商談や費用負担、そして購入後の感想まで、忌憚ない意見を語っていただいた。第1回目では購入のきっかけと、店舗・営業スタッフ選びや商談の進め方について聞く。

今回、座談会に参加いただいたのは5名の福祉車両オーナー。年齢は46歳から61歳で、ご両親または配偶者を介助するために福祉車両を購入した方々だ。

◆必要に迫られて探し始めた

現在、旧型『ポルテ』のウェルキャブ(福祉車両)を所有するAさん(埼玉県在住・女性)は、16年前にご主人が脳出血で倒れた。後遺症で片麻痺が残ったものの、しばらくは自力歩行が可能だったが、体力の衰えとともに歩行が困難になってきたという。

「私の主人は身長が178cmと大柄で、クルマに乗せるのも一苦労でした。そこで、いよいよクルマを買い換えようかという話が出たときに、たまたま家の近くで福祉機器と車の展示会があったので主人も連れて行ったんですね。そこで車いすから回転/リフトアップする助手席に移乗できる車があるのを知ってカタログを取り寄せました」(Aさん)

また、90歳のお母様を持つというBさん(東京都在住・女性)は、スズキの『MRワゴン』(旧型)を中古車で購入後に福祉車両に改造した。

「実は母だけでなく私自身も事故に遭い、長期間リハビリをやっていました。リハビリの最後に、クルマの運転を練習したのですが、事故の影響で右足に力が入らず、アクセルやブレーキがしっかり踏み込めないことがわかったのです。そこで主治医に相談したところ、初めて福祉車両の存在を知りました。退院前に家族と相談し、小さくて運転しやすい軽自動車にしようということになったのですが、左足でブレーキやアクセルを踏めるようにする改造だけでなく、母の車いすを後ろに乗せることができ、助手席に移乗できる仕様に改造しようということでスズキの営業の方に相談したんです」(Bさん)

また奥様が脳出血で倒れたというCさん(神奈川県在住・男性)も、被介助者をクルマに乗せる苦労から、福祉車両を探し始めたという。

「別に福祉車両を買わなくても大丈夫だ、と思っていたのです。でも妻の退院の少し前に、試験的にお医者さんが家をチェックしに来た際、自分のクルマで家内を連れてきたところ、乗降が非常に大変で…。ネットなどで福祉車両の事は知っていたので、どういう物があるのかを調べたうえで、ディーラーの営業スタッフと相談して購入を決めました」(Cさん)

他の2人についても、福祉車両の存在を知ったきっかけは、主治医やソーシャルワーカーへの相談だったという。やはり「身近に福祉車両を必要とする人がいて、初めて福祉車両の存在を知った」という例がほとんどだった。

◆福祉車両の実車に触れる場所と機会は…

とはいっても、通常のディーラーで福祉車両を展示している店舗は多くない。トヨタではウェルキャブの常設店舗「ウェルキャブステーション」、ウェルキャブの総合展示場「ハートフルプラザ」、日産では「LV(ライフケアビークル)認定店」、ホンダでも「オレンジディーラー」とよばれる福祉車両を扱う店舗を設置しているが、実際にこれらの福祉車両設置店へ足を運んだという出席者は、お父様の介護のために福祉車両を検討したというDさん(東京都在住・女性)の一人だけだった。

ダイハツの『ムーヴ・コンテ』の福祉車両を保有していたというDさんは、ほぼ新車でありながら登録が済まされたいわゆる「新古車」を選んだ。「ダイハツの展示場に行って実際に触ってみて、ほんと新車であったことと、使い方も分かりやすかったので、これなら機械に疎い私でも操作できるな、と思いました。父自身も納得していましたし」(Dさん)。

また、先ほどのAさんのように、自宅の近くで福祉機器や福祉車両の展示会があって初めて実車に触れられたという例もある。「展示会に行かなければ知らなかったかもしれない」(Aさん)。他の出席者は、ディーラーの営業スタッフに勧められて購入にまで至ったが、やはり福祉車両を扱っている店舗や展示場へのアクセスには相当なハードルがあることがうかがえる。

福祉車両の展示会へ足を運んだというAさんは、さまざまな福祉車両を比較できたことに満足している。「買ったのはポルテだったのですが、『ラウム』もすごく気に入っていたんですね。大柄な主人は前席と後席の間の柱(Bピラー)につかえてしまったので…。他社さんの車両もそうでした。私はその前に乗っていた『セレナ』が好きだったこともあり日産党なのですが(笑)、柱がなくて入り口が広いこと、あと一番トヨタさんが福祉車両に力を入れているイメージもありましたので、主人の意見もあってポルテを発注しました」。

◆営業スタッフの知識は豊富、商談もスムーズ

実車を触る機会は少ないというものの、福祉車両選びの際に相談に乗ってくれた営業スタッフの対応はおおむね満足、ということは多かった。Eさん(東京都在住・男性)はお母様の介助のためにトヨタ『ノア』のウェルキャブを購入した。

「ディーラーでは、車種の機能、母の介護状態を見てもらいヒアリングしてもらったうえで最適な車を提案していただきました。私が購入したのは車いすをリアハッチから乗せることができ、また助手席の回転昇降機能があるタイプでしたが、営業の方とサービスの方にも来てもらいオペレーション全てを指導してもらいました」(Eさん)。

Cさんは、ディーラー担当者と30年来の付き合いとのこと。「営業スタッフは仕事関係で30年くらい前からの個人的な付き合いがありました」ということで全幅の信頼を置いているという。「今回の発注も電話だけ。家内が倒れて娘夫婦が介護するということで同居が決まり、孫も含めると7人。そこで7人乗りの『シエンタ』にしようかとスタッフに相談したところ、孫もいるとシエンタだとかなりきついと言われてヴォクシーにしました」(Cさん)。

先ほど例に挙げたトヨタの福祉車両設置店のウェルキャブステーションでは、専門の知識を持った「ウェルキャブコンサルタント」が常駐するなど、各メーカーのディーラーは営業スタッフの質の向上に努めている。今回の座談ではディーラースタッフに対する不満はほとんど出てこなかったことから、これらの努力は確実に実りつつあるということだろう。福祉車両の購入の際に、疑問や不安を生じたら、一にも二にもまずはディーラーに相談、というのが吉のようだ。(第2回に続く)

《まとめ・構成 北島友和》

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