東京オートサロン12、トヨタブースに展示されている青色のガルウィングクーペ『TES-ERA(テセラ)EV』は、トヨタグループのサークルであるトヨタ技術会が製作したEVレースカーだ。
これまでも技術披露会やモータースポーツイベントで数回お披露目されているが、広くパブリックに公開されるのは今回のオートサロンが初めてだという。
バブル期のクルマを覚えている人なら、特徴的なドアの開き方やガラスの切欠きを見てピーンと来ることだろう。ベースモデルはコンパクトスペシャリティの『セラ』だ。
が、セラのボディが使われているのはキャビン周りのみ。モノコックボディの前後部分をブッタ切り、鋼管を溶接したパイプフレームを新造するという、往年の『ランチア・ラリー』などグループBレースカーさながらの手法で作られている。サスペンションは前後とも『スープラ』のダブルウィッシュボーン式のもの。駆動方式もRWD(後輪駆動)だ。
電気部分のマネジメントもすごい。メインバッテリーは容量15.7kWhのリチウムイオン電池だが、ほかに減速エネルギー回収用のキャパシタを使った、F1ではKERSと呼ばれる回生ブレーキシステムも搭載するというハイブリッド電源方式だ。主機となるモーターは『レクサスRX450h』のメインモーターで、最高出力は123kW(167馬力)だ。
「EVレーシングカー作りは車体づくりから制御まで、いろいろな面で勉強になりました。電動部分の制御、ドライバーとマシンのインターフェース、ボディ。私はシャーシ担当だったのですが、量産車の設計では鋼管フレームを作ることなどめったにないこともあって、構造設計などいろいろと考えさせられました」(シャーシ設計を担当したトヨタ技術会メンバー)
インターフェイスもとても面白い。インストゥルメンタルパネルは3つの液晶。ステアリングコラムに付けられたタッチパネルで知りたい車両情報を選び、センターコンソール上部の液晶に向かって指を滑らせることで、簡単に表示をチェンジできる。またミラー類を廃止し、CMOSカメラで死角や後方をリアルタイム撮影し、ダッシュボード上の第3の液晶パネルに表示する。コクピットからの風景もまさに未来系というEVだった。