【インディジャパン・佐藤琢磨インタビュー】もてぎでは集大成の走りを見せる

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インディ・ジャパン300に向け、現在唯一の日本人ドライバー佐藤琢磨選手がレースへの意気込み、ファンへのメッセージを語った。
  • インディ・ジャパン300に向け、現在唯一の日本人ドライバー佐藤琢磨選手がレースへの意気込み、ファンへのメッセージを語った。
  • 佐藤琢磨選手(8月28日・第13戦インフィニオン・レースウェイ)
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ツインリンクもてぎで9月16〜18日、「2011 IZOD インディカーシリーズ第15戦 インディジャパン ザ ファイナル」が開催される。母国戦を前に、F1から転身しインディ参戦2年目となる、現在唯一の日本人ドライバー佐藤琢磨選手に独占インタビューを敢行。ツインリンクもてぎで最後の開催となる日本戦に向け、レースの見どころ、意気込み、ファンへのメッセージを語ってもらった。

----:インディ参戦も2年目となり、今季は二回のポールポジション獲得や、決勝でも優勝争いに加わるなど順調に来ていると思うのですが、チームの体制の変化や自身のブレークスルーポイントみたいな物はありましたか?

佐藤琢磨選手(以下、佐藤):「去年から継続している」という事が大きいです。僕自身、去年1年間インディカーシリーズを戦ったことで、シリーズのもつ独特のスタイルだったり...さまざまなことが体感的に分かってきました。

去年は行く所行く所が初めてで、ひとつひとつ経験をしていかなければいけなかったところが、今年は本当に全てが、色々な事が自然に判ってきて、シーズンあるいは一つのレースウィークエンドへのアプローチにしても「追いかけてゆく」という感じだったものが、余裕を持って一つ一つこなしてゆけている感触があります。そしてそれは間違いなくパフォーマンスだったりレースづくりにつながっています。

同時に、チームも改革をして、去年課題だったピットストップとか、クルマを作って行く過程…去年と変わらない3台体制なのですけど…その内容は凄く大きく変わっています。一つには、トニー・カナーン(TK)というインディカーチャンピオンが加入した事で、これまでKVレーシングでは持ち得なかったノウハウが入ってきていることも大きいです。僕自身にとっても、彼の持つこれまでの経験は凄く刺激的だし、すごく良い条件というか、環境の中でレースができていると思います。

----:新たにチームメイトとなったTKの存在は大きい?

佐藤:ドライビングというのはその状況の中でベストを尽くすということだと思うのですが、彼は豊富な経験があり、上手さも速さも持っている。それがお互いに刺激になっているということはあります。とても良い感じですよ。

僕はインディカーというものを、ここKVレーシングのこのクルマでしか知らない。だから、このテーブルの中の範囲で(目の前のテーブルを指して)しか動けないところがあります。クルマの良し悪しについても、自分がこれまで走ってきたクルマとの相対評価は出来るけれど、それが実際のところ本当に良いのかは判らない訳です。それがTKの加入によって、チームの中ではこれだけ良くなった部分についても、「いやいや琢磨、ここなんだよ(とテーブルの遥か外側を指して)」と、テーブルの広さの範疇だけでなく、フロア全体を見渡す視点での情報を得ることができるようになりました。いつも「そういう世界が見られるんだ」って興味深く話を聞いています。

またお互いにセットアップを煮詰めていく段階でそれぞれに異なるプログラムを進めていても、TKは非常に信頼できるドライバーなので、良かったものは参考にできるし、またTKはTKで、僕が得て良かったものはそっくりそのままクルマに移植して使える。

正直なところ、去年は1台体制のチームが突然3台走らせなければならないといった状態で、数はあるのだけれど…という状態だったものが、今年は3台がキッチリと上手くお互いを助け合えるようになりました。またその環境作りも相当意識してやっています。それが徐々に成果に出てきて、チームとしてのパフォーマンスが上向きになっている。強い部分はより強く、弱い部分や課題だった部分は少しずつ改善していけていると思います。それは僕の走り方においても同じことが言えるので、トータルでの今年のパフォーマンスアップに繋がっているのだと思います。

----:2年目になって、判ってきたというか、環境に慣れたことで、精神的に楽になったところもある?

佐藤:楽になったと言うと手を抜いているように聞こえるかもしれませんが、決して手を抜いているのではなく、いままでレース以外の部分であまりにも色々なことを追いかけなければならなかったのだけれど、今はパフォーマンスに集中出来る。限りあるエネルギーと時間を有効に効率よくレースカーに注げるようになったという意味で、余裕ができました。

例えばコースを覚えたり、クルマの特性などについても、去年はひとつひとつ探りながらセットアップを変えて行きますが、実際にそれが本当に良かったのか判らない部分があった。今年は一歩先の状態から余裕をもって「こうなったときはこういう風にいける」と、自分自身でもリード出来るようになったし、エンジニアリンググループも、僕とEJ(ビソ)が2年目も継続していることで、それぞれのスタイルとかクルマの作り方進め方など、去年よりもずっと効率よく出来るようになっています。

----:アイオワ(オーバル)とエドモントン(ロード)でそれぞれポールポジションをとりましたが琢磨選手のなかでこの2つのポールはそれぞれ違うものですか?

佐藤:まったく違いますね。アイオワのポールはとにかくすごく嬉しかったです。インディカーシリーズに挑戦して北米トップフォーミュラを経験し、F1も経験し、F1ではフロントローもとったことがあるけれど、僕にとってトップフォーミュラーで初めてのポールポジション。それはそれは、すっごく嬉しかったですよ。

特にアイオワは去年好調だったのでシーズン前から楽しみにしていたオーバルの一つ。ショートオーバル独特の挑戦というか難しさがあって、予選に入る前にどれだけスピードに乗せられるかが勝負だったんです。そこでクルマが非常にスライドするなかでも、思いっきりスピードに乗せる事が出来たし、エンジニアも相当攻め込んだセットアップを取り込んでそれがキッチリと成果に繋がったということも、凄くうれしかったんです。

それとはまた別にロードコースで取ったエドモントンでのポールポジションが嬉しかったのは、一つには今年オーバルとロード両方ポールを取れるとは正直なところ思っていなかったので、これが叶ったという喜びもあるし、1シーズンで1度でなく2度目のポールポジションがとれたということへの喜びも大きかったです。

エドモントンは今年レイアウトが変わって新しいコースに生まれ変わっていました。大きなチームはクルマ作りの基本的なノウハウを持っているので直ぐにスピードを乗せてきますが、ある意味、全員イコールの状態。僕自身は予選に向けて、いつもやっている事と変わらない作業をしたのですが、相対的にみるとスターティングポイントが遅れていない分、有利ではないまでも、不利ではない状態だったんです。そこをうまく繋げられ、チャンスを掴めたこと、自分の思い通りの走りが出来て、結果としてポールポジションが取れた事は凄く嬉しかったです。またロードコースでポールをとるには、クルマをねじ伏せるというか…そういう感覚があるのですが、それだけに、達成感はすごく大きかったです。

----:いよいよ来月、9月にはもてぎ戦ですが、今年はロードコースでのレース。これまでのオーバルとは異なる展開になると思いますが、シリーズでも唯一もてぎのロードを知っているドライバーの視点で、レースの見どころなどを教えてください。また琢磨選手にとって利はありますか?

佐藤:実はもてぎのロードコースでレースはしていないんですよ。デモンストレーションとかで走った事はあるんですけれど…。レースをしていないだけに、もてぎのロードコースならではの見どころを言うのは難しいですが、日本のファンのみんなはGTやフォーミュラ―・ニッポンで、もてぎのロードコースのレースをよく知っているし、目も肥えていると思います。それをインディカーで走るとどうなるのか?っていうのを楽しみにしてもらいたいですね。

インディカー・シリーズはそもそもアメリカを走るシリーズです。タイヤはブリヂストンと同じファイアストン(※1)ではあるけれど、恐らく日本のサーフェース(コース路面)とはあわないと思うから、そこで2種類のタイヤ=ブラックとレッド(※2)がどのようにレースに影響するかは僕も非常に興味深いし、逆にここはチャンスだと思ってもいるので、それを失敗しないようにしたいですね。

(※1:ブリヂストンの北米でのタイヤ製造・卸売事業子会社)
(※2:インディカー決勝で2種類の使用が義務付けられているタイヤ。レッドタイヤはよりソフトコンパウドでグリップが高い反面、ブラックタイヤに比べ耐久性が劣る)

多分フォーミュラニッポンでの勝負ドコロと同じ、だと思ってるのだけれど。ちょっと違うとすればピットの位置が変わること。それがグリーン進行中のなかピットストップにどう影響するのか、ピットインのタイミングはどうなるのか、またリスタートの時のダブルファイル(2列走行)スタートがもてぎでどうなるのか、などなど。2列のローリングスタートという意味ではGTが近いけれど、ブレーキングとかパッシングとかはフォーミュラーニッポンと似たような感じになるのかな。

----:コース上以外でもインディならではの楽しみ方があると思うのですが。

佐藤:インディカーの持つ非常にオープンな雰囲気ってあると思うんですよね。そして、去年のもてぎでも金曜日のフレンドシップデーにあんなに沢山のファンの方が来てくれたのはとてもうれしかったです。全員の期待に応えられなかった心苦しさはありますが、それでも他のシリーズよりも、ずっと選手やマシンを近くで見る機会が多いと思うので、存分に開放的な雰囲気を楽しんでもらいたいです。

----:インディジャパン ザ ファイナルに向けての抱負、意気込み、目標等をお聞かせください。

佐藤:ズバリ、最高の走りを見せたいです! 僕自身にとってはオーバルもロードも変わりなく、日本の、母国のファンが応援してくれる目の前で走れるという喜びと期待感は去年以上ですしね。去年、初めてのインディジャパンのオーバルで、超ハイスピードバトルを応援してくれる皆の前で見せられた事は、やっぱり嬉しかった。

そして今年はロードコース。実際にレースはしたことはないけれど、僕にとっては、自然に溶け込みやすい環境ではあるので、集大成的な、精一杯の走りをみなさんにお見せしたいですね。これだけ応援して貰って走れるということは本当に限りなく大きな幸せだから。

■2011 IZOD インディカーシリーズ第15戦 インディジャパン ザ ファイナル
・9月16日:フレンドシップデイ、練習走行
・9月17日:公式予選、前夜祭
・9月18日:決勝
・9月19日:アフターインディジャパンデイ

前売チケットのオンライン販売受付は9月10日・24時00分まで。ツインリンクもてぎのオンラインショップ「モビリティ・ステーション」で購入可能。

インディジャパン ザ ファイナル 公式サイトURL
http://www.twinring.jp/indyjapan/

《ケニー中嶋》

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