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[IEEEセミナー]Quince 福島原発活動記録---水位計設置失敗は東電のミス

自動車 ビジネス 企業動向

「IEEE」の記者セミナー「日本のロボット利用に関する現状と課題 〜福島第一原発における災害用ロボット活用事例から読み解く〜」が8月4日、東北大学東京分室内会議室において開催された。

東北大学教授兼NPO法人レスキューシステム研究機構(IRS)会長の田所諭(たどころ・さとし)氏のセミナーの中から、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の戦略的先端ロボット要素技術開発閉鎖空間内高速走行探査群ロボットの開発プロジェクトで誕生し、国産ロボットとしては最初に福島第一原発の原子炉建屋内で活動を開始した国産ロボットの『Quince』の活動状況を紹介する。

今回のミッションは、急傾斜の約42度の階段を下りて地下1階に向かい、溜まっている汚染水の水位計の設置と汚染水のサンプルリターン、約40度の傾斜の階段を上って上階の情報収集というものだ。

そのために、ベーシックタイプのQuinceには存在しなかった高さ1m以上の支柱を本体中央に立て、そこに前後計2台の操縦用カメラ、LEDライト、水位計のケーブルを繰り出すためのロボットアーム、線量計、線量計などの状況を見るための複数の小型カメラなどを装備。27kg弱だった本体重量は、これにより約50kgと倍近い重量に。さらに支柱などを立てたために大幅に重心が高くなり機動性は犠牲となった。しかし、実際のミッションでは超スロー走行を行うため、問題ない。こうした突貫工事的な改造が行える点も外国産ロボットにはないQuinceのメリットのひとつ。要求に対してすぐさま柔軟に対応できるのだ。

放射線対策は、特にされていない。Quinceは民生品と、民生品を小柳氏らが加工したもののみで作られている。詳細は小柳氏らもつかめていないようだが、現在の民生品は非常に素材純度が高いので、CPUのシリコンなども不純物が非常に少なく、放射線の影響を受けにくいようだ。テストによればトータルで100Svまでは耐えられることがわかっており、原子炉建屋内は一部を除けば数mSvの線量ということなので、現状では十分な活動時間が確保されている。

6台あるQuinceの内、当初は2台を送り込む計画だったが、東京電力側からの要請で、1台が投入されることとなった。当初は有線型のQuinceと、そこから無線LANで先行して活動できる無線型との2台によるコンビを組んで活動する予定だった。しかしロボットの台数を増やすとそれだけ原子炉建屋内に運ぶ作業員が増え、つまりは被爆者が増えてしまうため、1台にしたという。QuinceはiRobot社製の『PackBot』よりも少ない人数で運用できるので、同じ1台の投入でも半分の被爆者数の6人ほどで済ませられる。

いっぽう、なぜ建屋から離れた安全なエリアから走らせていかないのかというと、原子炉建屋内の床には無数の配管があり、どんなロボットだろうとそれらを突破できず、越えて先へ進むのに人手が必要なのだ。

そして水位計を設置するため6月24日にまずは2号機原子炉建屋内に投入されたわけだが、設置はうまくいかなかった。これは東電のマネジメントの完全なミスである。

階下へ向かう階段の幅は90cmとして小柳氏らに伝えられ、小柳氏らは大学の階段についたてを立てるなどして、改造とテストを繰り返してきた。42度の階段も作ってがれきもまいて水もまいて劣悪な状況を作り、原発仕様Quinceで踏破できるようにしてきた。が、東電の凡ミスで努力が無駄となった。

東電は、階段の幅を実際より20cmも広く小柳氏らに伝えていたのだ。つまり、階段の幅は70cmしかなく、機体幅が67cmあるQuinceは階段踊り場で旋回できなかった。最初の踊り場で行き詰まって、後退するしかなかったのである。

なお、海外の一部メディアでは、行き詰まったQuinceを作業員が回収したという、憶測による情報が流れたようだが、事実無根の完全な間違い。Quinceは自力で帰還している。

その後、7月8日にQuinceは再び2号機原子炉建屋内に入り、2階、3階まで上り、放射線線量計測と出すとサンプリングを実施。そして7月26日には11時15分から13時にわたって3号機原子炉建屋内に投入されたことも発表された。3階フロアへの途中の踊り場ががれきで埋もれており、有線式のためにケーブルをひっかけて切断する可能性が高かったことから、そこで引き返した。なお、Quinceで撮影した建屋内の様子の映像が、東京電力によりYouTubeにアップされている。

それから、原発での活動ではないが、Quinceと海外の大学のレスキューロボットによる共同実験が行われたことも8月1日に発表されている。東北大学大学院情報科学研究科および大学院工学研究科極限ロボティクス国際研究センターの田所氏、吉田和哉教授、永谷圭司准教授、大野和則客員准教授らの研究グループと、米国ペンシルバニア大学のVijay Kumar教授、Nathan Michael助教授の研究グループ、IRSの3社により、Quinceと災害対応小型飛行ロボット『Pelican』による、被災建物内における情報収集の共同実験が行われた。この技術は、原子炉建屋内のアクセス困難な場所の調査なども想定している。
《デイビー日高》

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