[IEEEセミナー]日本のロボットは福島原発で活躍できない

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8月4日、東京都千代田区の東北大学東京分室内会議室において、世界最大の技術者の組織である「IEEE」の記者セミナー「日本のロボット利用に関する現状と課題 〜福島第一原発における災害用ロボット活用事例から読み解く〜」が開催された。

IEEEフェロー兼IEEE Robotics and Automation Society会長である東北大学大学院工学研究科教授の小菅一弘氏と、IEEEフェロー兼IEEE Robotics and Automation Society次期副会長で、NPO法人国際レスキューシステム研究機構会長でもある東北大学大学院情報科学研究科教授の田所論(たどころ・さとし)氏が講演を行った。

最初に登壇した小菅氏は、IEEEの概要説明、世界のロボット技術の潮流、日本のロボット利用の現状と題した今回の主題を補足する内容の講演を実施。主題の福島原発でのロボット利用に関する講演を担当したのは、国産ロボットでは最初に原子炉建屋内に入った世界一の運動性能を持つ閉鎖空間探査型ロボット『Quince(クインス)』の開発者のひとりである田所氏だ。

田所氏は内外のロボットの東日本大震災における活躍や、災害対応をロボットや機械にやらせることにメリットがある理由、日本の技術が世界に対しどれだけリードするものを持っているかなどについて語った。

国内ではあまり報道されていないが、国産ロボットはがれきの下の状況調査や、被災地域の港湾での遺体捜索などで大学のロボット研究者が手弁当で活動している。実際、自動運転する建機たちも放射性汚染がれきの除去などで非常に活躍しており、地味なために報道されていないが、実際はお掃除ロボット『ルンバ』でお馴染みの米iRobot社が販売している軍事・警察用途のロボット『PackBot』よりも貢献度では遙かに上だという。

ただし、組織だって国産のレスキューロボットが活躍していないのも事実。特に、福島原発ではPackBotが最初に原子炉建屋内に入り、「日本はロボット技術が世界最高といいながら、何をやっているんだ!」と国内外から批判の声が噴出した。これに対し、田所氏は「そうなったのも当然です」という。なぜかといえば、「まず日本にはレスキューロボットを配備して今回のような事態に即応できるような体制を持った組織が存在していない」ことがひとつ。

そして、「原子力事故を想定したレスキューロボットが存在しない」ということも当然の理由。QuinceはCBRNE(Chemical Biological Radiological Nuclear Explosive:化学・生物・放射性物質・核・手製爆弾)災害状況下での使用を想定しての開発であるが、同じ核でも短期的な核爆弾の方であり、より災害として影響力の大きい原子力事故を想定して開発されたロボットではないのだ。しかも、技術を開発することを目的としており、実用配備することは想定されて開発されていないロボットなのである。それを、機体開発の中心となった千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)副所長の小柳栄次氏らの努力によって、福島原発に持ち込んだというのが現実だ。

また、なぜ原子力事故対応のロボットを開発しないのかというと、それをうたったら、予算が付かないからである。「Quinceも原子力事故対応をうたっていたら、予算を出している独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構からもらえなかったはず」と、以前の記者会見で田所氏は語っている。

つまり日本には「ロボット技術」は確実にあっても、それを運用する法も整備されていなければ、組織もないことが問題なのだ。そのため、海外のようにレスキューロボットを開発してメンテナンスをすることを生業とするような企業も存在し得ない。クルマで例えてみれば、大学や研究機関にF1マシンを作る技術はあっても、一般道を車で走ってはダメ、市販車を量産することはもちろん、消防車などの特殊車両を作れる自動車メーカーもない、といった状況だ。これでどうやってロボットを原子力事故で活躍させればいいのだろうか?

田所氏は同じ過ちを繰り返さないために、「今回のような事故の時にロボットをきちんと即応的に派遣して運営できる組織を作ることが重要。もちろん、政権交代で予算がなくなるといった基板の弱い組織であってはダメ。少なくとも10年にわたって配備、運用、改良、開発、検討を行える組織を作らないとならない」としている。

また、福島原発の事故に対しては、「この教訓を活かして、以前も日本の原子力技術は世界的にトップクラスだったが、さらに強化し、『福島ブランド』を作ることが必要。その中でIEEEは重要で、非常に大きなリソースとなる。海外の技術やデータであろうが、そうしたことはボーダレスに考えて活用していくべきだ。実際、研究者・技術者の間では国内外といった考え方はなく、ボーダレスになっている」とした。
《デイビー日高》

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