岩手スバル自動車、次世代水性塗料「クロマックスプロ」導入の経緯とノウハウ

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岩手スバルB・Pセンターの現場風景
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岩手スバル自動車のB・Pセンターは、デュポンの次世代水性塗料「クロマックスプロ」を2011年4月から全面的に導入している。同工場の水性塗料導入から経営を含めた総合的な取り組みには、自動車補修事業者の将来に対するヒントがちりばめられている。

水性塗料導入と課題の克服

同工場には、岩手県内の補修を必要とするスバル車が月90〜100台ほど入庫する。工場は内陸にあるため、太平洋沿岸地域に比べれば東日本大震災の影響は軽度で済んだ。しかし、他の被災地域同様、海近くには甚大な影響を受けた顧客もある。

岩手スバルは、社会貢献の一環として、2009年6月頃、デュポンからの提案を受けたこともあり、水性塗料の本格導入を決めた。水性塗料は従来の溶剤系塗料に比べ、VOC排出量が少なく、工場の作業環境改善と環境負荷の軽減を図る技術として、期待がかかった。

ただ、水性塗料導入にあたっては、東北の冬の寒さが課題であることが明白だった。「水性塗料ということは氷点下を大きく下回る岩手の冬に、塗料が凍る可能性があった」(同社一条正彦B・Pセンター長)と話す。また、多くの自動車車体整備事業者、BP事業者が抱いている「水性塗料は乾きが遅いのではないか」、つまり生産性が落ちるのではないかという懸念も抱いていた。

水性塗料の導入以前に、多くの自動車車体整備事業者が抱くであろう不安材料。これらを払拭する要素としては「自動車メーカーの多くの新車生産ラインでは、水性塗料がすでに利用されている」(同)ことが挙げられる。富士重工のラインでも水性の塗装ラインが設けられている。また、冬場に塗料が凍ってしまうかもしれないという不安要素は「ヒーター付きのミキシングマシンの導入により解消された」。

同工場では、水性塗料の導入から約一年間を習熟期間と設定した。デュポンの北海道・東北・関東地域を担当する地区販売会社であるユーポン、地域の販売代理店であるプリモロード社と連携して、ペインターに水性塗料の塗装技術トレーニングを月に2回ほど定期的に実施した。

次世代水性塗料「クロマックスプロ」投入

同工場が水性塗料の導入に取り組み始めて1年あまりが経った2010年8月、デュポンは日本市場に新たな水性塗料「クロマックスプロ」を導入した。同工場ではこのクロマックスプロを導入したところ、水性塗料による作業効率が向上し、併せて水性塗料使用比率も上昇。結果、水性塗料の全面導入へ向けた体制の構築が加速した。

クロマックスプロの特徴については「従来のデュポン製水性塗料に比べ、一段と隠ぺい性が向上し、乾燥時間の短縮も実現した。フラッシュタイムが不要なウェットオンウェット塗装が可能であるため作業効率は溶剤以上かもしれない」(同)とする。工場経営面からみても導入効果が期待できる塗料であることが確認できたようだ。同工場は2011年4月からクロマックスプロをほぼ100%使用する体制をとっている。

保険会社の理解も

自動車車体整備事業者が、水性塗料を導入するうえで、収益面でも効果を挙げるには、保険会社との情報共有・相互理解が必要となる。

一条センター長は「水性塗料の導入を経営面でも効果的に働かせるには、トータルマネジメントが重要」と話す。材料費の調整、ペインターの技能、作業効率の向上など、各種要素を磨き上げ、工場全体のクオリティをあげることが要求される。

スバルオーナーを納得させる仕上がりを提供

同工場でもっとも大事にしていることは「仕上がり」(同)。「サービスフロントが自信をもって補修後の車両をオーナーに引き渡せること」(同)とする。

「スバルオーナーは、クルマの構造をきちんと理解されている方が多いが、クルマを直す我々には、プロとしてクルマの構造を把握している。具体的には一台のクルマでも、相対的に強度の必要な部分や弱いところ、鉄板が薄いところなど、強弱がある。そうした車両ごとのバランスまで把握し、整備に取り組んでいる」という。高い品質を保つため、高い意識レベルを維持していることが垣間みられた。

《記事協力:デュポン社》

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