3人の孫のために |
このほど公開されたディズニー-ピクサーのアニメーション映画『カーズ2』で大女優ソフィア・ローレンが初めて声優を務め、イタリアで話題となっている。
『カーズ2』は、2006年に制作された前作の『カーズ』同様、擬人化されたさまざまな自動車によってストーリーが展開される。前作はアメリカの田舎「ラジエター・スプリングス」が舞台だったが、今回は車たちが東京も含む世界をまわってグランプリに挑む。
ソフィア・ローレンが自らのキャリアで初めて声優を務めたのは、「ママ・トポリーノ」という車の声。イタリアで村一番の燃料を作る料理名人で、1937年型フィアット『トポリーノ』の姿をした夫「アンクル・トッポリーノ」がいる。
前作を観た方なら記憶していると思うが、イタリア系タイヤ店主で1959年フィアット『500』の姿をした「ルイジ」の叔母、という設定だ。「マンマ・トポリーノ」は、世界グランプリに挑むため仲間を連れてアメリカからイタリアにやってきたルイジたちを迎える。
今年77歳を迎えるソフィアは今回、イタリア用をはじめ、計21か国向けの吹き替えを担当した。フィルムの中では彼女が少女時代を過ごしたナポリの訛りが強調されているが、実際は「目や口をもったクルマが喋るという特異な設定のため少なからず苦労した」とインタビューに答えている。
今回ソフィアが声の出演を引き受けた理由のひとつは、「3人の孫のためだった」という。そのうえで「彼らが映画を観て、ママ・トポリーノ(の声)が自分たちのおばあちゃんであることに気がついてくれることを願っています」と語った。
もうひとつの理由は、生前会ったことのあるウォルト・ディズニーへのオマージュだった。彼女は「子供にとっても、ティーンエイジャーにとっても魅力的な人だった」と回想する。また自身とアニメについても触れ、「私は子供の頃から生活するために働かなくてはならなかったので、漫画を観る暇はありませんでした。アニメを観たのは、子供と一緒にディズニーを楽しむようになってからです」と語った。
なお、「もし今、ディズニー作品の主役を演じるなら?」と質問したテレビのインタビュワーには、「白雪姫!」と即座に答えて微笑んだ。
ストーリーにはモンツァ・サーキットも登場する。これについてソフィアは、「(スタッフは)レースのシーンに最適な場所としてモンツァを選びました。モンツァは世界的に有名ですからね」とコメントした。
ところで、一定年齢以上の日本人自動車ファンにソフィア・ローレンといって思い出すのは、ホンダの原付2輪車『ロードパル』のテレビコマーシャルだろう。ソフィアが「ラッタッター」のかけ声とともにタップスターターを踏んだのは、1976年のことだ。計算してみると、当時彼女はすでに42歳。にもかかわず、小学4年生だった筆者の心には、そのハスキーボイスとともに充分妖艶だった記憶がある。
それはともかく、歳を重ねてもチャレンジ精神を忘れないイタリアを代表する大女優に敬意を表そうではないか。
大矢アキオの欧州通信『ヴェローチェ!』 |