F1開幕2連勝を挙げていたセバスチャン・ベッテル(レッドブル)をついにマクラーレンのルイス・ハミルトンが止めた。中国GP、圧倒的なスピードでポールポジションを奪っていたベッテルだったが、17日の決勝はスタートでマクラーレンの2台に出し抜かれ、まさかの苦戦を強いられることになる。
今回のレースを語るうえでの重要なキーワードは「タイヤ」である。F1の競技ルールでは、Q3に残った10台のマシンは最後の予選セッションを走ったタイヤでスタートしなければならないことになっている。ひとつでも前のグリッドを目指すQ3進出ドライバーはタイムを稼げるソフトタイヤでグリッドを争うのが通常だ。ポールポジションを奪ったベッテルももちろんソフトタイヤでスタートしたが、決勝レースではもう一種類のハードタイヤへの装着義務が残っている。
ベッテルが決勝に向けてとった戦略は2ストップ作戦だった。最小のピットストップタイムで54周を戦うつもりだ。一方、まさかのQ1落ちを喫してしまっていたベッテルのチームメートであるマーク・ウェーバーは、ハードタイヤでスタートして予選で使う機会のなかった新品のソフトタイヤを使ってマルチストップ作戦でレースに臨んだ。
3番手のベッテルは、14周目にトップを走っていたジェンソン・バトン(マクラーレン)と同時にピットイン。ところがバトンは間違えてベッテルのピット前にマシンを止めようとしてしまう。このタイムロスでベッテルはピットレーン出口までに順位を上げることに成功する。この後、各車がタイヤ交換を済ませる度に次々とラップリーダーが入れ替わったが、終盤になるとベッテルがトップに立っていた。
ラスト4周という時点で、真新しいハードタイヤで猛チャージししていたハミルトンが、周回を重ねたハードタイヤで我慢の走りを強いられていたベッテルを大胆にオーバーテイク! ハミルトンはそのままフィニッシュしてベッテル/レッドブルの開幕3連勝を阻止した。2位はベッテル、そして3位にはなんと18番手からスタートしたウェーバーが食い込んでみせた。良くも悪くも、グリップダウンが突然に訪れるというピレリタイヤが演出した中国GPだった。
以下は、4位から10位までに入ったポイントゲットのドライバー。バトン、ニコ・ロズベルグ(メルセデスGP)、フェリペ・マッサ(フェラーリ)、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)、ミハエル・シューマッハ(メルセデスGP)、ビタリー・ペトロフ(ロータスルノー)、小林可夢偉(ザウバー)。