新型フォルクスワーゲン『ポロTSI』の1.2リットルターボエンジンは、小排気量・高過給で燃費性能と出力を両立させる、いわゆる「ダウンサイザー」。10・15モード燃費20km/リットル、速度域の高い欧州における混合モードでも18.9km/リットルを達成するなど、燃費性能は高い。
が、将来を見据えると、省エネルギー性能はこの数値でもまだ不足。欧州ではメーカーごとの1台・1kgあたり平均CO2排出量について、2012年に120g、2020年に95gと、きわめて厳しい規制がかけられることになっている。ポロTSI+DSG(機械式自動変速機)は124gと、2012年の規制も未達だ。
TSIエンジンの開発責任者であるヘルマン・ミッデンドルフ博士は、2012年規制のほうは「TSIは(予混合燃焼などの)高度な技術革新を待たずとも、可変バルブ制御機構やEGR(排気ガス再循環)を使えば10%程度効率を改善することができる」と、現有技術で十分クリアできるという。
問題は2020年の95gのほうだ。今日、フォルクスワーゲンは3気筒1.2リットルターボディーゼルの『ポロ・ブルーモーション』で87gを実現している。「そのブルーモーションテクノロジーを、ガソリンモデルにも展開していく必要がある。そうすれば100gは十分下回れると考えている」(ミッデンドルフ博士)
ブルーモーションテクノロジーとは、空力処理、ボディの軽量化、アイドリングストップ、回生ブレーキ、高度な温度管理などで構成された技術パッケージである。1.6リットルディーゼル・マニュアル変速機の組み合わせでブルーモーションと非ブルーモーションを比較すると、前者が96g、後者が109gで、約12%の改善が期待できることがわかる。
もっとも、エンジンで10%、ボディで22%改善したとしても規制値には届かない。そこでハイブリッドという選択肢も出てくるという。
「TSIとハイブリッドシステムの相性は悪くない。コストとメリットの兼ね合いを考える必要があるが、SUVに展開しようとしているハイブリッドをもっと小さいクラスにも載せる可能性はもちろんある。ただし、ガソリンエンジンとボディの効率化で相当の燃費メリットを得られた場合、さらにハイブリッドシステムを追加する意味があるかどうかはまだわからない。ちなみにわれわれがハイブリッドと呼ぶのは、モーターで駆動できるシステムだけだ。(マイクロハイブリッドなどの)エネルギー回生システムはハイブリッドとは呼ばない」(ミッデンドルフ博士)
エコカー技術ではトヨタ、欧州フォードなどと世界のトップランナーを競う立ち位置にいるフォルクスワーゲン。今後、どのような技術をリリースしてくるのか、興味深い。