【先進安全技術 比較試乗】減速の少ないクルーズ向け…ボルボ XC60

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XC60のクルーズコントロールは、低速追従-停止機能を持たないため渋滞のない高速走行に向いている
  • XC60のクルーズコントロールは、低速追従-停止機能を持たないため渋滞のない高速走行に向いている
  • XC60のクルーズコントロールは、欧州車だけに渋滞・加減速の少ない高速走行に向けといえる
  • レーザーセンサー
  • フロントグリルに取付けられた赤外線レーザーのリフレクター
  • 車間設定は5段階で可能。前方車を認識すると、設定速度の左に車両のマークが点灯する
  • ボルボ XC60
  • ボルボ XC60
  • 30-35km/h程度まで速度が落ちると、クルーズコントロールは自動的にキャンセルされてしまう。

自動ブレーキを搭載する最新モデル3車種の比較試乗を実施した。5月に発表されたばかりのステレオカメラ制御システム「アイサイトver.2」を搭載するスバル『レガシィ』、ハイテク満載の日産『フーガ』、そして低速時の緊急自動ブレーキをいち早く市販車に導入したボルボ『XC60』だ。最新のクルーズコントロール機能を試し、3台の安全・快適性へのアプローチの違いを体感した。

◆車間・車速設定の自由度が高いXC60

今回はボルボXC60で、みなとみらいインターチェンジから大黒ふ頭、鶴見つばさ橋を経由して首都高湾岸線へ入り、湾岸幕張パーキングエリアまで走った。こちらのシステムは、レーザーレーダーとカメラを使用している。カメラはオートブレーキと前方車接近を警告する車間警報システム、そしてレーン逸脱警告に利用され、レーザーレーダーは主にアダプティブクルーズコントロール(ACC)に利用される。

高速走行の平均車速が日本よりずっと高い欧州をメインとするモデルだけに、クルーズコントロールの設定の幅は非常に広い。日本では使う機会はないだろうが、最大巡航速度は200km/hまで設定可能。車間距離も、フーガとレガシィが遠・中・近の3段階であるのに対し、遠 - 近の5段階設定が可能だ。減速もドライバーに不安を抱かせることはなく、自然な効き具合だ。

◆ドライバーの不注意による事故を未然に防止する警告機能

旅程中、渋滞はほとんどなく、大半が巡航。前車が近づいてくるとアクセルオフするとともに、フロントウインドウ下部に赤い光を映り込ませて「前車が接近中ですよ」と点滅、連続点灯と変化して知らせてくれる車間警報システムはわかりやすく、非常に安心感が高いものだった。

今回は公道試乗だったため、追突軽減の自動ブレーキは試すことはできなかったが、先に挙げた車間警報システムや斜め後方の視覚からの接近車を知らせる「BLIS(Blind Spot Information System)」、そしてレーン逸脱警告などはドライバーの不注意による事故の危険性を低減するシステムとして評価できる。ただし、BLISは停車時にアラートが鳴ることが時々あり、レーン逸脱警告も高速のカーブなどにある二重の車線を少し踏んだだけでもけたたましく鳴ってしまうなど、若干過敏な印象。日本での込み入った道路事情に適正化するためにも検出精度向上の余地はありそうだ。

◆35km/h以下では自動キャンセルされるACC

試乗ではアダプティブクルーズコントロールを200km/hに設定したが、レーザーセンサーで前車との車間を保つシステムのため、流れに乗った走りとなる。ただ、前にまったくクルマがいない状態になったときは日本車のクルーズコントロールに比べてスロットル開度はかなり大きめになる。200km/hまで引っ張ろうというシステムゆえ当たり前ではあるが。

先に乗ったフーガとの違いがはっきり出たのは、料金所のETCゲートを通過するときだった。

フーガは、スピードが落ちるとクルーズコントロールから低速追従モードへ自動的に切り替わり、前のクルマがETCで減速するのに合わせてブレーキをかけ、そのままゲートを通過する。

いっぽう、非常ブレーキのみで低速追従機能を持たないXC60は、車速が35km/hを下回るとクルーズコントロールがキャンセルされる仕組みになっているため、自分でスロットルとブレーキを操作する必要がある。したがって、断続的渋滞が続くノロノロ運転では利用できない。

欧州車らしく比較的交通量が少なくハイスピードで流れる郊外の高速道路や空いた地方道などで、減速の機会が少ないクルーズでは使いやすいシステムと言える。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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