【ホンダ CR-Z 試乗】ひと粒で3度おいしい…長嶋達人

試乗記 国産車
CR-Z
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ホンダ『CR-Z』の特徴の一つは、ハイブリッドシステムと6速マニュアルトランスミッション(MT)を組み合わせたシパワートレーンシステムを搭載していることだ。

トランスミッションとしては、MTと同時にCVTが設定されており、10・15モード燃費は、CVTが 25.0km/リットル、MTは22.5km/リットル。つまり、燃費競争ではエンジンとCVTを総合的にコンピューター・コントロールするCVT に対して、ベテランテストドライバーのシフトテクニックとアクセルワークが、一歩譲らざるを得なかったという結果になっている。しかし、それはそれ、やはりCVTよりMTのほうが実用燃費との差が小さいというデータもあるようだ(自分での実計測は無し)。

CR-Zのパワートレーンは、ドライバーの好みによって、「SPORT」「NORMAL」「ECON」の3タイプの中の一つを選択することができる。この各走行モードは、インパネの右側に装着されているスイッチを押すことによって切り替えることができる。

走行スイッチを切り替えると、モーターが発生するアシストトルクやエンジンレスポンスなどが変化し、同時にステアリングの操舵力も変化する。つまり「スポーツモード」は、やや燃費には目を瞑った爽快なスポーツ走行フィーリング優先。「エコ・モード」は、加速の速さなどよりも燃費優先のエコカー的な走行。「ノーマル・モード」は、ごく普通の乗用車的な走行性能が発揮される。

設定された3つの走行モードは、走行中にも切り替えることができるため、ごく簡単に、各走行モードの違いを、かなり顕著に感じ取ることができる。3パターンの走行モードは、CVTにもMTにも設定されており、その各モードの中でも、MTのスポーツ・モードが、もっともアクセルの反応が敏感に作動する。

また、各走行モードの違いは、一つのパワートレーンの中に納められている1.3リットルから2リットルまでのエンジン性能の中から、ドライバーが、そのときの気分に応じて、好みのエンジン性能を選び出して走ることができるクルマという見方もできる。

例えば、一般的なセダンやSUVには、排気量の違うエンジンを搭載したグレードが設定されていることがある。CR-Zは、このように互いに異なったグレードのクルマのパワートレーン性能を、一台のクルマで味わうことができるということにもなり、ちょっと大げさな表現をすれば「一粒で3度おいしい味を持ったクルマ」とでもいうことにもなりそうだ。

ボディデザインなどについては好みの問題。「エクストラウィンドゥ」と呼ばれるバックウィンドゥは、ホンダの燃料電池車である『FCXクラリティ』や『プリウス』などと同じように、ルームミラー視界の中に真横一文字のパネル影が映りこみ、決して快適なものではない。だが、CR-Zは、右側ドアミラーの形状や取り付けが絶妙に設定されているため、ほぼ直後を後続してくるクルマの位置をドアミラーで確認できる。だから「ルームミラーは見たくない」と割り切ってしまえば、ルームミラー写影の煩わしさを回避することもできる。

また、斜め後方の視界に関しては最悪と言っていいほどだが、この点に関しては、後方視界の範囲を、従来の130度から180度に拡大したというリヤカメラの効果によって、バック走行時の不安は、かなり解消することができる(ただし、ナビなどとのセットオプション)。

仕様上は4人乗りでありながら、フロントシートを快適な位置にセットすると、後席乗員が足を置くスペースが無くなってしまうし、後席にはヘッドレストが装備されていなかったり、かろうじて座面を窪ませることによって後席乗員の規定をクリアしているなど、4人乗りとしては無理があるが、この点については、細かい注文をつけるより「オマケの後席が付いたスポーツクーペ」ということで割り切ってしまったほうがスッキリする。

ということで、実用車やセダンとしてCR-Zを見れば、まったくのダメクルマ。現代的に燃費を抑えつつ、爽快なスポーティカーとしての走行を望んでいるユーザーにとっては、恰好の1台ということになるだろう。

長嶋達人|自動車ジャーナリスト/国家資格二級ガソリン自動車整備士
東京生まれ。自動車雑誌編集、自動車サービス工場での整備・接客実務などを経歴後、自動車メンテナンス関連記事を中心に執筆。サービス工場勤務時、微妙な振動や音などに関するユーザーからの新車クレームに悩まされた経験が、現在の新型車試乗判断基準の一部にもなっている。国産車・外国車含めて節操もなく多数代替え。これが「自動車ジャーナリストとしての肥し」になっているか否かについては疑問?

《長嶋達人》

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