トヨタ自動車、豊田社長の冒頭説明全文…公聴会

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豊田章男社長
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  • プリウス(北米仕様)

トヨタ自動車は、米国下院公聴会での豊田章男社長の冒頭説明原稿を発表した。以下、全文。原文は英文。

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トヨタ自動車の豊田章男です。まずはじめに、私は誰よりも車を愛し、誰よりもトヨタを愛していることをお伝えしたいと思います。お客様に愛していただける車を提供することを至上の喜びとし、それは全米20万人の社員、ディーラー、サプライヤーも同じだと思います。

しかしながらここ数か月、トヨタのお客様はトヨタ車の安全について不安を感じており、それはひとえに私の責任であります。今日私は、アメリカの皆様、お客様、さらに全世界のお客様に対し、トヨタが車の品質と安全について、いかに真剣に取り組んでいるかをご説明したいと思います。今日、私の考えを表明する機会をくださったタウンズ議長、アイサ筆頭理事、監督・政府改革委員会の皆様に感謝いたします。

今回は、品質管理についてトヨタの基本的な考え方、リコールの原因、今後の品質管理についての扱い、これら3点についてお話ししたいと思います。

最初はトヨタの品質管理について論じたいと思います。私自身、そしてトヨタも完璧ではありません。時には欠陥を見つけることがあります。そういうときには、つねに立ち止まり、問題を理解することに努め、より進化するために変更を加えます。会社の名前と伝統と誇りに賭けて、私たちは問題から逃げようとはしませんし、また問題を隠そうとすることはしません。つねに改良を加えることにより、社会により良い製品をお届けし続けるようにしています。これが創業以来、私たちが心に留めてきた核となる価値観です。

トヨタにおいて、製品の品質を作る鍵は、人材の品質を育成することにあると信じます。社員の一人ひとりが自分のすべきことを考え、改良し続けることにより、よりよい車が作られます。私たちはこの価値観を共有し、実行できる人材の育成に積極的に取り組んできました。この偉大な国で車を販売し始めてから50年以上が経ち、ここで生産を始めてから25年以上が経ちました。そしてその結果、この国の20万人のトヨタ、ディーラー、サプライヤーの皆さんと、この価値観を共有できました。そのことが、私が最も誇りとすることです。

2番目に、いま我々が直面しているリコール問題の原因について語りたいと思います。トヨタはここ数年の間、急速にビジネスを拡大しました。率直に言って、私自身、速すぎたと思うほどのペースでした。ここでトヨタの優先要件は、第一に安全、次に品質、そして量であることを改めて明確にしたいと思います。これらの要件が混乱し、以前のように立ち止まり考え改善するということが出来なくなっていました。お客様の声を聞くという私たちの基本姿勢がおろそかになっていました。人材を育成し、組織を発展させる速度以上に、成長を求めました。その結果として、安全性が今日のリコール問題となったことは残念であり、トヨタ車ドライバーが経験したすべての事故について深くお詫びいたします。

とくにサンディエゴで事故に遭われたセイラー一家のご冥福をあらためてお祈りいたします。このような悲劇を二度と起こさないために私は全力を尽くします。

私は昨年6月に社長に就任して以来、個人的に量よりも質の改善に最も注力してきました。そしてこの方向性は株主の皆さんのご理解も得てきました。ご存知のように私は創業者の孫であり、すべてのトヨタ車に私の名前がついています。私にとって車が傷つくことは私自身が傷つくことです。私は誰よりもトヨタ車が安全であることを望み、ユーザーがトヨタ車を使う際に安全を感じてほしいと思っています。今後、私自身のリーダーシップにより、トヨタは創業当時と同じく、要件リストの最上位に安全と品質が位置することを再確認します。そしてその価値観が実現できる仕組みづくりに努力します。

3番目に、品質管理について、今後、私たちはどうするのかお話ししたいと思います。これまでリコールに関する決定はすべて日本の品質保証部が決定しておりました。この部署が技術的問題の有無を確認し、リコールの必要性を判断していました。しかし現在の諸問題に基づいて反省すると、私たちに欠けていたのは顧客視線でした。

この点を改善するために、リコールの決定プロセスについて、次のような変更を加えます。リコールを決定する際に、“顧客の安全第一”の視点から経営陣が責任を伴った決定をするための過程を一段階増やします。そのために、世界中のお客様の声がタイムリーに届くようなシステムを用意し、各地域で必要な手段を講じることができるシステムを用意します。さらに、誤った決定を下さないために、北米はじめ全世界からの社外の専門家によって構成される品質監査グループを設立します。北米では自動車品質センターを新設、製品安全担当役員を配置し、欠陥やリコールなど製品品質に関する情報や責任を共有するようにして、品質には多くを投資します。

より大切なこととして、経営陣が実際に車を運転して、問題がどこに存在するのか、どの程度危ないことなのかを自らチェックするようにします。私自身、訓練を受けたテストドライバーです。プロとして私は車の問題点をチェックできますし、安全問題がどのように深刻かを理解できます。アクセルペダルのリコール対象となった車や『プリウス』については、対策前後の車を様々な環境で運転しました。現場で問題を検討することによってのみ顧客視線での決定を下せると私は信じます。会議室で提出される報告書やデータに頼ってはいけません。

これまで延べてきた方策と、NHTSAと協力して得られるすべての調査結果によって、トヨタ車の品質をさらに進化させ、お客様第一という目標を全うしたいと私は考えます。

私の名前は全ての車についています。トヨタはお客様の信頼を取り戻すための努力をし続けることを私はお約束します。

《高木啓》

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