BMWグループは29日、SGLグループと共同で、自動車用カーボン素材の研究開発を目的とした新会社を設立すると発表した。ここで培った技術を、今後5年以内に発売するシティカーに応用する。
ドイツ・ヴィースバーデンに本社を置くSGLグループは、炭素ベースの製品を生産する世界有数のメーカー。炭素・黒鉛製品、カーボンファイバー、複合素材など、幅広い商品を手がけている。生産拠点は世界40か所、サービスネットワークは100か国以上。従業員は約6500人で、2008年の売上高は16億ユーロ(約2172億円)だ。今年5月には、ブレーキメーカーのブレンボと、カーボンセラミックブレーキ分野で提携を結んでいる。
BMWグループとSGLグループは、合弁会社を米国とドイツに設立。出資比率はBMWが49%、SGLが51%で、BMWの投資額は9000万ユーロ(約122億円)に上る。
軽量・高剛性なカーボンファイバーは、運動性能を高める素材として、レーシングカーや一部スポーツカーが採用。最近では、車体を軽くすることでCO2排出量を削減するという、カーボンが持つ環境面での効果も注目されている。
BMWはすでに、『M6クーペ』のルーフにCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使用。カーボンは現時点では価格が高いのがネックだが、BMWとSGLは、低コストのカーボンファイバーやCFRPの共同開発に乗り出す。
カーボンファイバーの価格を引き下げるには、技術開発だけでなく、量産効果も必要。そこでBMWは、新会社で開発したカーボンを「メガシティビークル」と呼ぶシティコミューターに採用する方針だ。『MINI』のプラットホームをベースにする『0シリーズ』(仮称)がそのモデルと見られ、BMWのエントリー車として、低価格で販売することを狙う。
BMWのノルベルト・ライトホーファー会長は、「SGLは最高のパートナー。我々は軽量コンパクトで環境に優しい新しい小型車を、5年以内に投入する」と力強く宣言した。
欧州メーカーでは、ランボルギーニが7日、ボーイング社、ワシントン大学、FAA(米国連邦航空局)と共同で、次世代カーボンファイバー技術を研究開発すると発表したばかり。自動車の軽量化に欠かせないカーボン技術の研究開発において、各社が凌ぎを削ることになる。