事故を目撃した兄弟の精神的苦痛

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2001年、岩手県二戸市で飲酒運転の軽トラックにはねられ死亡した当時7歳の女児の遺族が、事故起こした運転手に対して総額約5300万円の賠償請求を求めた民事訴訟の判決が22日、盛岡地裁二戸支部で行われた。

裁判所は被告に総額約3850万円の支払いを命じている。

問題の事故は2000年11月28日の午前7時30分ごろ発生した。

岩手県二戸市福岡付近の県道で、集団登校中の小学生の列に対向車線から逸脱してきた62歳(当時)男性の運転する軽トラックが突っ込んだ。この事故によって7歳の女児ら2人が死亡、女児の兄を含む6人が重軽傷を負った。

軽トラックを運転していた男性は飲酒運転をしており、しかも事故当時は居眠りをしていた。男性は業務上過失致死傷と道路交通法違反(酒気帯び運転)で逮捕・起訴され、懲役4年の実刑判決を受けたが、すでに刑期は終了して出所している。

死亡した女児の遺族は2003年末に損害賠償を求める民事訴訟を起こした。

請求では死亡した女児の慰謝料や逸失利益を求めるだけではなく、自分の妹が死ぬ様子を至近距離で目撃し、現在も衝突音などを聞く度に過度の恐怖を感じる2人の兄弟も事故の被害者とみなし、合わせて約5300万円を加害者側に求めた。

また、加害者に事故の記憶を風化させないことを目的に、全体の請求額のうち逸失利益の部分については分割し、毎年11月28日(女児の命日)に支払うことを求めたが、加害者側はこれには反発。真っ向から争う姿勢を見せていた。

22日に行われた判決で、盛岡地裁二戸支部の吉村美夏子裁判官は、死亡した女児の逸失利益の分割払いについては「命日に支払ってほしいという遺族の思いは理解できるが、支払い方式で解決できるかどうかは疑問」と指摘。

その上で「死亡逸失利益と本来的にそぐわない方式であり、定期金払いを認める根拠とはならない」として、分割払いによる支払いについては退けた。

兄弟2人の精神的苦痛については「特定条件で事故の記憶が蘇るもので医学的、心理的な裏付けはない」としながらも、「事故に遭遇し、妹が傷つき倒れる場面を目撃した。これが心に深く暗い部分を残していることは否めない」として、1人あたり150万円の精神的苦痛に基づく慰謝料を認定。

これを含めた慰謝料総額を約3850万円として加害者側に対して支払いを命じた。

東京などでは命日払いが認められる傾向にあるが、盛岡地裁はこれを回避するという従来の方向性を踏襲する結果となった。

《石田真一》

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