中村　日本デザインというのならひとつ、恰好の例があります。それが『ティアナ』です。シンプルでクリーンで、アグレッシブではない落ち着いたデザインです。ダッシュボードを見てお寿司屋さんのカウンターだと言った人がいました（笑）。デザインの原案はもっと木目の部分が広くて色味も明るかったんです。シフト周りや各種インジケーターはひとつの日本流デザインではないでしょうか。

フミア　ああ、これがまさしく私が言うところのジャパニーズ・デザインですね。シンプルで繊細でナチュラル。私は日本に来るとエレベーターのデザインに目が行くんですよ。エレベーターの箱は空でなければならないので装飾しにくい。何かデザインするとしたらスイッチとインジケーターだけ。エレベーターのデザインがあそこまで洗練されているのは世界では日本だけです。これが日本デザインであり、ティアナのデザインにも似たような意識が感じられます。

中村　エレベーターねえ。気付かなかった。

編集部　ティアナとエレベーターが同じデザイン手法であるという結論に達しましたが、本日はお二方ともお忙しい中で時間を割いてくださりありがとうございました。有意義な対談となったでしょうか。

中村　いや、今日はおもしろかった。

編集部　読み物としては話題がとっちらかって、お二人がもっとやり合った方がおもしろいのですが、まるでシナリオがあったかのようにスムーズに話が進みました。

中村　フミアさん、我々ふたりは基本的な考えが似ているようですね。

フミア　ええ、今日が初対面なんですけどね。