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インタビュー/コラム:企業人
[an error occurred while processing this directive] 【トップインタビュー】あと1パーセント、それが遠い---ダイハツ工業 山田隆哉社長(前編)
●いまやトヨタ・ヴィッツが強敵

―― 昨年の軽自動車市場でのダイハツ車のシェアは過去最高の27.8%となり、トップのスズキ(30.6%)との差は2.8%にまで縮まってきましたね。一昨年の差が3.8%だから、一段と肉薄してきたといっていい。しかも、今年に入ってから、月間ベースで2月はスズキの30.2%に対して29.2%とわずか1%の差まで接近したそうですね。過去28年間トップを走り続けているスズキを射程距離に捉えて、熾烈な首位争奪戦が演じられています。その手応えは?

山田 追いつきたい。できるだけ早く追いつきたいですがね。毎年3月は軽自動車が、1年でいちばん多く売れる重要なシーズン。この繁盛期で年間の勝負がつくとみてもいい。

―― 月間ベースの瞬間風速はともかく、年間ではこれまで一度もスズキを抜くことができなかった。理由はなんですか。

山田 商品力は大差ないと思っているが、やっぱり販売力ですかね。全国の販売店の数にしてもスズキさんとは7000店近くも差がある。直販・業販店をいかに組織的に効率よく展開していくが大きなポイントになる。

―― スズキを抜くとすれば、いつ頃を目標としていますか。

山田 ウン、目標と言われても……。相手があることですからね。シェアというのは会社の総合力なんです。いま追いついてきているのは、新宮(威一)会長の社長時代に、きめ細かな社内改革を断行したからです。例えば、軽自動車の新規格にもすぐに対応して、主力車種の「ミラ」や「ムーヴ」などのモデルチェンジやマイナーチェンジのタイミングを逃さなかった。優れた商品を生み出すシステムや仕事の流れをちゃんと作られた。それに、全国の各県にある販売店が頑張って売ってくれているからです。引き続き商品力、販売力を総合的にパワーアップさせられるかどうかで勝負がつくと思います。

―― でも最近の数字を見ると、すぐにでも行きそうな。

山田 いやいや、すぐに行くってことはない。僕が総合力と言ったのは、さっきは販売力と商品力しか説明しなかったけれど、総合力ってのは要するにコストなんですよ。なぜ重要かというと販売するための金、販促の資金、これはトータルでのコストが安くないと捻出できない。スズキさんの売りかたを見ているとダイハツの動向をみて余裕のある競争をしている。

―― では商品力を比較すると、スズキには「ワゴンR」という大ヒットしている人気車種がある。軽自動車はどちらかと言えば衣・食・住に近い。つまり、運転を楽しむというよりも、都心から離れて地方に住んでいるかたの通勤や買い物などの「足がわり」の需要が大きいのではないかと思います。そのポスト「ワゴンR」みたいなクルマを新しいコンセプトでどっちが先に出すかで、これからのシェアに影響してくるのじゃないですか。

山田 確かに、背の高い機能的なデザインの「ワゴンR」は、いまのライフスタイルにマッチしている。出された瞬間に「やられたな」と……。ただし、ウチにもああいうヒット作品が生まれれば、すぐに逆転しゃうと思いますがね。ダイハツも新しいジャンルの「ネイキッド」という軽乗用車を出して、仕掛けたつもりだったが、シェアがひっくりかえるほどの大成功とはいかなかった。もう、かつてのような大ヒット商品を生んで、一気にドカーンということは難しいかもわからない。

―― では、つぎの商品コンセプトは?

山田 「ユニクロ」じゃないけど、低価格で品質の良いいものは当たり前。自動車の場合の品質とは安全性や排ガス規制などの環境問題に重点が置かれている。安全性でもホテルのランクのように星が5つとか4つとか、ユーザーからは厳しく評価される時代です。売れ筋は外観のデザインばかりではないんですよね。そうなると案外、生活に密着していない部分が、残されているような気もするんですがね。

―― なるほど、逆転の発想で隙間を狙う。でも、個性的で遊び心を重視すると、一般的には多品種少量、かつてのような量産化は難しい。大量に売れる車種がないと市場規模も小さくなって、スケールメリットも出ない。軽自動車そのものが衰退する恐れはないですか。

山田 その傾向になるかどうかは、一概に否定できません。昨年、国内の軽自動車の総需要が187万台に達しましたが、それがピークじゃないかと、私どもは見ている。98年から発売した新規格車などの効果が予想以上に健闘して、軽の市場は新規格以来ここ1、2年絶好調だった。でも、これからは1000CCクラスの登録小型車へのシフトや、限られた市場のなかでのシェア争いがさらに激しくなりそうで、いまが絶好調だからといって、いつまでも浮かれてはいられない。社内に向かって、少し緊張感に欠けていないか、とハッパをかけているところなんですよ。

―― 軽自動車のユーザーが、トヨタ自動車の人気車種の「ヴィッツ」に乗り換えてしまうということですね。

山田 トレンドとしてその傾向が強まっているようですね。先ほどご指摘されていたように、軽自動車のニーズは、大半が足がわりだから、これまでは「軽」から「軽」の買換え需要が圧倒的に多かったわけです。

―― それが「小型車」へ流れ始めたとなると、ダイハツのライバルはスズキだけなのかと思っていましたが、皮肉にも突然、「ヴィッツ」が強敵に加わったことになる。スズキは別としてダイハツにとっては、まさに“骨肉の争い”というわけですね。

山田 イヤイヤ、それは少し大袈裟です。「ヴィッツ」に限らず、日産の「マーチ」、ホンダ「ロゴ」なども同じです。たまたまトヨタがこのジャンルに先に投入してヒットしただけで、日産やホンダさんも、「ヴィッツ」クラスへの強力な新商品で狙ってくることは間違いないと思います。

―― いっぽうで自動車工業会会長でトヨタ自動車会長でもある奥田さんなどが、新規制で軽自動車がここまで大きくなったんだから、軽自動車の優遇税制を見直そうじゃないかとかいう動きがありますね。

山田 奥田さんは自工会会長として、海外のメーカーから輸入に対する規制だというような意見が出てくるのを牽制するために言っているのではないですかね。

―― なるほど。優遇税制がもし廃止になった場合、軽自動車の販売は減り小型車に流れると思われますか。

山田 サイズはともかく大きな排気量を求める人はいると思う。しかし、私は優遇税制っていうより軽自動車の制度というのは、当初は安いクルマをたくさん普及させようという、国民車構想だったのですが、新車販売の30%が軽自動車である今、地球温暖化問題、排ガス問題を抱える現代においては国の産業政策として捉えるべきじゃないかな。ということは国民が軽自動車に乗ってる人からは軽の制度についての不満は全然ない。しかも軽じゃないクルマ、小型車に乗ってる人からも文句はでません。選んでいるのですから。

―― 世論から出てきた論議ではないと。

山田 もうひとつ。東京に住んでいると分かりにくいでしょうが軽自動車はさっき言われたように足です。軽自動車が売れてるのは、鳥取、島根、それから長崎。そういうとこですよ。電車など一般交通機関がなくて、働きに行くお母さんが、あるいは娘さんが使ってるんですよ。そういう地域の家庭は軽自動車ならば2台持ったり3台持つことができる。娘さんが通勤にクルマを使っていても、お母さんは買い物に行く、そういう生活を支えているのが軽自動車であり、一家族で見てみると、小型車一台持つ場合と納める税額はそんなにかわらないはずです。


《写真=水野鉱造》

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