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インタビュー/コラム:企業人
●いすゞは居心地のいい会社

――いすゞの従業員の意識はいまの業績に影響していませんか。

井田 それはものすごくあると思います。いすゞは昔から家族的雰囲気のある居心地のいい会社だといわれてきました。ですから、目的達成意識というのがそれほど高くない会社なんです。なにしろ目的を達成しなくても叱られない社風ですからね。例えば、6カ月で国内1万台を売ろうという目標が掲げられたとします。1カ月すぎて自分が立てた目標を下回っていたら、6カ月で1万台売る目標を達成するために、2カ月目以降の目標を修正するのが当たり前。ところが、それをしないで6カ月が経って9000台しか売れず、目標を1000台下回っても「ああ1000台売れなかったね」で済んじゃう会社なんです。

――それは確かに居心地がいい会社だ。

井田 こんなことはもう許されませんよ。このあいだ30人ぐらいの部長を集めたときに、「現在いすゞ単体の売上げが3割落ちている。だとすると、30人の部長の3割、約10人の部長はもういらないということなんだ」と言ったんです。



――普通、目標を達成できなかったら、その責任を問われますよね。

井田 責任を問われて会社を辞めたとか、他部署に異動になったという明確な例はあまりないと思います。だから、私もまだ残っている(笑)。

――従業員の意識を変えようと、井田さんは社長就任(昨年12月14日)後、従業員との対話集会を開きましたね。従業員からはどんな意見が出ましたか。

井田 「いすゞの社員だからこんなことを言うだろうな」と、予想できる意見がずいぶんありましたね。例えば「上司が悪い」とか、「他部門との壁がある」とかね。でも中には、「他部門との壁を私はこういうふうにして打ち破って、ビジネスを進めている」と発言する者もいました。こういう意見は貴重だと思いました。そういう意見をもつ人が多数集団ではなくてもいい。ある一定レベルの集団になって、いすゞのために働いてくれれば、会社は動きます。こういう人たちを表舞台に引っ張り出して、その人たちの仲間を増やすことをこれからやっていきたいですね。

――従業員にいかに危機意識をもたせるのか、これも井田さんにとって大事な仕事だと思うんですよ。日本の自動車メーカーは、日産自動車がルノーと、マツダがフォードと、そして三菱自動車がダイムラー・クライスラー(トラック事業はボルボ)と資本提携し、資本提携先の外国自動車メーカーから人が多数送り込まれ、社長ポストを握られている自動車メーカーもいくつかある。いすゞは1971年にGMと資本提携し、現在GMはいすゞ全株式の49%を握っていますね。いすゞの業績がこのまま低迷していると、GMに飲み込まれるという危機感はありますか。

井田 もちろんそう認識しているし、従業員にも率直に話しています。だって、いすゞはGMとの関係を除けば、財産も含み資産もなにもない会社ですよ。私たちに残っているものといえば、培ってきた技術と従業員だけです。だから、汗を流して懸命に働いて、利益を出さないと、おしまいの会社だって率直に話しています。新年早々に行われたサプライヤー(部品メーカー等)さんとの新年会でも、いすゞと共通の目標に立って一所懸命に仕事をしないサプライヤーはもういらないといいました。従業員も同じ。やりたくなければやめればいいです。

――従業員のことばかりについつい話がいってしまいましたが、考えてみれば、井田さんを含めた経営陣は従業員よりも長くいすゞにいるわけで、従業員よりもいすゞの社風に慣れているんだから、経営陣は従業員以上に危機意識が必要になるんじゃないですか。

井田 そう思いますよ。私の母は93歳なんですが、(いすゞが2000年度決算で大幅な)赤字を出したときに電話がかかってきた。会社がダメになって、いまさら(郷里の群馬県の実家に)帰ってきても、あんたの面倒を見てあげる余裕なんてウチにはないよ、と言うんです。この年(井田氏は57歳)になって、93歳の母親に心配されるような会社なんだ、と本当に恥ずかしかった。いすゞを本当になんとかしなければ、と真剣に考えています。

――フォード、ダイムラー・クライスラー、そしてルノーは、資本提携した日本の自動車メーカーに社長をはじめ、主要ポストに人を送り込んでいるのに、GMはこれまでなぜ、いすゞに人を送り込まなかったのでしょうか。

井田 それはお前なんかいらないということですか。日本人じゃ業績回復はできない。だから、外国人を入れろということですか。

――いや、そういうことを聞いているのではありません。だって、井田さんが社長になる前も、GMから人が来てもおかしくない状態だったわけですよね。

井田 でも(GMは)そうしなかった。それはいすゞを信頼してくれていたからですよ。だから、いすゞはGMの信頼に応えることが大事だと思っています。

――でも、いつまでもいすゞの業績が低迷しGMの信頼に応えられなければ、GMから人が送り込まれる可能性だって十二分にありえるのではないですか。

井田 それはもうはっきりしています。

1966年、慶應義塾大学法学部を卒業と同時にいすゞに入社。1990年にFS企画部長。1992年に流通部門、FS企画担当補佐を務めた後に、1994年に取締役に就任。1996年に常務、1999年に専務を経て、昨年12月14日に社長(COO=最高執行責任者)に就任した。

経済誌編集長を経てフリー経済ジャーナリストへ。「週刊文春」「週刊現代」「週刊朝日」「プレジデント」などの雑誌や、「ニュースジャパン」(フジTV)で活躍。著書に「トヨタ創意くふう提案活動」「自動車大ビッグバン」などがある。

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