世紀に間にあいました」――トヨタ自動車がエンジンと電気モーターを併用して走る世界初の量産ハイブリッド乗用車『プリウス』を世に送り出したのは、1997年のことだった。それから10年を経た今日、トヨタのハイブリッド車の販売台数は累計100万台を突破。ラインアップも超高級ハイパワーサルーン『レクサスLS600h』を筆頭に、セダン、SUV、ミニバン、トラックなど12モデルに拡大した。 |
米ではハリウッドスターがプリウスでアカデミー賞の会場に乗りつけ、また世界各国においては環境技術のシンボルとして紹介されるなど、“ハイブリッドカーブーム”はとどまるところを知らない。 |
ヨタのハイブリッド車が世界で注目を集めている最大の要因は、“究極の高効率”だろう。普通のクルマがムダに捨ててしまうブレーキ時の運動エネルギーを電気に変換して電池に蓄え、 発進や加速に使う。また、エンジンパワーも運転状況によって直接駆動と発電に振り分けられ、熱として捨てられるエネルギーを最小限にとどめる。 |
代プリウスが発売された当初、トヨタ・ハイブリッド・システム(THS)は、世間から地球温暖 化の原因物質とされる二酸化炭素を削減するための絶好のソリューションと受け止められた。
たしかにプリウスの燃費性能は、バージョンアップされたハイブリッドシステム「THSII」を搭載する現行の2代目モデルでは35.5km/L(10・15モード燃費)に達するなど、群を抜いている。
しかし、THSの特性は燃費だけではない。効率アップによって生じる性能的なゆとりは、燃費だけでなくパワーにも割り振ることができる。レクサスLS600hは、5LV8でありながらエンジン、バッテリーの統合出力は6リットルなみの445psに達する。いっぽうで10・15モード燃費は3リットル車並みの12.2km/Lを達成している。
このようにトヨタのハイブリッドシステムは車両に求められる性能に合わせてパワーや燃費をアレンジすることが可能となり、それによってハイブリッド車が極めて多様となった。こうした懐の深さは、誕生から10年のあいだ、間断なく続けられてきた技術開発によって生み出されたものだ。
「ハイブリッドに歴史あり」
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世紀という言葉が今となっては未来を表す言葉ではないように、ハイブリッドはもはや夢の未来ではなく10年の歴史を持つ確固たる自動車技術としてのポジションを確立した。この特集では、7年間のe燃費ユーザーのデータとともに、ハイブリッドの10年間を多方面の証言によって追っていく。 |
トヨタ ハイブリッド車 10年のあゆみ |
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トヨタ ハイブリッド車 販売台数 (単位:千台) |
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※2007年1月〜5月までの販売台数 |
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10年前の1997年に、内燃機関とモーターを組み合わせたパワーパッケージの実用車として、エポックメイキングなデビューを飾った初代プリウス。THS技術の船出でもある |
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THSテクノロジーの最大のポイントともいえる、運動エネルギーの効率的活用。エンジンとモーターが負荷状況に応じて連携し、動力方向/発電方向に作用することで余計な燃焼を抑制する |
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現行モデルにあたる2代目プリウスは、2003年9月に登場。先代のプレーンな3BOXスタイルから一転して、伸びやかなフォルムが印象的な5ドアハッチバック車の出現は衝撃的だった |
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2代目プリウスをはじめ、今のトヨタハイブリッドモデルの技術的躍進をもたらす原動力となったTHS-IIシステム |
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先ごろデビューしたレクサスLS600hは、5L V8+モーターから6Lモデル級の動力性能といわれる最高出力445psを発揮する一方で、3L6気筒級の10・15モード燃費を実現。パワーと燃費という二律背反する要件を克服した |
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