清水 初代プリウスからハイブリッドが着実に育ってきた過程を振り返ると、じつに見事な10年間で、その集大成としてのレクサスLS600hは素晴らしいモデルだと思います。繰り返しになりますが、ハイブリッドの大きなメリットのひとつとして低燃費が挙げられますが、レクサス、そしてLS600hとしての燃費をどう捉えられていますか?
定方 今後はクルマとしてのバリューと燃費を同時に考えていかなくてはいけないと思います。高出力な高級車は燃費が悪くて当然は許されない。環境性能しかりです。しかし、仮に同じ“10km/L”という燃費でも、苦労して走っての10km/Lと、快適に走っての10km/Lとは大きな違いです。もちろんLS600hが目指したのは後者であり、そうでなければプレミアムカーとしての魅力に大きく欠けてしまう。
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清水 つまり、メリットとコストだけでプレミアムカーは語れないということですね。同感です。しかし、今回のLS600hの成功を見て、ヨーロッパを始め、各国にバックマーカーが多数現れると思いますが……。
定方 ウエルカムです。ライバルがいたほうがむしろ刺激になります。今後、他メーカーでLS600hが徹底的に研究されることは予想がつきますし、基本的なメカニズムに関しては、追いつかれてしまうかもしれません。しかし、制動など、見えない部分の制御技術はそう簡単にLS600hのレベルに達しないでしょう。我々には10年以上にわたってハイブリッドを育て上げてきたノウハウがあるのです。そして、レクサスのハイブリッドの進化はこれから先も続きますから。
清水 では、今後、LS600hの技術進化があるとすれば、たとえば、どういうものが考えられますか?
定方 LS600hは、2007年時点、トヨタが持てる限りの技術の粋を結集した最高級車であり、改良の余地はないと考えています。正直、次に何をやるかは白紙の状態です。ただ、今後もハイブリッドはどうあるべきかを模索していくことは当然必要なことですし、将来的には今回の延長線上で、現在の優れた部分を残し、大胆な発想の転換で新しいシステムが生まれる可能はあるかもしれませんね。ひとつだけいえるのは、今回、LS600hを購入されたお客様の期待をさらに超えるもの。それを作らなくてはいけないということです。 |
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定方 理(さだかた・おさむ)
1983年トヨタ自動車株式会社入社。初代LS(セルシオ)ボディ構造開発などを経て、その後、初代ハリアーの開発を担当。2002年よりハリアーハイブリッドの開発に従事。LS600h/LS600h Lでは、ハイブリッド統括チーフエンジニアとして商品開発全般にわたってイニシアチブを執る |
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清水和夫(しみず・かずお)
1954年東京都生まれ モータージャーナリスト&レーシングドライバー 1972年にラリーデビュー以来、レースドライバーとして国内外の耐久レースで活躍するいっぽう、自動車ジャーナリストとして活動。ドライビングを科学的に分析する能力と、シャープな評論で多くの支持を集めている |
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