THS ハイブリッド開発の経験がエンジニアを育む THS ハイブリッド開発の経験がエンジニアを育む
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TECHNOLOGY
ハイブリッドとは、1+1を2以上にする技術である < TOP  1 2 3 4  NEXT >
朝倉 吉隆氏 川端 トヨタ自動車では、いくつかのハイブリッドシステムを持っていますが、現在の主流である『プリウス』などに搭載されている「THS-II」の特徴はどんなところでしょうか?

朝倉 まず、ハイブリッドについて少し説明しましょう。ハイブリッドという概念は、とても広いものです。2つの異なる動力源を組み合わせていれば、すべてハイブリッドと呼んでもかまわないのですが、トヨタ自動車ではその概念を一歩進めて、ハイブリッドとは足りないものを補完しあって、1+1を2以上にする技術だと考えています。

たとえば、プリウスでは、ガソリンエンジンが苦手とする領域を電気モーターが補って、エンジンがもっとも効率よく動くように考えられています。そうした基本的な考え方は、プリウスの「THS-II」も、先代『エスティマ』のCVTを使ったハイブリッドシステム「THS-C」でも変わりません。システムとして見れば、変速機能と動力分割機能をどの部品で担当するか、その違いだけです。

具体的に言えば、発電機とエンジンという2つの動力源をいかに効率よくコントロールし、必要なパワーをタイヤに伝えるか。そして、制動時に放熱して捨てていたエネルギーを回生ブレーキでいかに効率よく回収するか、そこに尽きると思います。「複雑に見える制御も、効率を追求する」という軸で見れば、いたってシンプルなのです。
川端由美 川端 話題を少し変えますが、初代のプリウスは当初国内専用モデルでしたが、マイナーチェンジを契機にプリウスは世界へ羽ばたいていくことになりました。

朝倉 初代のプリウスに乗ってくださったお客様から、たくさんのご意見を頂き、プリウスには素晴らしい実力があるとわかった段階で、今度は世界に広げなければいけないという使命感が生まれました。プリウスというクルマの大きな特徴の一つだと思いますが、本当に一人ひとりのお客様にご理解していただき、育てていただいているのだと実感しています。

川端 初代が燃費重視だったのに対して、マイナーチェンジ、2代目と段階的にパワーや巡航性能も改善されましたね。

朝倉 海外販売を展開する段階で、アメリカやヨーロッパのほうが日本より動力性能に対する要求が厳しいこともあり、マイナーチェンジで、エンジンの性能をアップし、さらにモーターの出力も上げて、高速走行時のパワフルさや加速性能を向上させました。また、2代目では、昇圧システムを加えて、モーターやインバーターで使う電流値を下げることで、熱として失っていたエネルギーの損失を減らすことに成功しました。つまり、燃費性能をさらに向上させたわけです。そういう意味では、着実に進化していますね。

川端 最近では、レクサス『GS450h』や『LS600h』のように後輪駆動の高級セダンにもハイブリッドが設定されていますね。

朝倉 そもそも、ハイブリッドシステム「THS-II」は、さまざまなクルマに応用が可能な汎用性の高いシステムです。また、電気系の技術向上だけではなくて、駆動系の生産技術の向上が進んだことも大きいですね。レクサスのような後輪駆動系のほうが、前輪駆動よりもAT搭載スペースに制限があって苦労が多くありました。従来のATと同じスペースに、出力の大きなモーターやジェネレーター、変速システムも搭載しなければならないという課題がありましたが、設計の早い段階から駆動系の生産技術者が開発チームに入ることで、克服することができました。
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