THS ハイブリッド開発の経験がエンジニアを育む THS ハイブリッド開発の経験がエンジニアを育む
THS ハイブリッド開発の経験がエンジニアを育む THS ハイブリッド開発の経験がエンジニアを育む
TECHNOLOGY
燃費2倍のハードルを打破する技術アプローチとは < TOP  1 2 3 4  NEXT >
朝倉 吉隆氏 川端 初代プリウスの発売から10年、ハイブリッドの技術開発の歴史も同じ歳月を刻んできました。今でこそハイブリッドは市民権を得ていますが、当時、それまで世の中になかった機関を持つクルマを開発するのは大変な苦労があったのではないでしょうか?

朝倉 ハイブリッドの開発目標に最初から、『ハイブリッド』があったわけではありません。当時、次の100年も持続可能なクルマを目指して、「燃費が2倍になるクルマを作れ!」という号令が飛びました。「G21」という開発コードで呼ばれたプロジェクトです。通常の新型車開発とはまったく違っていて、21世紀のスタンダードとなるクルマをつくることが目標でした。

川端 その後、どんな過程を経て、プリウスのコンセプトが具体化していったのでしょうか?

朝倉 与えられた目標に沿ったクルマを開発するのではなく、まずはコンセプトを考えました。トヨタ自動車の20世紀のスタンダードが『カローラ』なら、21世紀のスタンダードはどんなものか、そこからのスタートでした。そこで、持続可能なクルマに欠かせない燃費性能を「従来の1.5倍」という高い値に設定したのです。
川端由美川端 当時のカローラ1.5リットルクラスの燃費が10-15モードで1リットルあたり約14kmと考えると、同じクラスで1リットルあたり20kmを越えるという燃費目標は、非常にチャレンジングですね。

朝倉 ところが、開発の上層部からは、「燃費2倍」という目標が言い渡されました。通常、新型車の開発では、燃費目標を先代より数%アップに設定します。だから、50%アップでも非常に大変なことなのに、いきなり2倍が目標と聞いた現場のエンジニアたちはただただ驚くしかなかった、というのが本音です。

川端 しかし、燃費2倍という、これまでの技術の延長ではクリアできない目標が、『ハイブリッド』という 従来とまったく違う 方式に発想を転換させたのかもしれませんね。

朝倉 そうですね。エンジンの高効率化やCVTの採用など、エンジンや駆動系を突き詰めていくだけでは到底実現できない目標です。ちょうどそのころ、「G21」プロジェクトの燃費チームはどんなハイブリッドシステムが実現可能かをさまざまなシミュレーションを使って検討していました。そのプロジェクトチームと、私が所属していた電気自動車の開発チームが、一緒になって、ハイブリッドシステムとその構成ユニットの具体的な内容を提案しました。ハイブリッドはエンジン、駆動系に電気自動車のモーター、インバーター、電池を組み合わせて制御するので、電気自動車の開発エンジニアの参加が必須だったのです。
TOP ACT.02 NEXT