Response.特別企画 最新ラジアルタイヤ徹底ガイド
『今さら人には聞けないタイヤの常識・非常識』 『今さら人には聞けないタイヤの常識・非常識』
タイヤの空気圧はどれくらいが適正か?
タイヤは空気圧が規定どおり入っているから乗り心地が確保できるし、グリップも発揮できる。

空気圧が低いと悪いことはいっぱいある。燃費が悪くなる、タイヤの減りが早くなる、ブレーキの利きが悪くなる、コーナーで不安定になる、乗り心地が悪くなる、偏摩耗が起こる、音がうるさくなるといった具合だ。

空気圧は車両指定の空気圧が定められていて、その数値に合わせるのがベストだ。実際には、走る前のタイヤが冷えているときに空気圧ゲージで測定し、調整しよう。走ってタイヤが熱くなると中の空気も膨張してしまい、見かけの空気圧が高くなってしまうからだ。もし、温度が高いときに測らなくてはならないのなら、0.3bar(kgf/cm2)くらい上げておく必要がある。

車両指定空気圧は運転席のドアを開けたときに見える場所か、給油口の蓋の裏にラベルが貼ってある。そこになければ取扱説明書に書いてあるはずだ。欧州のクルマの場合、乗員の数や走行スピードによって空気圧が異なる設定になっていることもあるから注意が必要だ。
意外と見落としがちな空気圧チェック。一番身近で、手軽にできて、効果が実感できるメンテナンスだ
空気圧チェックは2週間に1度
パンクなどのトラブルに見舞われないためにも、普段からタイヤの空気圧の状態を意識しよう
タイヤの空気圧のチェックはどれくらいの頻度でやっているだろうか。1年に1回とか車検ごとという人もいるが、半年に1回、3ヶ月に1回という人が多い。じつは2週間に1回、空気圧チェックすることをおすすめする。

そんなに頻繁にするのかといわれそうだが、それはタイヤの空気は漏れるからだ。夏から秋、さらに冬に向かっては気温がだんだん下がっていくから、漏れて減るのと温度が下がって圧が減るのが重なって見かけ上、大きく下がる。

もうひとつ大きな理由がある。それはスローパンクチャーを発見するためだ。パンクの80%はスローパンクチャーといわれている。釘などが刺さってしばらくは抜けない。このときから少しずつ漏れていくのだ。ある程度まで下がったとことで釘が抜けていっぺんに下がってしまうが、それまでに発見できる可能性は高い。高速道路でタイヤ交換したり、夜の道端で交換したりという命がけの作業をしなくてもいいように、2週間に1度チェックするのだ。1本だけ、ほかのタイヤより低くなっていたらスローパンクチャーを疑ってみるといい。
タイヤの溝は残り4mm以下になったら交換すべし!
タイヤの溝の深さは新品で約8mm程度ある。サイズによっては7.5mmだったり8.5mmだったりすることもあるが、大雑把に8mmと覚えておくといい。そして走れば減るのが溝である。

ではこの溝がどれくらいまで減ったらタイヤ交換すればよいのかと聞くと、1.6mmのスリップサイン(正確にはウェアインジケータという)が出たら交換と答えるドライバーは多い。この残り1.6mm以下は車検に受からない最低の溝の深さなのに、ここまで安全だと思っているのである。

しかし、現実は違う。雨の高速道路には大きく深い轍がある。ここを雨水が川のように流れている。この轍は深いところでは25mmにも達する場合がある。タイヤの溝が浅いとここで簡単にハイドロプレーニング現象が起きてしまうのだ。溝は深いほど有利だが4mm以下になると70km/h走行でもハイドロプレーニング現象が起きる可能性が高くなる。だから4mm以下になったら交換したほうが安全なのだ。
タイヤの残り溝を図るゲージは、カーショップなどで売られている。活用したいアイテムだ
写真右は新品、左は残り溝1.6mmでの110km/h雨天走行時のようす。ご覧のように残り溝のないタイヤは、つねに危険と隣り合わせだ
経年変化で硬くなったゴムはタイヤの性能をここまで落とす!
新車を買っても最初の車検(3年)でタイヤを交換したほうがいい。溝があったとしてもゴムが劣化するからだ。

ゴムは古くなると硬くなる。硬くなるとしなやかさがなくなってウエット路面で滑りやすくなる。いざというときに、ブレーキの利きが悪くなって制動距離が伸びてしまうのだ。これはドライ路面でも同じで新品時よりグリップは下がっているから、カーブでも限界スピードは下がっている。

ゴムが硬くなっているということは乗り心地も硬くなる。音がうるさくなっている可能性もある。というように古くなったタイヤはいろいろな性能が落ちていると認識しなければならない。そのなかでウエットグリップの低下は顕著だから気を付けなければならない。
タイヤの山があるから大丈夫ということはけっしてない。写真のようにヒビ割れが生じてきたら、即交換だ
タイヤのローテーションは本当に必要か?
何千kmか走ったらローテーションといわれる、タイヤの位置交換をしなければならないと思っている人が多い。しかし、あなたのクルマは本当にタイヤのローテーションが必要なのだろうか? 

そもそもローテーションは、摩耗を均一化させることを目的としている。フロントが重くリヤが軽いFFやFFベースのAWDの場合は、フロントタイヤはリヤタイヤの3倍から4倍減りが早い。ということは、ときどきローテーションをすることで減っていないリヤをフロントに持ってくることで長く使えるという寸法だ。

BMWやジャガーではローテーションを推奨していない。それはどちらもFRで4輪の摩耗はほぼ均等だからだ。もしどこかのタイヤが偏摩耗だったとしよう。ローテーションをしていなければその場所のサスペンションのアライメントが狂っているという予測がつく。だが、ローテーションをしてしまっていると、そのタイヤが付いていた場所を追わなくてはならないのだ。

だからローテーションは必要なクルマとやってはいけないクルマがあるということなのだ。
連続振動は要チェック! バランス以外の原因も
走行中にタイヤが振動してそれを運転席で感じることがある。多くのケースは重量的なアンバランスが原因なので、アンバランスを測定して何十gかのおもりをホイールのリムのところに付ければ治る。これがバランス取りといわれるものである。しかし、これをやってもまだ振動が起こる場合もある。それはタイヤそのものの構造上のアンバランスが原因になっているかも知れない。

タイヤのユニフォーミティとは均一性という意味で、タイヤが1回転する間に発生する力が変化することが原因になっている。横方向に一定の力が発生していれば何回転しても振動は起きないが、1回転する間に変化すると高回転になればそれが振動となる。トレッド部やサイド部の剛性が均一でない場合も、それが大きければ振動の元になることがある。

重量のアンバランスなら80km/hのつぎは120km/hというように周期的に発生するが、タイヤの構造上のバランスが悪い場合にはスピードを変えても振動が収まらない。どっちの振動なのかを見極めなくてはならない。原因がタイヤではなくホイールにあることもある。
偏摩耗の原因はクルマか運転か?
タイヤの減り方ひとつを見るだけで、クルマの状態がわかるといってもいい過ぎではない
タイヤのトレッド面がきれいに減らない偏摩耗が起こることがある。内側は減らず外側のショルダー部分が減っている場合には、アライメントが狂っているかもしれない。左右輪が同じように減っているならトーインが付きすぎている可能性がある。片側だけならその車輪だけにキャンバーが付きすぎている可能性がある。ブレーキを引きずっているためにそのタイヤだけよく減ったというケースもあるようだ。これらはクルマが原因の偏摩耗である。

ショルダー部だけが減っていてもアライメントのせいではない場合もある。それは空気圧が低いまま飛ばした場合だ。空気圧が低いとタイヤの両ショルダーが減る傾向になる。しかしスピードを出したコーナリングをすると簡単にショルダーに負担が掛かって、しかも空気圧が低いから擦れて減りやすくなるのである。

ドライバーの運転による偏摩耗もある。多くはヒール&トゥ摩耗というもので、主にフロントタイヤで起こる。いつもブレーキを強く掛けるドライバーはそのたびにブロックが変形した状態で削れる。変形が戻ったときにはブロックを横から見るとのこぎりの刃のようにギザギザに見える。これがヒール&トゥ摩耗である。タイヤの摩耗状態を見ると運転の仕方がわかるといわれるが、それは本当だ。メンテナンスも含めてタイヤが偏摩耗しないように注意しよう。
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