「つながる」意味が、トヨタは大きい
---- 具体的な部分に少し目を向けますと、私がとりわけ感心したのが、各ディーラー向けに提供しているコールセンターシステムでした。あれはe-CRB用に独自開発されていますよね。

友山 そうです。

---- そこがすごい。通常コールセンターはコストセンターと企業は捉えるので、アウトソースしてできるだけ安くしようとなる。極端な例になると、GoogleやYahoo!のように問い合わせ窓口もwebだけにしちゃえ、とコスト削減の対象になるのです。

しかし、e-CRBの中でのコールセンターは違う。顧客との重要なタッチポイントであり、CSの向上やセールスの重要な拠点設備という考えですよね。そうでなければ、コールセンターシステムの独自開発という発想になりませんから。

友山 一般的にはコールセンターはクレーム処理担当というイメージが強いのですけど、我々のコールセンターはお客様にサービスを提供する窓口という考え方なんです。お客様からの問い合わせを受けるだけでなく、(ディーラー側から)コンタクトして入庫のご予約をいただくための重要な役割を担っている。いわば、ベネフィットセンターなんです。

日本ですと、こうしたアフターでの顧客とのタッチポイントは、担当セールスマンが販売後もケアするという担当制だからです。これはよい面も多々ありますが、一方で、コールセンターが"問い合わせやクレームの窓口"から脱却できない理由にもなってしまっている。しかし中国では分業制が徹底しているので、コールセンターをCS向上やセールスに使うことができたのです。

---- コールセンターをきちんと活用してビジネスに取り込めば、ベネフィットセンターになる。それは販売店にとってのビジネスの収益ポイントの向上にもなるし、メーカーにとっても将来的なビジネスを広げるためのツールとして使えるというわけですね。しかし、コールセンターの支援システムであるCTI(Computer Telephony Integration)から独自開発なのは驚きました。

友山 あれは市販品がまったく流用できなかったからです。e-CRBとの連携を考えると、自社開発するしかなかったのですね。システムソフトウェアからPBXのファームウェアまで独自開発だったので、大変な労力を要したのですよ(笑)。

ただ、コストと手間はかかりましたが、やはりCTIから独自設計してe-CRBに組み込む必要がありました。実際に見ていただいたから、おわかりだと思うのですが、コールセンター業務やオペレーターのコミュニケーション管理まですべてが、i-CROPと連動していますからね。すでに中国とタイで使っていますし、今はインドでも試験運用しています。

---- ディーラーからすると、販売店にコールセンター機能を抱えることで、オペレーターのコストはかかりますけど、CS向上だけでなく、各種サービスや板金の販売がしっかりとできるようになる。また、コールセンターからのセールスでクルマまで売れてしまうという事例も出てきていると聞きました。その根底には、e-CRBとコールセンターが密接に連携しているサービスクオリティの高さがある。

友山 (e-CRBで)トヨタが販売会社に提供させていただいているのは、クルマだけではないのです。システムと新しい考え方に基づいたオペレーション(運用)を提供させていただいている。こうしたシステムを利用するスタッフの育成やオペレーションまで含めて、"ソフトウェア"として提供させていただき、活用してもらうことで初めてe-CRBなど各種システムやサービスが活きてくるのです。

---- そうした考え方は、やはりセブン=イレブンとかに近いな、と感じます。彼らも重視しているのは高度なPOSシステムとか情報ツールだけでなく、それを使いこなすマニュアルやオペレーションの部分です。まさしく今回のe-CRBも同じで、わざわざ教育センターの設備まで作っていましたよね。これは、いい意味で"自動車メーカーらしくない"。

友山 そこは我々の反省点もあるのです。自動車メーカーは、もっとオペレーションや(販売現場の)人材育成に投資しなければならない。e-CRB導入によって、それが明確化されてきたのです。もちろん、それは一時的にはコスト増になるわけですが、長い目で見ればベネフィットにつながる。そして、それは他の自動車メーカーに対する競争力となるのです。

《インタビュアー:神尾寿(通信・ITSジャーナリスト)》



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