[カーマルチメディア・インサイダー] 広汽トヨタ総経理助理 友山茂樹氏インタビュー
製販一体マネジメントの効果に手応え…
友山 茂樹 photo
広汽トヨタ総経理助理 友山茂樹氏
2008年9月。資本主義経済に火の手が・・・・
自動車ビジネスは変化する時期にある
---- 我々レスポンスの取材班が北京で「e-CRB」を取材してから、1年余りが経過しました。あのとき、トヨタがめざすテレマティクスやICTの活用が、カーナビゲーションの延長にのみあるのではなく、もっと抜本的に自動車メーカーと顧客との"関係を変える"領域に踏み出していることが明確に示されました。

その後、友山さんは広汽トヨタ総経理助理として中国市場に集中的にコミットし、e-CRBやG-BOOKをはじめ、自動車ビジネスにおけるICTサービスの活用をさらに進めてきました。今回の取材を見ましても、1年余り前から比べて、システムやサービス内容が進化したと感じます。

友山 確か 2007年秋に初めて中国市場での取り組みを見ていただきましたが、そのときはe-CRBとして"顧客との長期的な関係構築"のためのスキーム作りをしていました。販売店で最初にお客様と接するところから、受注、納車、そしてアフターサービスまで、自動車販売のオペレーション全体で効果を上げる(e- CRBの)システムを構築していたのです。

しかし、このe-CRBの究極の目標である"お客様との長期的な関係構築"をするためには、販売支援のシステムだけでは足りません。もっと自動車ビジネスの根幹に踏み込む(ICTの)システムやインフラが必要になってきた。そこで開発されたのが、今回見ていただいた「SLIM」や「TOSS」といったものなのです。

---- e-CRB、そしてその下にあるi-CROPは、自動車販売ビジネスの在り方をICTで大きく変える、というものでした。しかし今回は生産や流通まで踏み込み、変革しています。これは、ものすごく重要で大きなイノベーションですよね。

友山 それもこれも、お客様のニーズに則してe-CRBを考えていくと、どうしても必要なものなのです。お客様が求めるものを的確に生産し、流通させて、適正量を在庫する。お客様が欲しいクルマが、新鮮な状態でタイムリーにお届けできる環境を作らねばなりません。自動車メーカーと販売会社をひとつの情報システムで連携させて、生産計画や調達、配車、在庫などの情報化による先進をしっかりと行わなければならないのです。

---- それは自動車メーカーにとって、コアのビジネスを変えうる変革といえます。日本で見てきた「トヨタのカーナビとG-BOOK」とは、考え方のステージが違う。

友山 ええ、ディストリビューターの根幹に関わる部分(の改革)です。トップマネージメントでないと動かない部分。ですから、私はe-TOYOTA部の部長をお休みして、広汽トヨタの総経理助理を拝命したのだと思います。

---- 自動車ビジネスでの活用という観点では、新たに導入されたSLIMとe-CRBの連携がとても重要です。ここに(クルマ側との接続を担う)G-BOOKも加わることで、情報システム上で一気通貫したマネージメントが可能になっている。

友山 そうですね。マネージメントというと(自動車メーカーによる)「管理」が想起されてしまい印象がよくないかもしれないのですが、やはり『お客様』と『ディーラー』、『自動車メーカー』がひとつのネットワークで有機的に結合しないと、あるべきジャスト・イン・タイムが実現できないのです。

---- 今回の取材を通じても、強権的な管理というイメージはなかった。むしろディーラーの方々は喜んで使っていますし、販売会社の経営者は収益拡大の効果が大きいと歓迎している。ICTを用いてWIN=WINのビジネス的な相補完関係を作るという考え方は、とてもインターネット的だと感じました。

友山 メーカーが(自動車ビジネスの)全課程を支配するのではなく、ステークホルダーが有機的に「繋がる」ことで相互メリットが増幅する仕組みになっています。日本国内でのG-BOOKはカーナビを補完するものと捉えられてしまっていて、僕らは「そうじゃない!!」と言い続けてきた。もちろん、(日本の)G-BOOKも、地図更新や安全・安心サービスで普及し、マーケット的には成功しているのですけれど、やはり我々が目指してきた世界は違うのです。

---- 友山さんたちが考える「クルマとICT」の世界観は、中国でのe-CRBやSLIM、G-BOOKのコンセプトが本質的には近いわけですね。

友山 2006年6月から(広汽トヨタとして)カムリの販売とディストリビューターとしての展開が始まったのですが、そこに最初からe-CRBを組み込んでしまった。その後、G-BOOKやSLIMを立ち上げていって、繋いでいったのです。結果としては、この展開方法の方が、我々の理想としてた「人」「クルマ」「ディーラー」「工場」を繋いでいくという世界を作るには、一番よい方法論でした。新しいビジネスモデルが新興市場である中国で成果を出したことは意義深いと思います。

《インタビュアー:神尾寿(通信・ITSジャーナリスト)》



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