●依然として、日産は強力なライバル

――10月31日に行われた第34回東京モーターショーのプレスデーのとき、トヨタ自動車の社長である張さんと、トヨタグループの軽自動車メーカー・ダイハツ工業の山田隆哉社長、トラックメーカーである日野自動車の湯浅浩社長が、3社共通のテーマで統一した展示コーナーの壇上でがっちり握手を交わしましたね。トヨタグループの結束を図る、いまのトヨタを象徴する光景でした。

張 社長(以下 張) 何かことに当たるとき、私は常に何の目的でそれをやるのかということを考えます。世界的な規模で激しい競争が繰り広げられている自動車産業にあって、トヨタは何の目的でトヨタグループを結束しようとするのかを考えますと、世界の強力な自動車メーカーと互角に競争していくことが目的だということになります。

――ライバルは外国の有力自動車メーカーですか。

 GM(ゼネラル・モーターズ)、フォード、ダイムラー・クライスラーというところでしょうね。

――国内自動車メーカーはあまり眼中にはありませんか。例えば、長らく低迷していた日産自動車は、ルノーから来たカルロス・ゴーン社長による 「リバイバルプラン」 の実行で急速に業績を回復していますが。

 依然として日産は強力なライバルです。これまでも日産が進めていること(リバイバルプラン)を見ながらいいほうへ進んでいると見ていたのです。詰めはこれからだと思いますが、今回の結果(2000年度中間決算の結果)は本当に良かったと思いますね。ゴーンさんにも直接「Congratulations」といいました。

――奥田碩会長が社長時代に、トヨタグループの結束を図る方法として、持ち株会社構想をブチ上げましたね。

 グループの結束を図る方法として持ち株会社になるかどうかは、グループの力を合わせないと乗り越えられない環境技術への取り組みの成果とか、いまはグループ会社がバラバラに取り組んでいるIT(情報技術)分野で、グループ各社間で重複している部分を少し整理するとか、こういうところを見極めないとまだわかりません。当面は、グループが結集して力を発揮していかないと競争相手に勝てないということをグループ各社に説得していかなければならないと思っています。

――先ごろ、トヨタ自動車がもつ産業車両の営業権をグループ企業である豊田自動織機製作所に譲渡しましたが、これもグループを結束させる方法のひとつですか。

 それはあまり考えませんでした。むしろ一種の工販合併です。ご承知のように、これまで産業車両は製造を織機さんが、営業をトヨタがやるという格好でした。産業車両は整理統合が進んで、リンデグループ、ナフコグループ、トヨタグループの世界三大グループに集約され、激しいトップ争いが繰り広げられています。その競争の中で今後もトップであるためには、工販が合併して、市場の声をダイレクトに製造に反映させたり、経営判断をよりスピーディにする必要がありました。そこで、トヨタの営業権を織機さんに譲渡して、工販を一体化することにしたわけです。

《写真=井手孝高》

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