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【ロングインタビュー】国立環境研究所 森口 祐一循環型社会・廃棄物研究センター長
森口祐一 Yuichi Moriguchi
独立行政法人 国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター長 Yuichi Moriguchi
国立環境研究所の森口祐一氏は.........
交通・CO2 これからのトレンド
減り始めた運輸部門のCO2
伊東 地球温暖化防止は、多くの人々に行動してもらうことが、今後は重要になると思います。環境に配慮した行動をするには、知識の普及や啓発が必要です。これらについてどのような点を重視されていますか。

森口 便利な生活を支えるには、エネルギーは必要です。便利で快適になるほど、エネルギーを多く消費します。快適・利便はそのままに、エネルギー、すなわちCO2を減らさなきゃいけないとなると、必要性はわかるが便利さを損なってまで・・・というところが難しい点です。

重視していることは、まず問題の深刻さを訴えることです。二つめに、行動を変えてもらう時、“少し気をつけるだけでもCO2を減らすことができる”ことの強調です。

伊東 CO2が気候に深刻な影響を与えることは、映画にもなったし、ご存知の方も多いと思いますが、“ちょっとしたことでCO2は減らせる”は、あまり知られていない、重要な点だと思います。

各部門のCO2推移
そもそも、京都議定書のCO2削減目標自体が、数%です。日本全体では90年度比‐6%ですが、自動車など運輸部門のCO2は減り始めていて、2004年度は2億6千2百万トン、2010年の目標は2億5千万トンですから、 あと残り5%を切るところまできています。

森口 確かに運輸部門は減り始めました。しかし日本全体では、‐6%の達成すら難しそうな状況にあります。 まず、目の前の目標を達成する努力をしないと。 また、議定書の目標は、対策の入り口に過ぎません。2010年以降も、引き続き減らす必要があります。

自動車は、80年代後半から90年代に、大変な勢いでCO2が伸びました。ようやく最近、燃費のいい車の普及もあって、頭打ちから少し下がる兆しがあります。しかし、90年比で下げるというより、90年代に増えた分を戻し始めている段階です。

伊東 CO2が減少傾向に入ったというのは、日本が成熟社会に入り、社会の活動量が90年代ほど伸びていない側面はあるにせよ、良い傾向ですよね。

森口 良い傾向だと思います。90年代のCO2増加は、色々なことが重なっています。保有台数が増え、乗用車が大型化しました。余暇やライフスタイルも多様化しました。

当時も、自動車の燃費は改善されていたのですが、それを打ち消して余りあるほど、台数の増加や大型化が進みました。最近、その傾向が止まった、という感じです。ハイブリッドカーなど燃費の良いクルマが出てきて、効果がようやく出始めたのだと思います。

インタビュアー:伊東大厚
写真:池田志信

(※1)シンポジウムURL  http://www.env.go.jp/earth/suishinhi/index.htm
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