THS クロニクル プリウスの産みの親が語るTHSの10年間、そして、つぎの10年間 THS クロニクル プリウスの産みの親が語るTHSの10年間、そして、つぎの10年間
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KEY-PERSON INTERVIEW
トヨタハイブリッド車は全モデル混流生産で生み出される もはやハイブリッド車は、特殊な車ではなくなった < TOP  1 2 3 4 5  NEXT >
ハイブリッド車『プリウス』が発売されてから10年目の今日、ハイブリッド車の生産現場の様相も大きく変わった。かつてはハイブリッド車専用の生産ラインでつくられていたが、現在は他のモデルとの完全混流生産となっている。

世界でハイブリッド車をもっとも多く生産しているのは、愛知県豊田市にあるトヨタ自動車 堤工場。プリウスを生産している第2ラインではほかに、『カムリ』『カムリハイブリッド』の3車種が混流生産されている。

世界的なハイブリッド車のニーズの高まりに応えるため、約60秒に1台のペースで新車を送り出すフル操業状態が続いているが、ラインの流れにはまったくよどみがない。つくりやすさを意識した開発陣の工夫と、ハイブリッド車特有の構造による工数増をバイパス工程でうまく吸収するという生産現場の工夫の合わせ技による成果だ。

トヨタにとって、ハイブリッド車の混流生産はハイブリッドモデルのグローバル戦略を進めるための大きなステップだった。堤工場で混流生産をスムーズに行なうことができるようになった今、同じシステムのラインを整備すれば、世界のどの生産拠点でもハイブリッド車を生産できることを意味する。ハイブリッド車年産100万台の実現は、そう遠い未来のことではないだろう。
一台の「プリウスができるまで」
堤工場外観01 堤工場外観02
トヨタ自動車 堤工場とは
トヨタの生産拠点でもっとも多くのハイブリッド車を生産している堤工場。入り口にはメインの生産車種のひとつである現行『プリウス』が飾られ、昼間は車内も含め、自由に見学できるようになっている。堤工場一日あたりの生産台数約1900台のうち、プリウスは500台以上。またアメリカで人気の『カムリハイブリッド』の生産も行なっている。ちなみに堤工場は今秋、1970年の操業開始以来の累計生産台数1500万台を達成する見通し
堤工場内観01
インパネ取り付け
塗装されたボディはまず、組立ラインのトップバッターであるトリムラインへ。トリムとはインストルパネル(インパネ)や内張などの内装材のこと。ここでの一番の大物部品はインパネだが、スキルアシストという補助装置により、ほとんど力を要することなくインパネを組み付けることができる。ラインが流れている状態で、インパネをずれることなく一発で組み付けられるのは、従業員の高い技能のなせるワザだという
堤工場内観02
パワーユニットは一体でラインに搬入
組み付け前のハイブリッド・パワートレーン。エンジン、モーター、動力分割機構はあらかじめ組み立てられた状態でラインに搬入される。もちろんパワートレーン単体で機能するわけではなく、ほかにバッテリー、インバーター、それらを結ぶ高電圧ケーブルなど、ハイブリッド車特有の部品が必要
堤工場内観03
パワーユニット取り付け
クルマの重要部品を取り付けるシャシーラインにて、ハイブリッド・パワートレーンの組み付け。通常モデルのエンジン+トランスミッションと、システム的にはかなり異なるが、組み付け作業自体の難易度は、他のFF(前輪駆動)車と差はない。初代プリウス時代は特殊な工程が多数存在したが、今日ではハイブリッド用部品の大半をアッセンブリーで組めるまでに進化。通常モデルと同等のスピードで生産できるようになったゆえんだ
堤工場内観04
タイヤ&ホイール取り付け
クルマの基本部品の実装を終えたあとは、クルマづくりの最終工程となるファイナルラインへ。どの速度域でもスムーズに回るようあらかじめバランス調整されたタイヤ、ホイールの組み付けも最終工程のひとつだ。ホイールは意外に重いものだが、ここでも補助装置を使うことで簡単かつ正確に組み付けることができる。こうした作業の一つひとつについて、余分な手間がかからないよう徹底的に工夫することが、生産性の向上につながっていく
堤工場内観05
インバーター取り付け
ファイナルラインにて、電気エネルギーの管理を行なうインバーターを装着。ハイブリッド車の生産においては、ハイブリッド特有の構造による作業の増加分の一部を、バイパス工程として組立ラインの随所に分散させている。通常、ドアやタイヤ、外装部品などの取り付けが主であるファイナルラインでインバーター取り付けを行なうのも、そうした工程の工夫のひとつだ
堤工場内観06
ファイナルライン完了
ファイナルラインを流れるプリウス。すでにパワートレーンやサスペンション、タイヤなど主要部品の組付けが終了。このあと、シートやドアを装着すればいよいよ「プリウス」の完成だ。組み上がった車両はそのあと、品質チェックのため完成検査エリアへ
堤工場内観07
完成検査エリア
完成車両の検査工程。トヨタの高い品質基準をパスできるかどうかを、内外装の品質や動力性能など、あらゆる角度から検査のプロフェッショナルが一台ずつ厳重にチェックする。製造段階で品質に万全を期しているが、それでもこの段階で再調整に回すクルマもあり、念には念を入れるという
堤工場内観08
ラインオフ
完成検査に合格した出来たてホヤホヤの「プリウス」が、いよいよユーザーのもとへと旅立つ。ヘッドランプ、ターンシグナルランプを点灯させ、薄暗い誘導路に向かって力強く走り出す様子はとても印象的だ。より大型の「カムリハイブリッド」もこの検査ラインを通過して世に送り出される
カメレオン
ラインオフ
誰でも簡単に組み立てられる製品設計と生産技術の確立が、品質向上のカギを握る。さらにトヨタの生産現場では、従業員が楽にクルマをつくるためのさまざまな工夫がカタチになっている。写真は『カメレオン』。レンチを所定の場所に置くだけで、必要な数のボルトやナットを箱から磁石で取り出す装置だ。このような創意工夫は現場から年間約65万件提出され、優れた提案に対しては最高20万円の賞金と表彰状が授与されるという
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